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楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた

握手をしない高校球児がグッドルーザーになれない理由

公開:2019年3月27日 更新:2019年4月17日

キーワード:グッドルーザースポーツマンのこころリスペクト体罰対戦相手武士道高校野球高橋正紀

サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜経済大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。

聴講者はすでに5万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。

高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。

日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。

根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。これから数回にわたってお送りします。「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。
(監修/高橋正紀 構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)

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対戦相手をリスペクトするこころとは(写真はイメージです)

■たった数秒の握手を拒否した背景。過去の類似例に見る共通点

春の風物詩でもある選抜高校野球で、後味の悪い風景に出会いました。

2019年3月24日。明豊高校(大分)に5対13で大敗した横浜高校ナインは、試合終了後に握手をしませんでした。

主審の「礼!」の声とともに帽子を取って深くおじぎをする両ナイン。明豊高校の選手らは一歩前に出て手を差し出すしぐさをしたが、横浜高校の選手はひとりを除いて握手せず、踵を返すと足早にベンチに戻って行きました。

この様子が野球中継で流れると、SNS上で横浜高校に対する批判や疑義が相次ぎました。
「ボロ負けしたから試合後の握手は無し?」
「相手に対して失礼でしょ」

これに対し、横浜高校が握手しなかったのには理由があると言う意見も。神奈川県高野連が公式サイトに載せた「大会細則」(※第95回大会のもの)には「両チーム選手の試合前および試合後の握手はしない」と書かれているのです。

ネットのニュースサイトの記事によると、同県高野連の専務理事は同日、大会細則についてはよくわからないとしたうえで「試合後に握手するなとは言っていない」と説明。「整列後に校歌斉唱もあるので、時間を長引かせないよう素早く動きなさいと言っている」と話したそうです。

「時間を長引かせない」の理由は本当でしょうか。握手をする行為にかかる時間は数秒です。

この握手拒否、もし横浜ナインが「整列後に校歌斉唱もあるので、時間を長引かせないよう素早く動け」と言われているからという理由であっても、疑問が残ります。

・横浜高校は、神奈川ルールであって甲子園ルールと認識しているのかどうか。
・横浜高校は県予選でも時間短縮のため全試合握手拒否をしてきたのかどうか。
・勝っていても握手拒否をしたのかどうか。

実は、昨年のセンバツでも、静岡高校に負けた駒大苫小牧高校と、三重高校に敗れた日大三高が握手をしませんでした。この2試合と今回の横浜高校の3つの案件には、共通点があります。それは「甲子園優勝経験もある名門校が、そうではない高校に大敗した」という部分です。

負けた彼らは、自分たちを負かした相手(明豊高校)をリスペクトする気持ちをきちんと持っていたでしょうか。

■日本人はどうして「グッドルーザー」になれない?

「スポーツマンのこころ」の講義では、サッカーのみならずすべてのアスリートに「グッドルーザーであろう」と呼びかけてきました。

スポーツは遊びであり、非日常の時間。勝利を目指してとことん真剣に闘っても、ゲームセットになれば、ラグビーのように勝敗を超えて互いの健闘をたたえ合う。そのことが次の成長にもつながります。

それなのに、高校野球はいったい誰のために試合をやっているのでしょう。

サッカーでは、幼稚園からプロまでカテゴリーに関係なく、試合前にすれ違いながら握手するのは公式戦の儀式になっています。

十数年前はふてくされてしない選手も数多くいました。今もいますが、心ある指導者の居るチームではそんな場合は「どうした? それでいいのか? こころが弱くないか?」といさめられます。

ラグビーも同じです。ノーサイドになり、互いが向き合って親指を立ててエール交換をします。互いの健闘をたたえ合う意味があります。

一方で、剣道は勝った選手がガッツポーズをすると負けになると聞きます。勝った選手がその場で喜びを表現することは、負けた相手に対する侮辱であり、ともに闘った相手をリスペクトする武士道精神に反する無様な行為なのです。

また日本には「敵に塩を送る」という言葉もあります。これは今川氏と北条氏の経済封鎖による塩不足で領民が苦しんでいる武田信玄に対して、敵である上杉謙信が塩を送ってその領民を助けたという逸話です。武士道の世界に存在していた、敵であろうともお互いをリスペクトする精神が、なぜスポーツには継承されなかったのでしょうか。

次ページ:学校教育に体罰がはびこる入り口になった原因

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