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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
3、4年生からサッカーを始めた初心者にも理解しやすい「3人目の動き」を身につけるメニューはある?
公開:2022年4月22日 更新:2022年5月31日
3、4年生からサッカーを始める子も多いチーム。サッカー初心者が最初に覚える技術や戦術は色々あるけど、オフザボールの動き、チームとしての連動を覚えてほしい。
パスを出した選手、パスを受けた選手、近くにいる味方で連動して相手を交わしていく動きを教えたい。いわゆる「3人目の動き」を教えるいい方法はある? というご相談。
今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、子どもたちが頭の中で3人目の動きを理解できるようになるアプローチを教えます。
(取材・文 島沢優子)
<<狭いところでも「止める」「蹴る」ができるようになる方法を教えて
<お父さんコーチからのご質問>
池上さんこんにちは。
学校の少年団で指導しています。指導しているのは中学年です。
田舎だからか、小学3、4年からサッカーを始める子も珍しくなく、初心者が多いチームです。(未就学からスイミングに通っている子は多いのですが、少年団に入るのは3、4年生からというのが多いです)
ご相談内容は、チームとしての連動、オフザボールの動きです。「3人目の動き」とでもいうのでしょうか。
パスを出した選手(1人目)、パスを受けた選手(2人目)、それ以外の近くにいる味方選手(3人目以降)で連携しながら相手守備を突破する動きを教えたいのですが、良い方法はありますか。
初心者も多いので、プレーの流れのイメージがつかめないのと、初心者ゆえトラップやコントロールが落ち着かないこともあり、動きが止まってしまいスムーズに連携できないのです。
アドバイスいただけると幸いです。
<池上さんのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
少年サッカーの試合を見ていると、ベンチから「サポート!」「周りが動いて」「もらう人いないよ」といった声が飛びますね。大人たちは懸命に声をからしてアドバイスしますが、それを受ける子どもたちがどの程度理解しているのか。この点を考えなくてはいけないと私も感じています。
彼らに三人目の動きを理解してもらうには、まず頭の中で絵を描ける、イメージできるよう指導してください。
■ゲームを一時的に止めて、頭で理解する時間を作る
まず、ミニゲームなどの場面でフリーズさせて(プレーを一時的に止めて)話をします。
「ボール持ってる子どもがいます。パスが欲しい子どもがいます。でも、二人の真ん中には相手ディフェンスがいます。その場合、どうしたらパスできますか?」
仮に、子どもから「受ける側が右か左に動いて、味方が見えるところに行けばいい」といった意見が出るとします。
私「でも、受ける側が動かなかったら?」
子ども「ボールを持っている側が動けばいい」
つまり双方がパスを通すために移動することを考えなくてはいけないことを、まず理解してもらいます。ここでトライアングル、つまり3人目の動きの説明ができます。ホワイトボードを使って、「相手のディフェンスは、A君とB君の間にいます」と3人の関係を説明し、「さて、どうしたらいいかな?」と発見させてもいいでしょう。
■3人目の動きが出てこないのは「頭の中」の問題
3人目の動きが出てこないのは、子どもたちの頭の中の問題です。ほかにも、例えば「シュートを打ちたいけれど、前にディフェンスがいてA君は打てない。じゃあ、どうしたら打てるかな?」と問いかけます。いろんな答えが出てくるでしょう。サッカーの点の取り方がそれぞれ違うように、いろいろな答えが出てきます。それを試してみよう、と言ってあげてください。
頭の中の問題なので、初心者であっても、幼稚園からしていたとしても関係ありません。上述した程度のことであれば、子どもたちは理解できます。間にディフェンスいたら出せない。じゃあ、どうしたらいいか? それを発見できるようになることがまず重要です。
その次に、冒頭のミニゲームのように実際に2人と間にディフェンスがいる状態で立たせてみて、どこに立つとパスできる? と考えさせます。子どもたちに、サッカーはボールをもっていないときに動かないといけないスポーツで、動きながらどうするか? を考えるスポーツだということを頭と体で覚えてもらいます。
そうするために、ドイツは3対3のフニーニョを小さいときからやることをドイツ中に広めようとしています。そうすれば、3人目の動きが常に出てくるので、知らず知らずのうちに体得するのです。
※フニーニョとは?
ドイツが育成年代に導入しているフニーニョとはこんなルール>>
■子ども自身で考えて選択したものは浸透する
私が地元大阪で行っている1年生から6年生まで一緒に練習する「プレイパーク」でも、そのあたりを説明をします。
池上「あそこにパスしたいんだけど、邪魔する人がいます」
子ども「こっちに動けばいい」
池上「ほかに方法はないかな?」
子ども「(ボールを持っている)池上コーチが動けばいい」
そのように、子ども自身が考えて選択したものは浸透します。「コーチの言う通りに動きなさい」と教え込まれていくものは「その子たちのもの」になりづらく、またそこから発展しません。そのことをぜひ心にとめて指導してください。
■「3人目の動き」が分かってくる初心者向けにおすすめのメニュー
練習メニューはネットや書籍でいくらでも学べるかと思いますが、初心者向けにひとつユニークなメニューを紹介しましょう。
8人グループで行います。半径6メートルほどのサークルに8人が立ち、パス交換をします。AがBにパス。その際「C君!」と3人目の名前を呼びます。BからもらったCはDにパスをしながら「E君!」と呼ぶ。そうすると、蹴る子も3人目を誰にするかを意識しなくてはなりません。名前を呼ばれた子も意識します。中高校生にやらせてもいい練習です。
3人目のもらい方がわかってくると、パスがどんどん続くようになります。そうなったら、「サッカーは何が一番の目的なの?」と尋ねます。子どもたちは「ゴール」だとわかっています。そこで「できるだけ早くそこにいけるにはどうしたらいいか?」を求めていくのです。フニーニョをやりながら、時折止めて解説すると理解が増すでしょう。
■「うまくできない」が大事、最新のコーチング理論で分かったこと
気をつけたいのは、その練習がうまくできるまでやってしまわないことです。コーチが「ほら、うまくできてないよ!」と指摘する声をよく聞きますが、何度も反復させてできるようになるまでやらせる必要はありません。
うまくできていないことが実は大事です。なぜならば、最新のコーチング理論「運動学習理論」では、反復練習は初期段階では効果があるが、それを長く続けても効果はないということがわかっています。
そうではなく、メニューをポンポン変えて複合的な動きをやっていくと技術の獲得が上がっていくというのです。そうすれば伸びるスピードは落ちません。
これを「非線形理論」といいます。
一からコツコツ積み上げていく「線形理論」はごく初期段階での考え方です。「今まではこうやってきた」という経験則ではなく、根拠のある指導方法を選択しましょう。いろんなことをやっていくことで目標に到達していくことを、ぜひ覚えておいてください。
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