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サッカーのトレセンに選ばれる子のはどんな選手? 日本サッカー協会が選手たちに求めること

公開:2017年10月26日 更新:2025年4月10日

キーワード:JFAトレセン日本サッカー協会考える

小学校高学年や中学生になると「セレクション」「地区トレセン」「ナショナルトレセン」といった言葉を聞くと思います。

低学年のうちはボールを蹴ることが純粋に楽しかった子どもたちも、向上心が芽生え、よりステップアップしたいと思うようになります。「トレセン」は自分のチームから出て、各チームから選抜された選手たちと一緒に個の技術を磨く場です。

ですが、サッカー経験者であれば耳なじみのある言葉ですが、サッカー経験のない保護者の方の中には「トレセン」という言葉は知っているけれど、実際にはどんなところ? どういう選手が選ばれているの? 選考基準や合格しやすいポジションはあるの? と思っている人も多いのでは。

そこで、トレセンについて、日本サッカー協会(JFA)のユース育成ダイレクター 須藤茂光さんにお話しを伺いました。(取材・文:前田陽子)

 

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(写真はサカイクキャンプのものです。トレセンとは関係ありません)

 

<目次>

1.トレセンの目的
2.トレセンの仕組み
3.トレセンでの活動内容
4.トレセンに選ばれるには?
5.トレセンのもう一つの目的

 

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■トレセンの目的は「チーム」ではなく「個」のレベルを高めること

まず、トレセンというのは「ナショナルトレーニングセンター制度」を指す言葉で、日本のユース育成の中心的役割を果たしている選手育成の取り組みのことです。

JFAのホームページを見ると、トレセン制度について、次のように書かれています。

『日本サッカーの強化、発展のため、将来日本代表選手となる優秀な素材を発掘し、良い環境、良い指導を与えることを目的に始まったこの制度は、男子はすでに25年を経て、さまざまな変革を行いながら、組織的にも活動内容においても充実したものとなり、トレセンを経験した選手から各年代の日本代表選手の多くが選出されるようになりました。

トレセンでは、チーム強化ではなく、あくまでも「個」を高めることが目標です。世界で闘うためには、やはり「個」をもっともっと高めていかなくてはなりません。

レベルの高い「個」が自分のチームで楽にプレーができてしまって、ぬるま湯のような環境の中で刺激なく悪い習慣をつけてしまうことを避けるために、レベルの高い「個」同士を集めて、良い環境、良い指導を与えること、レベルの高い者同士が互いに刺激となる状況を作ることがトレセンの目的です。

テクニックやフィジカルの面から、その「個」のレベルに合ったトレーニング環境を提供することは、育成年代において非常に重要な考え方です。』

 

■トレセンの仕組み

トレセンは男女別で、男子はU-12、U-14、U-16と3つの年代に分かれており、主に小学生高学年から高校生を対象にした選抜メンバーとなります。

所属チームから推薦を受けた選手は、まず、地区トレセンの選考試験を受けます。合格すると練習会に参加することができ、そこで監督やコーチたちの目に留まると、都道府県ごとのトレセン、全国を9ブロック(東北、関東など)に分けた地域トレセン、ナショナルトレセンとレベルアップしていきます。

その先に、皆さんもよく耳にするU-23のオリンピック代表などのアンダー世代のチームがあり、W杯でも日本を湧かせたフル代表があります。

いわば、優秀な人材を見逃さぬよう全国のサッカー少年少女に網が張られている態勢になっているわけです。各年代ごと・地域ごとにある数多くのトレセンが、同時進行で選手の発掘育成をすることで将来の日本代表が作られていくのです。

 

■トレセンでの活動

普通のサッカークラブでは週2~3回ほどの練習があって、場合によっては毎週のように試合があると思いますが、トレセンは違います。集まるのは多くても月に2回程度、試合も月に1回あるかないかです。

メインの活動は所属するサッカーチームで行い、その成果を見せる場所がトレセンだと言えるでしょう。もちろんトレセンでも、JFA認定のライセンスを保有した指導者の元で質の高い練習も行われますが、練習回数も限られるので、現状の課題などを指摘しつつ、その部分を修正するためのトレーニング方法を伝えるくらいの補足的なものになります。

日本代表の選手が、普段は所属するプロチームで練習・試合をして、代表に招集されるのは代表戦の時だけ、とイメージすれば分かりやすいでしょうか。

地域によっては、近隣の地区トレセンや都道府県トレセン同士でリーグ戦を行っているところもありますが、あくまで選手の発掘育成が目的で、優勝を目指して行うようなものではありません。

 

■トレセンに選ばれるには?

