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こころ

2018年6月28日

「言うことをきく子よりも、言いたいことを言える子を育てよう」ドイツサッカーから学ぶ指導者の役目

キーワード:コミュニケーションコーチングドイツ坂本健二指導者考える力

38歳でドイツに渡り、指導者として活動を始めた坂本健二さん。ブンデスリーガの名門、SVヴェルダー・ブレーメンを始め、バイエルン州のクラブの監督やコーディネーションコーチ、アカデミーダイレクターなど、幅広く活動されてきました。ドイツで16年間指導した坂本さんが感じる、日本の子どもたちとドイツの子どもたちの違いとは、どのようなことでしょうか?(取材・文 鈴木智之 写真提供:坂本健二)

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■コミュニケーションをとりながら正解に気づける子どもに

坂本さんは「ドイツの子どもたちの特徴として、日本の子どもたちと比べて、とにかくよく喋ります」と印象を語ります。

「たとえば、日本の子どもたちを指導するとき、"いまのプレーは良かった?悪かった?"と聞いても、誰も良かったとも、悪かったとも言わないんですね。そもそも、どう考えているか、意見をあまり言わず、他の人が答えるのを待っていることが多い印象があります。私がドイツで指導をしていた子どもたちの場合、質問をされた人がまずすぐに答えますし、仮に答えられなかったら、周りの人が"いまのプレーは良かったと思うよ"という感じで、自然と誰かが答えていました」

日本の場合、子どもにかぎらず大人であっても、人前で発言をするのは得意ではありません。見当違いのことを言ったり、間違えたらどうしようという気持ちが働くのか、控えめな態度をとる人が多いもの。坂本さんも、自分が子どもの頃を振り返って、こう言います。

「自分の小学生時代を振り返ってみても、クラスで意見を言うのは3人ほどで、私も含めてほかの人はみんな黙っていました。いま思うと、授業を受けていて楽しいわけがないですよね。発表して、正解でも間違っていてもいいから発言してみて、先生やクラスのみんなとコミュニケーションをとりながら、これが正しいとか、こうすればいいんだと気がつく。それが『考える力』につながっていくのかなと思います」

■間違っていてもいいから、発言することが大切

坂本さんはドイツで指導をしているとき、子ども自身に考えさせて、発言させるために「間違っていてもいいから、まずは言ってみよう」と声をかけていたそうです。そこで、子どもたちが正解に近い答えを言うと「そのとおりだね」と言って、自信をつけさせるようにしていたそうです。そのようにして選手とコミュニケーションをとり、発言しやすい雰囲気を作っておいて、練習中には問いかけるコーチングで、選手自身が「どんなプレーをすべきか」を考えるように導いていきます。

「練習中、パスをミスした選手のところに行って、いまのパスはつながらなかったけど、良かった?悪かった?」と聞くと大抵「悪かった」と言います。そこで「何が悪かったの?」と聞くと「トラップがずれて、コントロールしきれていない状態でパスをしてしまった」といったように、答えが返ってきます。この会話だけで、選手自身が何が悪かったかを自ら見極めただけでなく、次は同じミスをしないように自然と意識します。その場面でコーチが「ちゃんとパスを出せ!」と外から怒鳴っても、まったく意味がないし、選手が上達するわけはありませんよね。指導者がすべきことは、ミスに対して技術的、戦術的なアドバイスを与えて、うまく行かなかったときと同じ状況を練習で設定して、繰り返しトレーニングをしてあげることだと思います」

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■うまくいかない理由を気づかせてあげることが大人の役目

コーチの働きかけによって、子どもたちは成長していきます。うまくプレーができなかったときは、なぜできなかったのかという理由を考え、改善方法を挙げて、次はそこを意識してプレーする。その繰り返しこそが、上達するための道にほかなりません。

ミスをした理由、プレーがうまくいかない理由がわからないままプレーするのが、一番良くありません。たとえば、選手にサイドのコンビネーションを理解させるのであれば、サイドハーフとサイドバックの選手を呼んで、こういう状況で何度もボールを失っているけど、どう思っているの?と聞きます。正解である『動くことでパスコースを作り、ボールがつながる可能性が高くなる』というのを、彼らの口から言わせます。そこで一度理解し二人の選手が共通認識を持てば、次から言う必要がなくなりますよね。どうすればいいかをわからずに、プレーするのが一番良くありません。もし、すぐに答えが出なければ時間を与えて、選手たちが数日間考えられるようにアプローチをします。サッカーのベースを理解すれば、応用もできます。それが、考える力であり、サッカーに必要な要素だと思います」

コーチや親が子どもたちに問いかけることで、選手自身は自ら考え、答えを探すようになります。大人から押し付けられた答えと、自分で考えて到達した答え。どちらが身につくかは、言わずもがなです。また、自分の意見を人前で発表するのも、考えていなければできないことです。たとえ正解でも、間違っていても、その経験を繰り返すことで、考える力が身についていくもの。そのなかで大人ができることは、自分で考えて答えを見つけるような環境づくり、意見を言いやすくなるための雰囲気づくりなのかもしれません。

※この記事は2016年3月に掲載した記事を再編集したものです。

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取材・文/鈴木智之 写真提供/坂本健二

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