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コラム

「子どもは自由に,親は我慢」山口素弘の子育て論

2015年3月20日

キーワード:子育て山口素弘挨拶習慣

21歳、19歳、10歳。3人の息子の父である元日本代表キャプテンの山口素弘さん。子育て歴21年。サッカー少年少女の親としてはサカイク読者の先輩21歳、19歳、10歳。3人の息子の父である元日本代表キャプテンの山口素弘さん。子育て歴21年。サッカー少年少女の親としてはサカイク読者の先輩にあたる彼の育成方針とは———。前編となる今回は、山口素弘の子育て論についてお話をうかがいました。(取材・構成 小須田泰二 写真 サカイク編集部)にあたる彼の育成方針とは———。前編となる今回は、山口素弘の子育て論についてお話をうかがいました。(取材・構成 小須田泰二 写真 サカイク編集部)

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■「まずは挨拶をしよう!」とずっと言い続けてきた
——今回は、監督・山口素弘としてではなく、父親・山口素弘としてのお話をうかがいたいと思います。読者の先輩として、これまで子育てをしてきたなかで、気をつけてきたことや力を入れてきたことなどはありますか?
 
子どもたちに対して特別なことは言ってこなかったと思います。「勉強しなさい」と口を酸っぱく言い続けてきたわけではありませんし、ぼくがサッカーをしてきたからといって「サッカーをしてほしい!」とお願いしたこともありません。あらためて振り返ってみても、なにかを強制したことはないと思います。
 
——ある意味、自由に育ててきたということですか?
 
そうですね。子どもたちに言い続けてきたことを強いて挙げるなら、“挨拶”くらいでしょうか。まずは朝起きたら「おはよう!」と言い、食事をする際は「いただきます」「ごちそうさま」とお礼する。学校に行く際には「行ってきます」、家に帰ってきたら「ただいま」と挨拶する。これが子育て論と言えるかどうか分かりませんが……(笑)。「まずは挨拶をしよう!」 というのは、ずっと言い続けてきたことです。山口素弘の教育方針と言いますか、ぼく自身の“こだわり”です。
 
——最近、しっかり挨拶できない子が多くなってきたと言われています。
 
そのことはぼく自身も感じています。ぼくはずっと体育会で育ってきたことも影響して、やはり挨拶だけはしっかりさせています。10歳になる三男が通う小学校の集団登校係の当番が回ってくるんですよ。旗を持って引率するんですが、最初のころ、「おはよう!」とぼくのほうから声をかけても、なかなか反応してくれないことが多かったんですね。その後、何度か顔を合わせても、なかなか挨拶できない子が多くて驚いたというか、寂しかった。そんな出来事があると、ますます挨拶の大切さを感じます。
 
人に会ったらまず挨拶するというのは、人として大切なことだと思うんです。挨拶できない社会人にはなってほしくないから、小さいころから習慣付けることは大事なことだと思っています。自然にできるようになっておいたほうが、人間関係においてもプラスに働くと思っています。
 
■子どもの未来のために、自由を与えてあえて失敗させる
——それ以外での“こだわり”はありますか?
 
本当に挨拶以外に思い浮かばないんですよ。挨拶、片付け、約束を守る……。当たり前のことしか言ってきませんでした。自分でやれることはやる、それ以外は自由とは言いませんが、やりたいことはやらせてあげたいという気持ちが強いです。逆に言えば、“自由を与える”ことがこだわりと言えるかもしれません。どんな親もそうだと思いますが、子育てしているうえで、いろいろな葛藤があるはずです。子どもの行動を見ていていると、「こうすれば解決できるのに…」、「こうしたほうが早いのに…」と思ってしまうもの。でも、そこで先回りして子どもたちに見本を示してあげるのはどうかなと思う。もちろん、そうすることが手っ取り早いのですが、そうして答えをすぐに教えてしまうと、子どもが失敗という経験をできずに成長する。それは成長とは言えないと思うんです。
 
——失敗から学んでほしいということですか?
 
そうです。やはり失敗して学べることは、すごく多いと思うんです。だからこそ子どもは自分で考えて行動し、たくさん失敗することが大事。自分の子どもに、とにかく失敗してほしいと思う親なんていませんが、自分自身で行動して失敗することは、子どもの成長には絶対に必要です。たとえば、四つん這いになって歩き始める、いわゆる“ハイハイ”は赤ちゃんが成長するうえで必要な動作です。でも、赤ちゃんはハイハイのやり方を誰からも教わっていない。つまり自分自身で考えて決めた動作なんです。それを見守ってあげることが大事だと思うんですよ。
 
——言いたいけれど言わないという“こだわり”ですか?
 
こだわりと言うものではありませんが、僕の子育ての基本はある意味、自分自身が我慢すること(笑)。子どもが大きくなってきて、「あれをやってはいけない」、「これをやってはダメ」と言って、チャレンジする機会が失われてしまうのはどうなのかな。サッカーでも同じことが言えると思うんです。やはり、誰でも褒められると嬉しいじゃないですか。ぼくもサッカーが好きになった理由はまさにそれで、自分で自由に選択できるところがすごく楽しい。自分で考えて自分で行動した結果を、監督やコーチが褒めてくれることが嬉しかった。言われたことをやって褒められるのとは違う。当然、成功と同じくらい失敗もありました。それを叱られることもありましたけど、自分がやったことを認められると自信につながりましたから。
 
——少年時代の失敗体験なくして成功体験なし、ですね。
 
そうですね。子どもたちに自由を与えて成長させてあげたい——。親としてもコーチという立場としても、そのスタンスは変わりません。転ぶことが分かっていながらも手を出さないことに親としてのジレンマはありますが、子育てというのは子どもの未来のためですから、やはり親のほうが我慢することが多いものだと思っています。
 
次回・後編は、父親・山口素弘さんが「長男」「次男」「三男」のそれぞれの性格と育て方の違いについて語ってもらいます>>
 
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