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考える力

少年サッカーコーチの体罰動画からコミュニケーションについて考える

2012年8月24日

キーワード:コミュニケーションメンタル子どものやる気自立

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ある動画がインターネット上で物議を醸しています。少年サッカーのコーチがハーフタイム中に選手に対して体罰を与えている映像です。その内容を具体的に紹介することは控えさせていただきますが、サカイクとしては肯定できる指導の様子ではありませんでした。この映像をご覧になった方々も多いかと思いますが、みなさんはどう感じられたでしょうか?
(※写真はイメージです)
 
 

■これは氷山の一角に過ぎない

まず前提として、これから述べることは、その映像や該当チーム、コーチに対して言及しているものではありません。インターネット上に投稿されている内容はあくまで表に出ている一部分を切り出したものです。背景を十分に理解せずにそれだけを取り上げてチームやコーチを批判することは正しい行動とはいえません。
 
我々は、この映像にあるような光景は氷山の一角に過ぎないと考えています。個人攻撃では何も解決しません。サッカーを取り巻く環境全体の変革が必要です。インターネット上でも様々な議論がなされていますが、あらためて背景や子どもとのコミュニケーションについて考えてみました。
 
 

■指導現場に根付く戦後のスポーツ指導

そもそも、このような指導が行われる背景には、戦後の学校教育が影響しているのかもしれません。日本のスポーツの原点は、体育の延長線上にあると考えています。多くのスポーツ団体は、スポーツ少年団がスタートでした。その指導者は、学校の先生が中心だったのです。
 
学校で行われる体育は、戦後の知・徳・体の一環で位置づけられた「からだの教育」に用いられました。一方スポーツは、ルールに基づき競技性・競争性を有する文化のことと定義されています。しかし、体育の現状はスポーツを教材とはしているものの知育や徳育という部分があまりフォーカスされずに体力や運動神経を鍛えることが中心になっています。スポーツの”脳”を鍛え探求することで得る、その競技本来の楽しさはあまり指導されてきませんでした。
 
そのため、技術や体力の向上のために選手を追い込み鍛えることや、勝利至上主義に走る指導が中心になってしまったのでしょう。保護者は、チームに預けていれば体も鍛えてくれるし、社会での常識やしつけも指導してくれる。また、その指導でチームも高い成績を残している。そこで少々の体罰が行われていても、子どものためなのだと容認してきました。
 
時は経過し、少年サッカーにおける指導者は学校の先生から、プロのコーチ、保護者へと変わってきましたが、自分たちの経験をベースとした指導が未だに根付いており、至るところで繰り返されているのです。しかし、サッカーにおいてこの状況が正しいのでしょうか?
 
 

■子どもたちが「サッカーを楽しむ」ことが最も大事

再三、サカイクでも紹介していますが、小学生年代においては「サッカーを楽しむ」ことが最も大事です。短期的な結果だけを求め、サッカーの楽しみを奪うことは将来の成長やサッカーを続けることそのものにも影響を与えます。では、サッカーを楽しむとはどういうことでしょう?
 
サッカーは『自分で考え、自らの意思で行動する自由なスポーツ』です。ピッチにおける選手個々の高い自主性が求められます。その自分で考え行動するという部分が、サッカーの楽しさであり、醍醐味であるとサカイクは考えています。
 
サッカーを通じて得られる気付きや学びは、子どもたちにとって、大きな力になります。指導者に言われたことだけをやるよりも、自分で考え自らの意思でチャレンジし、行動を起こして得られた成功体験の方が、子どもたちは自信を得ることができます。その自信が向上心につながり、さらなる成長へと子どもたちを導くのです。子どもたちは成長を実感することで益々サッカーが楽しくなり、夢中になっていくことでしょう。指導者は、子どもにやらせるではなく、子どもの自立をサポートすることが、大切なのです。
 
IMG_5787.JPG
 
 

■言って従わせるより内発的な行動が子どもを成長へ導く

では、子どもが自立する上で、我々が経験してきた「怒鳴る」、「殴る」、「脅す」というネガティブなコミュニケーションが有効でしょうか? 以前のコラムでも紹介したように、『怒る』と『叱る』は違います。
 
