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考える力

「とことんサッカーを好きなってほしい」城福浩の子育て論

2016年8月 9日

キーワード:城福浩子育て

お子さんが悩んでいるとき、あなたはなにをしてあげられますか?
 
前回に引き続き、城福浩さんに“サッカーを通じて子どもが得られるもの、学べるもの”について語っていただきます。
 
サッカーをやめてしまった息子さんと城福さん自身の経験を交えてお伝えします。(取材・文 大塚一樹)
 
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<<子どもに「サッカーを辞めたい」と言われたらどうしますか?城福浩のサッカー少年の育て方
 

■サッカーをやめてしまった息子、親としてできること

「子どもと親の関係性は人それぞれで、唯一無二のものだと思います。具体的な話をすると、ぼくの息子もサッカーをプレーしていました」
 
城福さんが話してくれたのは、自身がU-17日本代表を率いていたころのエピソードでした。
 
「ぼくがU-17日本代表の監督を務めていたころ、ちょうど息子が中学、高校でサッカーをしていました。つまり、U-17の選手と同年代だったわけです。これは息子に相当辛い思いをさせてしまいました」
 
城福さんの息子は当時サッカーをプレーしていて、周囲からは「U-17日本代表の監督の息子」という目で見られることになります。
 
「サッカーに関わっていられなくなるほどのプレッシャーを受けたと思います。もちろん、実力的にプロになるようなレベルではなかったのですが、厳しい環境にいる息子にぼくは何もしてあげられなかった。週末は選手の視察かキャンプで家にいませんでした。結果的に息子は途中でサッカーから離れてしまいましたが、いまは熱狂的なリバプールのサポーターで、またサッカーに近いところに戻ってきてくれました。サッカーを本当の意味で嫌いになったわけじゃないんだなと嬉しく思いますけど、当時は本当に何もしてあげられませんでした」
 

■親は子どもの成長を見て、応援することしかできない

城福さんは自身の経験を元に、親と子どもの関係性はどれひとつとして同じものがなく、こうすればいいというマニュアルは存在しないと言います。
 
「ぼくは家にいなかったので、息子のことを見守るどころか見てもいなかった。それは特殊な環境だと思います。でも、そういう環境の家だってあると思いますし、親子の関係、家庭環境は十人十色ですよね」
 
だからこそ、見守る姿勢やサポートしてあげることが「親にできること、しなければいけないこと」だと言います。
 
「子どものやることすべてに道筋を示してあげられる親なんていませんよね。理想的な道を語ることはできても、子どもは必ず乗り越えなければいけない壁にぶつかって、そこで悩むことになると思うんです。そこで子どもに対して何ができるかと言えば、ぼくは応援することしかできないと思います。サッカーを通じて自分の環境を受け入れ、乗り越えていくことを学んでいくしかない。サッカーを通じて我慢することや、乗り越えたときに得られる達成感、それを経験して育っていく子どもたちを、親は見てあげて、一緒に喜んだり、悲しんだりすることしかできません。そこで無理に関わろうとするのではなく、一番難しいことですけど我慢して見ていることが必要なことだと思います」
 
成長のスピードや度合いは人によって違います。その中で子どもたちは挫折や失敗を経験して、次のステップに進んで行きます。多くの選手を見てきた城福さんは、プロになる選手は順風満帆のエリートよりも、挫折を多く経験した選手のほうが多いと言います。
 
「サッカーへの思いが強ければ強いほど、たくさん挫折するんです。サッカーをしている子どもたちに言えることがあるとすれば、とことんサッカーを好きになってほしいということです。サッカーが大好きで、テレビでもサッカーばかり観ているし、暇さえあればボールを触っている。そういう選手はうまくなりますよ。サッカーが大好きなら、試合に負けたら悔しいし、出られなくても悔しいし、交代させられたら悔しい。パッションがあるからこそ悔しいし、挫折だと感じるんです。その悔しさがサッカーの上達や人間形成に役立つと思います」
 

■誰かに与えられた規律、ロボットのような挨拶に意味はない

かつて城福さんが率いたU-17日本代表は12年ぶりのアジア制覇を果たし、2007年に行われたU-17W杯への出場を果たしました。世界を目指す、その年代のエリート選手たちを指導した城福さんはどんなことを気にかけていたのでしょう。
 
「もう10年くらい前の話なので、それが良かったか悪かったというのは置いておいて、チームの立ち上げ時に14、5歳だった彼らをどう指導するかということを、サッカーだけではなくいろいろな面で考えさせられることはありました。たとえば挨拶。誰かの顔を見たら機械的に挨拶をするというのは、そう決められているからそれに従っているだけです。そうではなくて、挨拶の意味を理解して、必ず立ち止まって挨拶をしようと言っていました。挨拶ができる、スリッパを揃えられる選手が良い選手という考えかたに、抵抗があったんですよ。それくらいの年代だと、こうしろって決められたほうが楽なところもあるんです。規律があっていいと言われるんですけど、本当の規律って、誰かに言われたわけじゃなく、誰も見ていなくても普通に挨拶ができることだと思うんです。だから規則を出来るだけ少なくしたい、規則がなくても自分たちで考えて行動できる集団でありたいとは思っていました」
 
サッカーのためにどう食事をとれば良いのか、休養はどうしたらいいのか? 何のために行動するのかを考えることで、少年たちは大人になっていきました。何を成長の結果とするかは意見の分かれるところかもしれませんが、当時W杯本戦に出場したU-17日本代表の教え子たちは一人を除いてプロ選手になったと言います。
 
「教え子なんておこがましいですけど、同じ目標を掲げて同じ時間を過ごした仲間とJリーグの舞台でプレーできるというのはぼくにとっては特別な想いがあります。W杯に呼んだ選手だけじゃなく、最後の最後で代表から落とした選手、代表に呼んだ選手たちも同じ目で見ています。彼らが一年でも長く高いレベルの舞台でプレーしてくれることに対しては、不思議と特別な想いがありますね」
 
最終メンバーの中で唯一プロへの道を進まなかった選手は、進路を決めた際、城福さんに電話をくれたそうです。彼が別の道で奮闘していることに城福さんは喜びを感じると言います。
 
「サッカーをやめて医学部に行きますって言うんですよ。これも嬉しかったんです。じつは、彼に限らず、すべての選手に言えることなんですけど、日本代表に呼んだことで選手のルートを変えてしまったんじゃないかという思いがつねにあったんです。進学校に行って、勉強をがんばって受験をしていたかもしれない。代表に呼ばれたことで、Jクラブのユースにピックアップされて、プロを目指すことになって、何かを犠牲にしてしまったんじゃないかと。可能性を制限したかもしれないという思いがあったので、医学部に行って医者になりたいという進路を選んだ選手の進む道というのは嬉しいです。彼には日本で一番サッカーがうまいドクターになってほしいと思っています」
 
次ページ:サッカーだからこそ見ることができるわが子の表情
 

 
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取材・文 大塚一樹

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