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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

仲間に心無い言葉を投げられる息子。親はどう介入すべきか問題

公開:2021年8月 4日

キーワード:いじめサッカーレギュラー初心者心無い言葉暴言補欠

今年からサッカーを始めた息子。みんなとは経験年数が違い、初心者なのでまだまだ下手。それでも人数の関係で試合には出してもらっているけど、プレーで足を引っ張るのでチームメイトから心無い言葉をかけられる。

コーチも保護者も黙認している。これって普通なの? 親が介入すべき? とのご相談をいただきました。わが子がチームメイトからひどい言葉をかけられていると知った時、みなさんならどうしますか。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんに3つのアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)

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(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<Jクラブで仲間に見下される息子に自信を取り戻してほしい問題

 

<サッカーママからのご相談>

こんにちは。これまでも似たような質問があったかもしれませんがご相談させてください。

子どもがチームメイトから心無い言葉を投げかけられています。監督、コーチがそれを黙認してます。これって普通なのでしょうか?

息子は今年からサッカーチームに入りました。みんなが一斉に入団した小1の時は興味を示さなかったので、これまで運動系の習い事などはしてきませんでしたが、3年生の終わりごろに自分もサッカーしたいと言い出したのでこの春入団させました。

周りの同級生とは経験年数も違うし、当然ですが初心者なのでど下手です。ですが、人数が少ないこともあり、試合には出場しています。

練習でも試合でもみんなと同じレベルでプレーできないので、同級生の子たちはど下手な息子にイラつくようで、度々「何やってんだよ」「はあ? そんなこともできないのかよ」「足引っ張んなよ」などと言われたりしています。

それを監督もコーチも目の前で見ていますが、特に何も言いません。子どもたちの保護者もです。言われてもしょうがないと思っているのかもしれません。

息子は第一子で、親の私がこれまで保護者付き合いをほとんどしてこなかったこともあり、これが普通なのかわからないのと、どうしても下手な子の親は肩身が狭いというか、発言しにくい雰囲気を感じています。

こんなとき、親として介入すべきなのでしょうか。

 

 

<島沢さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

10歳なので小学4年生くらいでしょうか。息子さんがチームメイトから「足を引っ張るな」などと心無い言葉を言われているのは、お母さんにとってもお辛いですね。

ただ、ご相談文には言われた息子さんの様子は書かれていないので、息子さんの反応や気持ちが気になるところです。

 

■「こうすれば解決する」という正解はなかなか見つからない

とはいえ、息子さんが傷ついているであろうことは想像に難くありません。彼の傷をどう癒し、どう解決していくか。親としてはとにかく何でもしてあげたい。一日も早く楽にしてあげたいと考えるのが当然です。

しかし、「こうやれば解決しますよ」という虎の巻はなかなか見つかりません。例えば、お母さんが保護者一人ひとりにお願いする、子ども一人ひとりを叱る、コーチに苦情を言って監視してもらう。はたまた、そんなチームは早くに見限り早々に移籍する。

さまざまありますが、私はどれもお勧めできません。理由は、息子さんの成長につながらないからです。

 

■「助けなくては!」と焦らず、親御さんの思考を整えましょう

じゃあ、どうすればいいか。

あらかじめ言っておきますが、解決法はひとつではありません。ケースバイケースです。以下はあくまで私がお母さんだったらどうするか、という視点でアドバイスを三つお伝えしますね。

ひとつめは、自分自身のマインドセット(固定化された考え方)を整えること。

息子のピンチだ、助けなくては! と思うと、余計に焦って感情的になりがちです。今回の出来事をピンチだととらえずに、息子さんも、ご自分もともに成長するチャンスととらえましょう。成長するには、上述したような過干渉な方法は選択しないことです。

 

