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楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた

上達のイメージは「らせん階段を昇ってくる子ども」"当たり前"を見直そう

公開:2020年2月12日 更新:2020年2月14日

キーワード:MTMスポーツマンシップドイツ一流アスリートの心得変化に対応池上正物事のらせん的発展の法則高橋正紀

サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜協立大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。

聴講者はすでに6万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。

高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。

日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。

根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。
(監修/高橋正紀 構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)

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(写真は少年サッカーのイメージです)

 

■練習の「意味」ではなく「やり方」の質問ばかり。反復練習にこだわる日本人

以前、ドイツ人のコーチからこんな話をされました。

「タカハシ、ドイツに視察に来る日本人コーチは、ぼくらがやっている練習メニューを一所懸命にノートに書きつけている。どうしてそんなことをするんだろう? 意味がわからない」

聞けば、4対4を行うと「いつもこのグリッド(範囲)で行うのですか?」とか「何分くらい?」「ワンタッチではやらないのですか?」と練習のやり方に関する質問に終始するそうです。

「彼らの質問はおかしいよ。その時のそのチームの課題を改善するためにのみメニューは創られるのだから、それを正確に書き写しても彼らには何の意味もない。私がどんな課題に対して、どんな意図でその練習をしているかを聞かれるのならば話す意味があると思うけどね

加えて、ドイツでは育成年代であろうとも、毎日同じ内容の練習はやらない。そこについても日本人コーチは驚きます。私もドイツに行ったとき、驚きました。日本では、例えば1週間のサイクルである程度同じ練習を繰り返すことが多い。いわゆる、反復練習ですね。

この反復練習は、意識を高く持てない場合、何も考えずにトレーニングすることになり易い。曜日ごとにほぼ同じメニューをしばらくの間繰り返すので、そこに"慣れ"が生じることで、練習の質が落ちる可能性があるのです。

反復練習にこだわるのは、学校でドリル学習を多くやらされてきたからなのか? と考えたりします。同じスポーツで、野球も素振りという反復を繰り返します。これは自分のよい形を探し、定着させる目的があるのでしょうが、米国では素振りはしないそうです。素振りをしている日本人選手に、メジャーの選手が「空振りの練習をしてどうするのだ?」と不思議そうに言った、という話は有名です。

私たち指導者は「何のためにこの練習をするか」をもっと考え、そのことを子どもたちに伝えなくてはいけません。と同時に、「いつも頭を使って考えてやる練習」をやっているかも見直すべきです。育成年代の試合を観に行くと、最近はコーチたちが「自分で考えろ」と叱咤激励している場面に出会います。

ですが、その前に大人が工夫しなくてはいけません。子どもたちに自分たちで考えるベース作りをする。間違っても、何をしても叱られない空気を生み出す。考えないとできない練習メニューにする。飽きずに意欲的に取り組めるようにしてほしいと思います。

 

■上達のイメージは「らせん階段」

海外では子どもが練習中に改善提案してくることも

さらに、もうひとつ。みなさんの頭の中にある上達するイメージを変えてください。

従来の日本のサッカー指導は「組み立てていくイメージ」でした。まっすぐの階段を一段一段昇っていくイメージです。最初にドリブルをやって、ひとりでボールを運んでゴールできるようにします。ドリブルができたら、次にドリル練習でキックを改善。次はトラップ練習、そしてパス練習と、スキルトレーニングがすべて段階的です。

これは、ゲームを中心に行い、その中で出た課題から総合的にスキルを高めていくドイツとはかなり違います。

この「総合的にスキルを高める」イメージは、ドイツの哲学者ヘーゲルが提唱した「物事のらせん的発展の法則」と似ています。

例えば、サッカーを始めた小学1年生が、らせん階段をゆっくり登っていく姿を見ている。そんな想像をしてみてください。真上から見ると、1年生はひとつの円をぐるぐる回っているようにしか見えません。ちっとも上に進んでいないように見えます。ところが、角度を変えて横から見ると、少しづつ確実に、上へ昇っていることがわかります。

このらせん階段の話は、池上正コーチも著書で説明しています。ゲームを軸に、その日ここが足りないなと思ったらそのトレーニングを足す、という考え方もドイツの育成と同じです。

ゲームばかりしていて上手くなるのですか? といぶかしげな指導者は多いのですが、技術を切り出してみるのではなく、全体像で見てあげることが重要です。

FCバルセロナの現地スクールで長年コーチを務めた村松尚登さんも、自身の著書で「スペインの育成は氷の塊を削っていく作業」だと語っています。スペインでは、選手が練習の途中で「ナオト! この練習、こうしたほうがいいんじゃないの?」とどんどん提案してくるそうです。

ただし、日本では指導者と選手、教師と生徒の関係が主従的なので、子どもたちはそんなふうに教育されていません。

したがって、大学教員になってドイツ留学した私は、帰国してからの1年間は毎日メニューを変えて練習してみたのですが、残念ながらチームは強くなりませんでした。選手たちの多くは高校までに、説明された練習の意図を理解してトレーニングに主体的に取り組む経験をしていないため、日々の変化についてこれなかったのです。私の力不足もあったと反省しています。唯一、試合前日の土曜日をもオフにしたのは奏功しました。学生たちは自分たちで課題を持って自主練を始めたことでうまくなりました。

 

次ページ:学校でも「当たり前」を見直す動きが。サッカーも......

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監修:高橋正紀 構成・文:「スポーツマンのこころ推進委員会」

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