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楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた

ほんのちょっとしたきっかけで子どもの行動をガラッと変える「現代の魔法」

公開:2020年4月15日 更新:2020年4月16日

キーワード:スポーツマンのこころナッジ理論内田篤人高橋正紀

サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜協立大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。

聴講者はすでに6万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。

高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。

日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。

根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。
(監修/高橋正紀 構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)

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(写真は少年サッカーのイメージです)

 

ほんの少しのきっかけで人の行動を変える「現代の魔法」とは

私が総監督を務めるサッカー部には、昨年度に創設された「アカデミー」というプロジェクトがあります。縦割りの小グループをつくり、部員同士が「学業」を支え合う仕組みです。

学業面で部員を引っ張るリーダーを各学年から8人選出。そのリーダーを軸として月1回程度の方針や進捗確認のミーティングを行い、あとは4年生を責任者とした5~6人のグループを学年縦割りで編成し、無料通信アプリ(LINE)などを活用して試験やレポートに関する情報を交換しながらお互いの学ぶ意欲を高めていく。そんな取り組みです。企業の人材教育で言うところの「メンター制度」に似ていますね、と言われることもあります。

若干響きが昭和っぽいのですが、グループは「組」と呼ばれリーダーは組長です。組ごとで取り組みがどうだったか、結果に結びついたかどうかなど進捗具合を私や監督などチーム幹部に報告する義務もあります。

前年度の後期試験が終わったあとは、各組ごとで試験の反省会をやっていました。組長の報告は、例えば「今回はみんな頑張りました。手応えがあります」とか「準備がギリギリになってしまった」「計画的にもっとやるべきだった」といった反省がLINEで送られてきました。

なかには「もっと具体的に書いてほしいな」と感じる報告もあります。でも、私は「こんな反省文はありえないだろう」などと叱ったりしません。なぜならば、そんな表層的なことはどうでもいい。

大事なことは、学生たちが互いに「刺激し合う」ことだからです。

これは少年サッカーを指導するコーチも、子育てをするお母さん、お父さんたちも日々考えていることでしょう。

子どもが互いに刺激し合って、成長してもらう――どの大人もそんなふうに子どものことを思って目標を立てている。ところが、与える刺激が少しばかり強すぎたり、大人が出しゃばり過ぎたりしていないでしょうか。

私がそうならずに済む、つまり「刺激し合える仕組み」だけをつくり中身に頓着しないのは、ナッジ理論」を採用しているからです。

「ナッジ(nudge)」とは、直訳すると「ヒジでちょんと突く」という意味。行動経済学で用いられる理論のひとつで、「小さなきっかけを与えて、人々の行動を変える戦略」です。

このナッジ理論を提唱した米シカゴ大学の行動経済学者リチャード・セイラー教授が2017年にノーベル経済賞を受賞したことで、米国の企業を中心に世界に広がりました。企業のマーケティング戦略で利用されたり、英米では公共政策でも使われています。

ほんの少しのきっかけを与えることで、人々の行動をガラッと変えてしまう。このことから、ナッジ理論は「現代の魔法」とも言われています。

数年前、サッカーの日本代表戦の時、東京のJR渋谷駅前にサッカーファンが殺到して駅前のスクランブル交差点が通行不能のようになったことがありました。その際、「みなさんは12番目の選手。日本代表のようなチームワークでゆっくり進んで」といったウイットに富んだ呼びかけをし混雑が緩和されました。「神ポリス」などと若者からリスペクトされました。

このようにもともと人が持っている良心にさりげなく訴え(良心を刺激し)、人々の自主性に委ねた。ナッジ理論が成功した例のひとつです。

 

勉強で頑張れればサッカーで壁を乗り越えることも容易くなる

コロナ禍のいま、日本の少年サッカーやサッカークラブの活動はある意味二分されています。活動できる人もいれば、できない人もいる。ただし、いま活動できても、もしかしたらできなくなる時間がくるかもしれない。

だとしたら、ナッジ的なささやかな刺激を今から考えてみてはどうでしょうか。当方のサッカー部がやっているアカデミーのような小グループで支え合う取り組みは、小学生年代に比べスマートフォンやネット環境が広がる中学生以上なら可能性はあります。

ちなみに本学のサッカー部員たちは、効果てきめんでした。学業成績は上がり、それと比例して競技力も向上してきました。

ご存知の方もおられるかと思いますが、私は「一流のスポーツマンのこころ」という講義を行ってきました。したがって、部員たちにはこれでもかというくらいその考え方を注入し続けてきました。

自分の器を磨くには「非日常」のスポーツだけでなく、「日常」の学業でも挑戦することが必要。

きらいな勉強で頑張れば、好きなサッカーで壁を乗り越えることは容易くなる。サッカーで頑張りたいなら勉強も頑張る。この粘り強く取り組むという「グリッド」も伝えます。

私が監督に就任して以来、一定の単位を取得できなければ翌年は休部させるというルールもつくりました。そんな取り組みをしていますが、学生たちの多くはおそらくそういったものなしでも、もともとみんなまじめで勤勉だと私は感じています。

ただ、集団のなかでどうしても1割近くがそこに追い付いてこれないのも確かでした。そこで、ちょっとした刺激として生まれたのがアカデミーなのです。

 

次ページ:鹿島アントラーズ内田選手の提言「リフティングだけじゃなく......」

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監修:高橋正紀 構成・文:「スポーツマンのこころ推進委員会」

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