■まずは落ち着ける環境で話を聞く作業を! 気持ちを吐き出すとスッキリする

そしてふたつめ。息子さんとこのことについてじっくり話しましょう。どんな気持ちなのか? どうしたら解決できるのか? ひとつずつ問いかけ、どんなときにどんなふうにいわれたのか? そのとき、自分はどんな態度をとったのか? コーチたちはどんな様子だったのか? それらをなるべく具体的に話をしてもらいます。

息子さんの話を聴くときは、自宅の廊下や台所で立ち話、というものではなく、例えば送迎の際の車の中で二人きりの時や、他の家族がいない時にじっくりリビングでお茶やジュースを飲みながら話を聴いてあげてください。

その際は「それは嫌だね」「よく我慢したね。ママならぶん殴っちゃうよ」とお子さんの気持ちに寄り添ってあげてください。そして、「あなたはまったく悪くない」「我慢しなくていいんだよ」「ママは君の味方だからね」ということを繰り返し言い聞かせましょう。

この話を聴く作業だけで、お母さんの役目は半分果たせています。子どものほうも、たとえ名案が浮かばなくても、親に自分が傷ついた出来事を話せば、かなりスッキリします。お母さんが、例えば誰かに愚痴などを聞いてもらうのと同じ感覚です。

 

■嫌なことは嫌、やめてと言えるようにしよう

三つめは、息子さんは仲間に「そういうことは言わないでほしい」ときちんと言えているのかを尋ねてください。お母さんが「下手な子の親は肩身が狭いというか、発言しにくい」と考えているように、息子さんも「僕はサッカーが下手だから、そういうのは言わないでとは言いづらい」と思っていないでしょうか?

親子とは不思議なもので、気持ちや価値観は非常に高い確率でシンクロします。もし、息子さんがまだ抗議していないのなら、嫌なことは嫌、やめてほしいことはやめてと言えるようになることをぜひ目指してください。

 

■「補欠だから......」と上手い子たちがいじめて良いわけはない

小学校中学年くらいは、サッカーの上手い下手で子どもの間にヒエラルキーが生まれることは多々あります。

ある小学校の先生に取材した際、こんな話を聴きました。

そこの小学校はサッカー少年団に入る子がすごく多く、3クラスあるなかで1クラスの男子の半分近くが団員でした。休み時間にサッカーをして活発に遊んでくれるので最初はその先生も「よく外遊びしていいなあ」と好意的に見ていました。ところが、徐々にヒエラルキーに気づき始めます。

「一部の子だけがいつもボールの片づけをしていたり、掃除の班のなかで、レギュラーの子が補欠の子に自分がやらなければならない掃除を奴隷のようにやらせていたんです。ほぼいじめですよね」

しかも、なかには「奴隷36番」などと、サッカー少年団の背番号で呼ばれている子までいました。

先生は掃除や片づけを強制されている子どもたちに「なんで断らないの? 嫌だって言いなよ」と話したら、その子たちはこういったのです。

「だって、僕たち、補欠だから」

試合に勝てるのはレギュラーの上手い子たちのおかげ。たまに補欠である自分たちが試合に出ると足を引っ張ってしまう。

「だから、命令には従わなくてはいけないと思ってたって言うんです。おいおい、それは違うだろうと諭しましたが、やらされている子たちは泣きながら聞いてるわけです。何のためにサッカーをしているのかわかりませんよね」と先生は憤っていました。

その先生がすぐに少年団の保護者代表に話をしてくれたおかげで、大人たちが解決に動き、なんとかいじめはなくなったそうです。

僕たち、補欠だからと、仲間の理不尽な命令に従っていた子どもたちは、きっと自己肯定感が下がっていたことでしょう。自己肯定感とは「自分は存在していい人間だ」「今の自分でいい」と自分自身に満足し、自分の価値や存在意義を肯定できる力です。別名、自尊感情とも言われ、この力が人間的な成長の土台になります。

  

次ページ:コーチたちに問題に向き合ってもらえる話し方

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文:島沢優子

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