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失敗を恐れ「挑戦」をしない子どもたち、子どもたちのチャレンジ精神を育むために大人ができること

公開:2024年5月14日 更新:2024年5月16日

キーワード:チャレンジレジリエンス失敗折れない心挑戦経験

サッカーの技術・戦術面に加えて、オフ・ザ・ピッチの成長にもつながると評判サカイクキャンプ。2024年夏は関東と関西で開催されます。

そこで今回は、サカイクキャンプのメインコーチを務める菊池健太コーチと、チームビルデイングでおなじみ、福富信也さんに「挑戦・レジリエンス ~折れない、しなやかな心を育むのに、サッカーが良い理由」をテーマに話を伺いました。

子どもたちの指導に長く関わるお二人は、昨今のサッカー指導や保護者の関わりについて、どう感じているのでしょうか?
(取材・構成 鈴木智之)

 

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写真は過去のサカイクキャンプ

 

<<関連記事:「小学生年代で身につけておいて欲しいライフスキルとは?」内野智章×菊池健太対談

 

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■失敗を恐れるあまり挑戦をしない子どもたち

菊池:最近の子どもたちを指導していて感じるのは、失敗を恐れるあまり、難しいことや新しいことにチャレンジしなくなっているのではないか? ということです。「うまくいかないかもしれない」という不安から「できない」「難しい」と尻込みしてしまう傾向にあるのかなと感じています。

福富:私は大学の教員をしていますが、似たようなことを感じます。効率を求めて、極力、無駄なことをしたくないと考えている世代なのかもしれません。例えば、「これは就活に役立ちますか?」などと尋ねてくる学生もいます(笑)

菊池:そうなんですね。

福富:でも私は、もっと無駄なことをたくさんした方がいいと思っています。タイパやコスパという言葉に代表されるように、今の子たちは時間もお金も経験も、無駄を省きたがります。そのような考えを持っていると、失敗はただの無駄になってしまうんです。でも、失敗は無駄ではなく、最短距離で成功に辿り着くことが、良いこととは限りません。失敗も成功も、その過程で経験することが大切なのだと思います。

 

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■子どもの可能性を引き出すには、親から離れて信頼できる大人に預けることが有効

菊池:昔は「とりあえずやってみよう」という子が多かったのですが、今は慎重になり、失敗を避けようとする子が目立ちます。サカイクキャンプに参加してくれるのは、どちらかというと積極的に前に出るタイプではない子が多いこともあり、「サッカーを通じて挑戦すること」や「失敗から学ぶこと」を経験してほしいと考え、子どもたちと接しています。

福富:私の息子もサカイクキャンプに参加したことがありますが、子どもが親から離れて行動することは、非常に重要な意味があると思います。親がそばにいると、親は手助けしたくなり、子どもは親に頼りたくなってしまうんですよね。でも、子どもの限界を引き出すのは、親ではなく、信頼できる第三者である可能性が高いんです。

菊池:なるほど。

福富:私の母校の大学では、幼稚園児を対象に3泊4日のキャンプを実施していました。親は同行せず、大学の先生と学生が子どもたちの面倒を見るのですが、その3日目に登山があるんです。幼稚園児が終日かけて、自分の荷物を背負い、2000m弱の山を登り切るんです。

菊池:それはすごいですね。

福富:親がいたら、絶対にできないことです。子どもは親の前では「疲れた」「抱っこして」「リュック持って」などと甘えてしまうからです。でも、親がいなくて、同年代の仲間と一緒にいると甘えない。子どもの可能性を引き出すためには、親から離れて、信頼できる大人に預けることが有効だと感じました。

 

■信頼できる大人がいると安心してチャレンジできる

菊池:すごく勉強になるエピソードです。サカイクキャンプは、以前は3、4年生が多かったのですが、コロナの影響でお泊り保育ができなくなったこともあり、1、2年生の参加も増えてきました。サカイクキャンプが、初めての宿泊体験になる子も多いです。

福富:うちの子もそうでした。

菊池:キャンプに参加するだけでも、子どもたちにとっては大きなチャレンジですよね。ましてや小学生のうちから、初めての場所で、初めてのメンバーと共同生活を送るのは、本当に大変なこと。それを成し遂げられるのは、とても幸せで立派なことなんだと、参加者全員に伝えるようにしています。大人でもなかなかできない経験なので、自信を持っていいんだよと後押ししてあげるんです。

