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楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた

"天才"タイガーウッズが消えなかった理由

公開:2019年4月17日 更新:2019年4月24日

キーワード:コミュニケーションスポーツマンのこころタイガー・ウッズルソー寛容対話教育論高橋正紀

サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜経済大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。

聴講者はすでに5万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。

高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。

日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。

根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。これから数回にわたってお送りします。「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。
(監修/高橋正紀 構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)

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対戦相手をリスペクトするこころとは(写真はイメージです)

■寛容さとは- 地に落ちたスターの復活劇に見る、アメリカと日本の違い

ゴルフ界で天才といわれるタイガー・ウッズが4月15日(日本時間)、マスターズで14年ぶりの優勝を遂げました。

ご存知のように、タイガーは不倫問題に運転時の逮捕と、ここ十数年は人生のどん底を味わってきました。それでも、このようにして復活を果たした。

そんなドラマが生まれるところに、アメリカという国の懐の深さを感じます。

どんな人にも、本人が心を入れ替えさえすればチャンスは巡ってくる。彼のように挑戦するこころを持ち続けることは、決して容易ではありませんが、彼を信じてサポートし続けた人たちの存在も大きかったでしょう。

報道によると、以前はメディアや記者に対する態度はいいものではなかったが、さまざまな騒動を経て自分からあいさつや握手をするようになったそうです。

そんなかつてのスターに対し、周囲は特別扱いしなかった代わりに、排除することもなかった。

アメリカも揺れてはいるけれど、まだまだ社会には寛容さが残っている。それが彼の復活を後押ししたのでしょう。

では、日本はどうでしょうか。
日の丸をつけたり、プロにまでなった選手が、ドーピングや薬物使用、窃盗などの事件を起こす例は複数あります。しかし、その選手が再び表舞台に現われ、アスリートとして復活する姿を私はほとんど見たことがありません。

昭和の時代には反社会的組織とのつながりが判明し、野球界を追放された選手もいました。

芸能界では、薬物使用や淫行事件を起こしたタレントなどは復帰しているし、不祥事を起こした政治家も少しの間休んで選挙で果たせば「禊を済ませた」として何食わぬ顔で活動を再開しているのに。これはなぜでしょうか。

スポーツだけに"特別な"クリーンさが求められているのかもしれません。
それに加えて、アスリート自身が、失敗や挫折に対し必要以上に大きなダメージを受けてしまう仕組みがあるのではないでしょうか。

■子どもは小さな大人ではない。努力するエネルギーを生み出すために親が心得るべきこと

サッカーの世界でも同じようなことが起きています。
少年サッカーにかかわっている方はご理解いただけると思いますが、「天才」「エース」と言われるうまい選手は何かと"特別に"扱われてしまう場合があります。

すね当てを忘れてもエースであれば、ベンチの控え選手のものをコーチが持ってきてすぐに試合に出場させてしまう。他のクラブに行かれては困るので、その子が他の子どもに「へたくそ」などと暴言を吐いても、あまり厳しく戒めない。

これはつまり、甘やかしていること。勝たなくてはいけないという理由から"特別に"大目に見ているということです。ところが、そのように育てられてしまうと、中学や高校で集団の中で抜きんでた存在でなくなったり、挫折したとき、それを乗り越えるエネルギーが生まれてきません。

そのような子どもたちを見るにつけて、18世紀のフランスの思想家であるジャン=ジャック・ルソーの言葉を思い出します。
「子どもをダメな人間にするのは簡単だ。欲しがるものを際限なく与えればよい」

悪いことをしても許される。
サッカーがうまければ、勉強しなくてもいい。
サッカーが忙しいから、家の手伝いもしなくていい。
欲しいものはなんでも手に入る。

子どもにとってそのような環境は、まさに「欲しがるものが際限なく与えられる」"特別な"環境でしょう。

これは、フランスの哲学者ルソーが1762年に上梓した『エミール、または教育について』で、社会を担いうる人間を育てるための「教育論・人間論」として論じられています。

つまり、250年近く前に子育てのひとつの真理は指摘されていたわけです。それなのに、私たちはそのことを学ばず、子どもをダメにしていないでしょうか。

ルソーは、「子どもは小さな大人ではない」「子どもには子ども時代という固有の世界がある」とも語っています。

これは花まる学習会の高濱正伸さんが語られたことですが、子どもという存在は小学校3年生くらいまでは、別の生き物。むやみに何かを欲しがった時には、すべてノーと答えればいい。この年代までの子どもは一日経てば欲しがっていたことなどケロッと忘れてしまう。しかし、そのときに求めたものが与えられなかった飢餓感や、それを我慢したという経験は残るのです。

飢えていれば、自分で工夫してつかみ取ろうとします。いい意味での渇望が生まれます。努力するエネルギー。工夫する英知。人生の原点と言えるものです。

次ページ:子どもをダメにする親とは

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