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楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた

2019年5月23日

「好きだから壁を乗り越えられる」 イチローが実証した「夢中」の価値

キーワード:GRITやり抜く力イチロースポーツマンのこころスモールステップ内発的動機づけ外発的動機づけ高橋正紀

サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜経済大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。

聴講者はすでに5万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。

高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。

日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。

根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。
(監修/高橋正紀 構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)

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夢中になれること。それが上達にもつながるのです(写真はイメージです)

■イチローの引退会見に見る「楽しむこと」が壁を超える力につながるということ

子どもにスポーツを楽しませろっていうけれど、それだけで凄いヤツが出てくるんですか?

少年スポーツの関係者によく言われる言葉です。

最近はあまり聞かれなくなりましたが、みなさん口に出さないだけ。どこか、まだ、揺れている。また別の方は、そんな指導者仲間にコーチングの本質をうまく伝えられず、葛藤を抱えていないでしょうか。

私も自分の伝え方が足らないなと考え込むときがあります。

そんな私たちに、野球界のレジェンドであるイチローが、大きな勇気を与えてくれました。

──子どもたちにメッセージをお願いします。
記者の質問に、彼は苦笑いを浮かべながら口を開きました。

シンプルだな。メッセージかー。苦手なのだな、僕が。

野球だけでなくてもいいんですよね、始めるものは。
自分が熱中できるもの、夢中になれるものを見つければ、それに向かってエネルギーを注げるので、そういうものを早く見つけてほしいと思います。

それが見つかれば、自分の前に立ちはだかる壁にも、壁に向かっていくことができると思うんです。それが見つけられないと、壁が出てくるとあきらめてしまうということがあると思うので。いろんなことにトライして。自分に向くか向かないかよりも、自分の好きなものを見つけてほしいなと思います。


(引用元:AERA.dot イチロー引退【会見全文・前編】「監督は絶対無理。人望ない」「日本復帰の選択肢はない」)

時間は少しさかのぼりますが、3月21日深夜に行われたイチローの引退会見。

会見が始まってすぐに、ひとりの記者がよい質問をしてくれました。

「野球やスポーツじゃなくてもいい。ひとつ夢中になれるものを」
「夢中になれば壁を乗り越えられる」


彼はそう話したのです。

私は彼の言葉をこう解釈しました。

夢中に取り組んだ時間があれば、そのあとに高い壁が出てきても、エネルギーを注げる。夢中になれるものでないと、壁が出てきたときにあきらめてしまうものだ、と。

勝つために、ずっと同じメンバーで戦わせる。

へとへとになって楽しむ余裕はなく、勝つことがサッカーをする「外的動機づけ」なので、負けてしまうと、そこでバーンアウトする。上に行けば上の選手がいることに絶望し、サッカーをやめてしまいます。

つまり、サッカーを純粋に楽しんで内的な動機づけでボールを追っていないからです。

このことを、イチローが自らのキャリアで実証してくれました。

■やり抜く力「グリット」を身につけさせる方法

これは私が「一流のスポーツマンのこころ」の講義で伝えているやり抜く力を表す「グリット」の話に通じます。

グリットを身につけさせる正しい方法は、まず「子ども自身が納得して、やり抜かねばならないことに立ち向かう」ことが重要です。

そのためには、自分を大切にしなくてはいけません。ベストを尽くして自分を磨くこと。それが自分を大切にすること。これは「スポーツマンのこころ」の基礎になることですが、それを理解させたうえで、指導者は、初めて子どもたちを鼓舞してほしいのです。

「君は自分を大切にできているか?」
「今のままでいいの?」
「自分を磨くことになっている?」

コーチご自身の言葉や態度を外発的な刺激として、子どもたちが自分を見つめなおすきっかけを与えます。そこから子どもが気づいて自分で考え始める、動き始める。そこで初めて内発的な動機づけに近づけるわけです。

以前もお話ししましたが、大人がきっかけを与える「外発性」から、子どもが主体的に行動する「内発性」へ連動させるということです。過度に指示を与え、大人の言う通りにプレーさせる環境では、子どもは決して「夢中」になれません。

引退会見でこころに残った言葉がもうひとつあります。

それは、彼が「僕は人より頑張ったとは言えない」と言ったことです。スポーツの指導者は「練習は裏切らない」とか「日本で一番練習をしてきたのはおまえたちだ」などといって子どもを鼓舞します。賢い子どもは「証拠はあるのかな?」と心の中で疑義を唱えています。エビデンスなんてないのに、と。

イチローはこう言いました。

生き様というのは僕にはよくわからないですけど、生き方と考えれば、さきほどもお話しましたけれども、人より頑張ることなんてとてもできないんですよね。

あくまで測りは自分の中にある。それで自分なりにその測りを使いながら、自分の限界を見ながらちょっと超えていくということを繰り返していく。
そうすると、いつの間にかこんな自分になっているんだという状態になって。

だから少しずつの積み重ねが、それでしか自分を超えていけないと思うんですよね。
一気に高みに行こうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて、それは続けられないと僕は考えているので。
地道に進むしかない。
進むというか、進むだけではないですね。後退もしながら、あるときは後退しかしない時期もあると思うので。でも、自分がやると決めたことを信じてやっていく。

でも、それが正解とは限らないわけですよね。間違ったことを続けてしまっていることもあるんですけど。
でも、そうやって遠回りをすることでしか本当の自分に出会えないというか、そんな気がしているので。


(引用元:AERA.dot イチロー引退【会見全文・前編】「監督は絶対無理。人望ない」「日本復帰の選択肢はない」)

つまり、彼は「自分が成長するのに他人を気にすることはない。自分にベクトル合わせろ」と伝えたかったのではないかとおもうのです。

自分の中に自分をはかる「測り」があって、ちょっとずつ自分の限界を超えてきた。気が付いたらこんなことろまできたんですよ、と。

次ページ:イチローが証明した「スポーツマンのこころ」

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監修:高橋正紀 構成・文:「スポーツマンのこころ推進委員会」

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