練習をしていると、よくこう聞かれることがあります。「コーチ、ぼくはどう動けばいいんですか?」。それを知ろうとする気持ちは、すごくいいものだと思う。でも、サッカーは自由なスポーツ。サッカーの基本である、ゴールを奪うこと、ゴールを奪われないことを忘れなければ、それほどセオリーから外れる動きをすることはないはずです。
■「どう動くか?」ではなく、「どうすれば相手に勝てるか?」を考えていない
「どう動くか?」について考える子はいても、肝心な「どうすれば相手に勝てるか?」を考えている子は、あまり多くはないというのが、ぼくの印象です。
スクールなどで教えているとき、ぼくに「どう動けばいいんですか?」と聞きに来てくれる子は、日頃、コーチに「どこに動いているんだ!」と言われているんだと思います。ぼくらコーチは「なぜあの選手はそこにいるんだ?」と疑問があっても、その選手なりに「ゴールを決めたくてこうしました」という理由があればいいと思う。その気持ちを出発点として、「それだったら、こういう動き方もあるよ」と気付かせることはできるから。
ほかにも、「レギュラーになるためにはどうすればいいですか?」と聞かれることもあります。きっと、サッカーに真面目に向き合っているんでしょうね。そういう選手は応援したくなる。ぼくのアドバイスを聞くことも大事だけど、それよりもまずしてほしいのが、自分で自分の課題をみつけること。コーチに分析させるのではなく、自分で自分を分析することが大事なんです。
たとえば、相手ゴール前でパスを受けたときに、ファーストタッチで足元にボールを止めずに、スペースに出せばシュートまでいけた場面があるとします。ミスはだれにでもあることだから、それについてはなんの問題もない。
だけど、多くの選手はミスをしても、「失敗したな」という顔をして、終わりなんですよね。ミスのあとに「こうすればうまくいったな」という反省がない。ただ何も考えずにプレーをして、「コーチ、どうでしたか?」と聞きにくる。そこでアドバイスを言われた通りやって、また「コーチ、どうでしたか?」とぼくのところへ来る。
そこで「いいタイミングでボールが来たのに、トラップが乱れてシュートが枠にいかなかった」という反省があれば、「ボールコントロールの精度が甘いな」と自己分析して、それに合った練習をすればいいわけです。
■サッカーは自由なスポーツ。指導者任せではなく自分で考えることが大事
ぼくはコーチだから、「どうでしたか?」と聞かれたら、選手一人ひとりに課題を与えたり、アドバイスをしてあげたいと思います。でもその前に、ちょっと立ち止まって考えてみてほしい。いまのプレーについて、自分はどう考えているのかって。指導者任せにするのではなく、まずは自分で考えること。それを繰り返していくことが、上達の道なんだと思います。
コーチに言われたことだけをやるよりも、自分で考えて、工夫したほうが楽しいよね。サッカーは自由で楽しいスポーツなんですから。
小島 直人//
こじま・なおと
海外での選手経験の後、指導者として中学、高校、地域クラブや東京ヴェルディコーチとして様々なカテゴリーの指導にあたる。情熱的で卓越したコーチングスキルには定評があり、NIKEエリートトレーニングでは専属コーチとして毎年1万人以上の中高生をクリニックで指導した。現在は、大森FCの代表を務める。
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取材・文/鈴木智之 写真/サカイク編集部(ダノンカップ2011より)、youpapa