福富:キャンプには、菊池コーチのように信頼できる大人がいるので、子どもたちは安心して挑戦できるのだと思います。親にできることは、どんなことがあっても常に子どもの味方でいること、そばにいてチャレンジを応援し続けること。つまり、先回りして手を出すことではなく、愛情をもって見守ることなのだと思います。

 

■他の子と比べることで劣等感が生まれる 子ども自身の可能性を信じて

菊池:私も子育てをしているので、つい先回りしてしまいたくなる気持ちもわかります。そうすれば楽だし、安全だし、時間も節約できる。でも、子どもの可能性を信じることが大切なのだと実感します。実際、子育てを通じても、保護者の方々と話していても、親が思っているよりも、子どもはずっと多くのことができるものなんです。

福富:そう思います。

菊池:「うちの子はこれが苦手で......」と言う親御さんもいらっしゃいますが、いざキャンプに参加してみると、全然そんなことはなかったり、自分のことは自分でできたりする。謙遜して言っているのかもしれませんが、実際はそんなことないんだと、フィードバックするようにしています。

福富:他人と比較することで、自分を卑下してしまうのかもしれません。例えば、トレセンに選ばれた子がいると、「あいつの方が上なのか」などと考えてしまう。強い者には弱く、弱い者には強いという社会の縮図のようなものですね。人との比較の中で劣等感が生まれたり、「こいつにはマウント取っても平気だ」といった考えが生じたりする。

菊池:キャンプでも、サッカーが上手い子は、生活面でも強いという傾向があります。

福富:私は、序列を作ったり、自分より強い者には弱く、弱い者には強いという二面性を持つことは、とてもかっこ悪いことだと思っています。子どもたちにも、そういうのはかっこ悪いんだということを理解してほしい。大切なのは、他者との比較ではなく、自分自身のチャレンジをすることなんです。

菊池:そのとおりですね。他人と比較することには意味がありません。

福富:ウサギとカメの話のように、カメはウサギというライバルの存在を気にせず、自分のペースで目標に向かってコツコツと歩み続けたら、結果的に勝利を収めました。一方、ウサギはカメに勝つことだけを考え、勝てると思ったところで気を抜いて休憩してしまいました。

菊池:実は、親御さんの方が、他人と比べているのかもしれませんね。子どもの問題というよりも、親自身がどう変われるか、どのように子どもにチャレンジする機会を与えられるか。自分の子どもに焦点を当てることの大切さは、我々指導者が訴えていかなければならない部分でもあると感じています。

 

■キャンプで「できた」とういう達成感やチャレンジした充足感を味わうと、自信がついた顔つきに変わる

福富:親元を離れて参加する子どもたちは、キャンプという非日常の環境で、普段教わっているコーチとは違う人からアドバイスを受けることで、今までとは違う価値観に気づいたり、刺激を得たりと、成長するきっかけになるのは間違いないですよね。

菊池:はい。初日は不安そうだったり、どうしようという表情をしている子も、最終日には少し自信がついた顔つきに変わります。そのために、私たちスタッフはあまり「こうしなさい」とは言わないようにしています。

福富:すごく、いいことだと思います。

菊池:「自分のことは自分でやろうね」と伝え、手をかけずに、目をかけるスタンスを大切にしています。その中で「ひとりでできた」という達成感を味わえたり、チャレンジすることで充実感を感じられる。そういった経験は、非日常の環境だからこそ得られる、貴重なものだと思います。


<後編に続く>

 

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福富信也(ふくとみしんや)
信州大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)。横浜F・マリノスコーチを経て、2011年に東京電機大学理工学部に教員として着任(サッカー部監督兼務)。日本サッカー協会公認指導者S級ライセンスで講師を務め、Jリーグのトップチームや年代別日本代表など、幅広い対象へのチームビルディング指導を行う。2024年からFC東京のアドバイザーに就任。
最新著書『サッカーがもっと楽しくなる40のヒント ~なぜカメはウサギに勝てたのか~

 

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菊池健太(きくちけんた)
サカイクキャンプヘッドコーチ。約20年にわたり未就学児から小学生まで指導。私生活では4児の父。4人ともサッカーをしており、サッカー選手を育てる保護者でもある。

 

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