「トレセンに早く選ばれて、いつかは日本代表に!」という夢を描いていても、まず地区トレセンの選考試験を受けるのにはコーチの推薦が必要となります。

ですので、まずはどこかのチームに所属していなくてはいけません。そして、そのチームでしっかり活躍することが、トレセンに選ばれる第一歩となります。

また、前述のように、トレセンは「チームを強くすること」が目的の集まりではなく、将来の日本代表を担う「個の能力」の発掘と育成に主眼がおかれています。したがって、自ずと選手選考の視点も変わっていきます。

「トレセンコーチが選考の際に見るのは、まずはテクニックです。そしてスピード。スピードがある、無いはプレーの判断スピードを上げ、動き出しを速くすることでカバーできる部分もありますが、単純な走力は、大人になってから身につくものではないので重要なポイントになります。さらに、身体が大きいなどの、他の選手より優れた特徴がある子を見ていると思います。ただし、あくまで優秀な選手に成長するために備えていてほしい要素であって、これらが全てではありません」と、須藤さん。

ですので、トレセンに選ばれるために普段から特別に実践することはありません。まずは自分のチームで活躍すること。それによって「この子をトレセンで呼びたい」「トレセンに行かせてみたらどうだろう」とコーチたちが考えるようになるのです。

 

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(トレセン制度 日本の場合は高校や大学から代表選出のルートもある)

 

■もう一つの目的「天井効果の排除」とは

結果的にチーム内でも一目置かれているような、上手な選手がトレセンに呼ばれると思いますが、チームではドリブルもシュートも1番で何でもできる子も、トレセンのメンバーの中に入ると突出するどころか、平均以下になってしまうこともあります。

これもトレセンの目的だと、須藤さんは教えてくれました。

例えば、足の速い子。自分のチームではロングボールを蹴り、足の速さでディフェンスを抜いて得点していた子も、同じように足の速い子が集まったトレセンのチームでは、ディフェンスを抜くことができません。

同じようなレベルの子が集まることで、それまでできていたこともできなかったり、一番でいられなくなったりします。

そこで、「考える」ことが求められます。どうしたら以前のように点を取れるのか、自分のプレーについて考え、挑戦する必要が出てくるのです。もし、ここで考えることを止めてしまったり、あきらめてしまったら、選手として1段成長の階段を上ることは出来ません。


育成年代では「自立」が重要です。自分で考えることも「自立」のひとつ。そしてサッカー選手にとって「向上心」はとても大事です。

 

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(写真はサカイクキャンプのものです。トレセンとは関係ありません)

 

また、トレセンでは初めて会う子たちとチームを組んでゲーム形式の実技も行います。そこで臆さず自分の持てる技術を出し切る力や、初めて顔を合わせた相手と意見を交換し合ってチームとして良いプレーをしようと挑戦する姿勢など、コミュニケーション能力や問題解決力のように、選手としての能力のほかに人間としてのスキルも見られています。

前述したように、テクニックがある、足が速い、など分かりやすいスキルを持っていることは、一つの選考基準にすぎません。

選ばれようとして独りよがりなプレーをして、仮にゴールを決めたとしても、コーチたちはそれ以外の部分もしっかり見て判断しています。ですから普段の練習態度やサッカーに取り組む姿勢、チームメイトとの関係構築がとても大事なのです。

もっとうまくなりたい子たちが、所属チームでは何でもできる今の自分に満足せず、同年代の同じレベルの子や自分より上手な子がいることを知ることで、刺激を受け、頑張ろうと考え、行動に起こすようになる。

トレセン制度があることで、子ども達がさらに上を目指す気持ちが育まれています。

次回は、トレセンの効果についてお伝えします。

 

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須藤茂光(すどう・しげみつ)
日本サッカー協会ユース育成ダイレクターおよびユース育成部会長。
元サッカー選手。現役時代のポジションはDFで、日本代表として国際Aマッチ13試合に出場。引退後はアンダーカテゴリーの日本代表監督や、Jリーグ、柏レイソルのコーチ、日本サッカー協会のナショナルトレセンコーチなどを務める。2014年、指導医者養成のサブダイレクター兼関東地域のトレセン担当となり、2016年より現職。

(財)日本サッカー協会 ナショナルトレセン概要>>
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文:前田陽子

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