コミュニケーションとは、人と人が互いに意見・感情・思考を伝達し合うことです。怒鳴るとは文字通り『怒る』こと。感情に任せて怒りをぶつけるだけでは一方通行にしかなりません。また、それが常態化すれば、やがて相手は聞いているフリをしていても、本当の意味で耳を傾けることをやめてしまいます。自分の感情を一方的に吐き出すだけでは、自分の意見、思考を伝えることは難しいのです。
 
一方、『叱る』とは、相手を正しい方向へ導くために何が良くないのかを「気付かせる」ことです。厳しく指導をすること=怒るではないですし、ほめて育てる=甘やかすことでもありません。サカイクの連載記事でもお世話になっている東海大学の高妻容一教授は以下のように語っています。
 
「学問的にも、『このスポーツが好き。やっていて楽しい。上達することがおもしろい』といった気持ちにあふれた、“内発的なやる気”のある選手が伸びると証明されています。勝手な目標を押しつけたり、追い込んだりしないよう、子どもの現状を理解した後押しをすることが、保護者の役割だと思います」。
 
▼出典元
一緒に笑って、感動しよう。サッカーを楽しむ保護者は、子どもの成長見本
 
ここでは、保護者について述べていますが、これは指導者の役割も同じことです。ネガティブなコミュニケーションは、子どものやる気や自主性を削ぐ要因にもなります。大人でも、ミスやできないことばかり指摘されるより、できたことを認めてもらい、誉められた方がやる気につながるものです。子どもにおいては尚更でしょう。
 
サッカーは助け合いのスポーツでもあります。誰かがミスをすれば味方がカバーし、能力が劣る選手がいればチームでサポートします。またサッカーにはタイムもありません。ミスをしてもすぐに切り替え、考え行動することが求められます。常に前向きであるためにポジティブなコミュニケーションが必要になるのです。
 
 

■自分で考えるサッカーを子どもたちに。

とは言っても、指導者も人間なので体調や気分など自分自身のコンディションが悪い時もあります。やる気のない子ども、何度言っても聞かない子、チームの中の温度差、保護者の介入など、様々なストレスを抱えた中、それを実践することはとても大変なことです。短期的に見れば、指示をしたり、怒鳴って聞かせる方が結果にも結びつきやすかったりもします。しかし、我々はサッカー本来の楽しみを子どもたちに伝え、成長へと導かなければなりません。
 
育成年代の指導において、コミュケーションの課題はとても根深いものです。自分ひとりが変わるだけでは解決できません。少年サッカーを取り巻く人々の価値観、環境など全てを変えていく必要があるのです。個人で変えることはとても大変ですが、みんなで手を取り合い、同じ志で行動すれば意外と世の中を変えていくことはできるのではないでしょうか。
 
サカイクはそうした変革をみなさんと一緒に起こしていきたいと考えています。すぐには変えられないかもしれませんが、子どもたちの未来に携わる我々はそれを乗り越えなければなりません。ぜひ、一緒にがんばっていきましょう。サカイクは今後も情報発信を通じ、この考えに賛同いただける方を増やし、子どもたちが心からサッカーを楽しみ成長していける環境を作っていきたいと考えています。
 
育成に正解はありません。しかし、我々は信じる道を進みます。
 
 

【最後に】

この記事の公開については、社内でもかなりの議論を重ねました。体罰の定義とは何か?そして体罰の是が非についても非常に難しい問題ですし、地域や保護者によっても考え方が異なります。我々が取り上げることによって、映像のチームに対する不要な詮索や誹謗中傷を助長するかもしれません。しかし、すでにネット上で大きな話題となり、多くのサッカー関係者がこの事実について議論している中、我々もきちんと意見を述べるべきなのではないかという結論に達しました。冒頭でも述べましたが、これは個人だけの問題ではなく、古くから染み付いた社会全体の問題です。議論や解決の矛先が個人に集中しないことを切に願います。
 
 
<<コミュニケーションに関する参照記事>>
子どもを『怒る』と『叱る』の違いを理解する
子どもに自分で考えさせる上手な『叱り方』
"自主性に任せる"って言うのは簡単だけど...
"褒めて伸びる"秘密は脳にある
「関係の質」を高めることが強いチームを育てる
"思い込み"と"ワクワク"が子どもを成功に導く!【はじめようポジティブシンキング1】
"口ぐせ"が子どもの未来を変える!【はじめようポジティブシンキング2】
一緒に笑って、感動しよう。サッカーを楽しむ保護者は、子どもの成長見本
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文/サカイク編集部

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