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楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた

2019年4月24日

「勝たなければいい選手が育たない」は、本当か?

キーワード:コーチング全日本U-12少年サッカー大会補欠野球部高校サッカー高橋正紀

サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜経済大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。

聴講者はすでに5万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。

高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。

日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。

根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。これから数回にわたってお送りします。「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。
(監修/高橋正紀 構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)

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スポーツは「遊び」なのです。(写真はイメージです)

■日本のスポーツにはびこる「補欠文化」

勤務する大学のサッカー部で総監督を務めながら、今年度からは野球部の部長に就任しました。
「一流のスポーツマンのこころ」の講義を大学の全運動部で行う私に、野球部のスタッフから「部内にスポーツマンのこころを浸透させたいので、ぜひ部長になってほしい」とオファーがあったのです。

ずっとサッカーをやってきて、サッカーの本場であるドイツにまで留学し、サッカー部の総監督でもあるのに、なぜ野球なのか。野球の技術や戦術もよく理解できていません。
それなのに、野球部の部長になどになっていいものか? 一瞬戸惑いましたが、すぐに「引き受けます」とお返事しました。

なぜなら今、日本のスポーツが抱えている問題はどの競技にも通底していることであり、野球の世界を知ることは、私自身にとっても大きな学びになると考えたからです。

ご存知のように、野球は9人しか試合には出られません。先発以外で途中出場の可能性があるのは、代打と交替投手です。ただし両方とも、それぞれ一人か二人。展開によっては9人で試合終了となります。

岐阜県の大学野球リーグには2軍のリーグがあるようですが、それ以外ではレギュラー外の学生達にプレー機会がありません。新米部長としては、多くの選手たちがプレーできる場をつくらなくてはいけないと考えています。

大学サッカーも全員がトップチームで試合に出られるわけではありません。

でも、サッカーは大学関連だけでもトップチームが参加するリーグ以外にインディペンデンスリーグ(通称Iリーグ)というリーグがあり、さらに各県の地区リーグからはじまる社会人リーグにも大学生チームとして出場でき、県リーグ、地域リーグ、JFLへの昇格の道も開かれています。トップチーム以外の選手たちはそういったリーグでプレーすることができます。もちろん、十分だとは思っていませんが。

また、大学以外でも部員数の多い強豪高校などは、同じ高校が複数のチームを登録できる高校リーグのシステムをうまく活かして選手にプレー機会を与えています。部員数が多くても、選手たちが試合に出られないストレスを抱えることなく、強化につなげています。

大学生であれば2年生からは成人するので、自分たちでエントリーをしたり、試合会場に移動したりすることも十分可能になります。

しかしながら、そういったことが難しい多くの中高生や小学生は、大人の引率の下で決まった大会にしか出場できません。そのような環境下で熟成されたのが、日本のスポーツの「補欠文化」でしょう。

■試合に出られない子を切り捨てる日本の指導、平等に機会を与える欧州

昨年末に開催されたJFA 第42回全日本U-12サッカー選手権大会でも、エントリーした選手全員をプレーさせたのは、48チーム中わずか9チームだけでした。この傾向は以前からで、日本サッカー協会の田嶋幸三会長がこの件に関して憤りのコメントを出していましたが、恐らく協会に言われたからといって全員出場させるようにならないでしょう。

全員をプレーさせなかった、つまりベンチに置いたまま大会を終わらせてしまった39チームの関係者のほとんどが、スポーツを遊び、もしくは「楽しませること」ととらえていないのだと思います。

そして、その人たちも子どもの頃から「試合に出たいなら頑張ってうまくなれ」と大人たちに言われてきたことでしょう。よって、試合に出られない子どもを切り捨てることに、なんら抵抗がありません。

「下手な子を出場させたら、試合に負けるじゃないですか」
「下手な子を出して試合に負けたら、勝ちたいと思っている子どもの気持ちはどうなるのか」

そんなことを大人が真顔で口にします。

その、彼らが「下手」と表現する子どもたちを教えているのは誰なのですか?と聞きたいところです。

一方、欧州では、ユース以下の育成年代ではなるべく全員平等にプレー機会を与えようとします。いつ芽が出るかわからないといった理由よりも、「ユース以下は子どもですよ。子どもは全員同じようにプレーさせるものだ」という概念が浸みこんでいるようです。

ドイツをはじめリーグ戦文化です。低学年のリーグ戦結果をサイトなどで公表しないようにしているところもあります。理由は、試合結果にこだわる風潮はヘルシーではない。つまりは不健全だということです。

健全なうえに、コーチングメソッドがしっかり浸透しているうえ、新しい技術や戦術はアップデートされていくので、勝とうとしなくても、どんどんいい選手が育ちます。

そして、子どもの枠にはまらないスペシャルな子は、どんどんトップに上げます。だから、17歳でプロ契約する選手などざらにいます。珍しくないので、日本のようにニュースにもなりません。

次ページ:補欠文化の限界-少年サッカーがいま一度考え直すべきこと

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