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試合に出してもらえない、進路妨害、トレセンいけない...... 「子どもが人質」だからと暴力暴言指導を黙認する親たち 当事者として子どもを守る方法は?

公開:2022年11月28日

キーワード:リスペクト宣言威圧島沢優子指導者暴力暴力暴言指導暴力根絶宣言

11月は厚生労働省が定める児童虐待防止推進月間ということ、ご存じでしたか。今回は、子どもたちを理不尽な暴力暴言指導から守るために大人は何ができるかを提案できればと思います。

子どもが所属するチームで、指導者が子どもを叩いたり、暴言を吐いたりしたとき、保護者の皆さんはどうしていますか。

叩かれたのが自分の子じゃないから、トレセンや中学以降に行きたいチームへの入団を妨害されるのが怖くて抗議できないから、卒業まで耐えた......。など、黙認している保護者の方もいますよね。

暴力暴言指導を受けたとき、我が子が受けていなくてもチームのほかの子が受けているのを知ったとき、保護者は黙って我慢するしかないのでしょうか。

スポーツと教育のジャーナリストであり、スポーツ暴力・パワハラ相談窓口相談の相談役を務める島沢優子さんに聞いてみました。
(文・島沢優子)

 

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写真は少年サッカーのイメージです

 

<<関連記事:サッカーでの育児の悩みに島沢さんが答えるサカイク連載「蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~」 

 

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■読者からの暴力暴言指導の悩み

「指導者の暴力や暴言があり、移籍を考えています。

試合で負けると「お前のせいだ」などと言って顔を叩くことがあります。叩くのは一人だけでなく、ほかのコーチが別の子を叩くのを見たこともあります。叩くだけでなく、試合中も「なんで○○しないんだよ!」のように怒声を浴びせ、子どもたちは委縮しています。

一部の保護者が抗議をしたところ、叩いたことは謝ったのですが、その後練習の際子どもたちに「親たちがいちいち干渉してこないよう黙らせろ」と言ったそうです。

このままチームに居続けるのも子どもにいい影響はないとわかっているのですが、S級ライセンスを持っていてトレセン担当でもあるので、親が抗議することで子どもへの報復(トレセンや強豪校への進学の妨害、干されるなど)が心配です。

子どもを人質に取られているようで、親としても身動きが取れない状態です。

本人は友達と一緒にプレーできる今のチームにいたいと言いますが、ひっそりと移籍させた方がいいのでしょうか」

 

■多くの保護者が報復を恐れ、暴力暴言指導を黙認している

これがS級ライセンス保持者のすることでしょうか。
暴力をふるい、保護者からの抗議があると「親を黙らせろ」と子どもに八つ当たりする。いや、これって事実なの?と疑いたくなります。

ところが、私の連載への質問箱に以上のような投稿が複数あります。プライバシー保護のため、編集部のほうで共通要素をまとめたものとしましたが、投稿者への確認もしており、事実であることは間違いないようです。多くは、相談者が書いているように指導者側からの報復を恐れ、子どもをそのまま所属させている。皆さんがこの記事を読んでいる今この時間、このようなコーチのもとで子どもたちがうつむいたままサッカーをしています。

 

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■順天堂大学で起きた元日本代表による暴言指導、J1ではサガン鳥栖監督がライセンス降格

そのことは、昨今の報道をみても明らかです。

「1年のクソ坊主。お前みたいなのがいた(出身)クラブからはもう選手獲らないからな!」
「人間のクズ」

このような暴言が継続されたとして、順天堂大学サッカー部の堀池巧監督が指導現場から外されました。つい先月、10月のことです。

耐えかねた選手らがハラスメント行為を文書にまとめ大学側に提出したのです。堀池監督と言えば、20日に開幕したW杯で指揮を執る日本代表・森保一監督や三浦知良選手らとともに1994年アメリカW杯を目指した「ドーハ組」のひとり。13年には、日本サッカー協会(JFA)が公認する最高位の指導者資格で、Jリーグで監督を務めるために必要な「公認S級コーチ資格」を取得しています。

にもかかわらず、怒りを態度で表すことも頻繁にあったうえ、2016年8月の総理大臣杯のトーナメントでより戦いやすい組に入るため予選の試合で「負けろ」と指示を出していたことが、当時在籍した選手複数人の証言によって報じられています。

このような「敗退行為指示」が認められた場合、Jリーグでは「サッカーに限らずスポーツに対する信頼や高潔性の維持に疑義を生じさせてしまった責任」と見られ、クラブライセンス剥奪などの厳罰があります。堀池監督が指導していたのは大学ですが、大きな問題に発展する可能性は小さくないでしょう。

ほかにも、J1サガン鳥栖でパワハラ行為が認定された金明輝前監督は今年3月、S級からA級に降格させられています。S級からの降格は初めての処分でした。同日、J2東京ヴェルディでパワハラが認められた永井秀樹前監督はS級資格の1年停止になりました。復帰までに研修や社会奉仕活動が求められるものの「処分が甘いのではないか」という声はあちらこちらから聞こえてきます。

 

■今春には高校の強豪サッカー部での暴力動画も

大学生やプロだけでなく、高校生も暴力や理不尽な扱いに苦しんでいます。

今年5月、暴力動画を発端に、被害届を出した生徒が中学浪人させられていたことも判明した秀岳館高校サッカー部の騒動。9月には、木更津総合高校サッカー部の3年生が顧問のパワハラによって大量退部していたと報道されました。学校側は一部を認め調査すると発表しました。

日本サッカー協会は他団体とともに2013年4月、暴力根絶宣言をしました。ちょうど10年前、2012年12月23日に大阪市立高校のバスケットボール部員が顧問の暴力や暴言を苦に自死したことなどがきっかけです。指導環境の修復に乗り出して10年目になるというのに、日本最高位の指導者資格を保持するコーチが、子どもたちに暴力をふるう、しかも何ら反省しないという実態があるのです。

なぜ、修正できないのでしょうか。それは、修正できない人を、周囲の人たちが「他人事」と放置しているからだと考えます。

上述した事件のひとつが報じられた際、複数の指導者が私にメッセージをくださいました。「いつかやると思った」「ブラックな指導をしていることは知っていた」

そこで「何故やめろよと言わなかったのですか?」と尋ねると、「仲がいいだけに言いづらい」「(自分との)関係が悪くなるから」と注意するのを控えていました。

数年前に高校サッカー部で暴力が発覚した指導者は、何のお咎めもなくそのまま小中学生のクラブを設立。海外でプレーした実績などが保護者に評価され、クラブは大きくなりました。が、指導者本人のマインドは何も変わっていないため、今度はスタッフへのハラスメントが原因で代表の座を追われたのです。

 

■当事者たちが声を挙げなければ、被害はなくならない

記事冒頭にお伝えした、S級コーチが暴力をふるうチームにわが子を預け続ける親御さんと恐らく同じでしょう。問題が起きても、多くの保護者が「子どもは人質なので声をあげられない」とうつむきます。チームメートの親全員が同じ価値観ではないことも要因です。

親御さんにクラブへ被害を訴えるよう勧めた際「ここ(クラブ)にわが子がいるわけでもないのに、私の気持ちがわかりますか? 息子も私も仲間外れになるかもしれないのに」と言われました。

こんなことは一度や二度ではないので、他人が口で言うほど簡単でないことは私も重々承知しています。それでも、競技団体や社会に知ってもらわなければ被害はなくなりません。もっといえば、声をあげなければ「間違ったことでもまかり通る」ことを子どもに学習させる可能性もあります。

 

■親たちが相談できる窓口はいくつかある

したがって、JFA傘下の各都道府県や市区町村のサッカー協会へぜひ相談してください。それには公的機関なので実名で訴えることが前提です。暴力や暴言があった日時、相手、そのシチュエーションなど細かく文書化しておくこと、そしてそのことをともに伝えてくれる証人が必要です。

公益財団法人日本サッカー協会にも「暴力等根絶相談窓口」はありますが、【利用対象者】が「トップアスリートとその関係者」のため、それ以外の小中高校生は対象外かもしれません。上述したように、各都道府県や市区町村の相談窓口をまずは利用しましょう。

同じ問題を解決するために米国で設立された「セーフスポーツセンター」では匿名でも相談に応じますが、残念ながら日本ではどの競技団体もそこまでのマンパワーは割かれていないので、弁護士や有志のスポーツ人からなる民間の相談窓口も候補に入れてください。

例えば『日本スポーツマンシップコーチング普及コミュニティ』が設けている「スポーツにおける暴力・パワハラの相談窓口」です。こちらは匿名でも相談を受け付けます。私もアドバイザーとして相談員を務めています。

日本スポーツマンシップコーチング普及コミュニティ「スポーツにおける暴力・パワハラの相談窓口」 

 

サッカー少年の親が知っておくべき
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暴力暴言指導を無くすために日本サッカー協会が取り組んでいることはあるのですか
サッカー界から暴力、暴言、ハラスメント根絶のためにJFAが行うコーチへの指導

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