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考える力

2019年6月17日

実力が劣っていても仲間との協力で「相手の逆」をつけば勝てる! 現代の子どもたちに必要な「上手くなる楽しさ」の与え方

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浦和レッズレッズユース出身プロ1号だったのに1年で戦力外に。Jリーグ以下から再スタートしたら会社からリストラ宣告を受け、20歳で無職に。それでもサッカーを諦めきれず、「プロ向きじゃなかった」主張できない性格を改善し、たゆまぬ努力の末Jリーグの舞台に復帰。以後アルビレックス新潟での活躍を機にJリーグ5チームを渡り歩き、その左足で多くのサポーターを魅了した鈴木慎吾さん。

前編では現役生活についての話をお聞きしましたが、後編となる今回は引退後に務めた京都サンガF.C.でのスカウト活動や、現在コーチを務める浦和レッズハートフルクラブでの活動から、子どもたちの話をお聞きしました。

(取材・文・写真 森田将義)

<<前編:浦和レッズ史上初のユース出身プロだったのに1年で戦力外! Jリーグ以下から這い上がり天皇杯で優勝した元Jリーガーが語る「プロになるために必要な事」

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最近の子どもたちは大人の顔を伺う子も多いと話す鈴木慎吾コーチ

 

■ミスを他責する選手は伸びない

――アルビレックス新潟・シンガポールで引退してからは、古巣の京都サンガF.C.でスカウトを務めていました。選手を獲得する際に、見ていたポイントを教えてください。


ある程度の技術レベルは必要ですが、一番は「めげない、諦めない」といった性格面をチェックしていました。アップでどういう仕草をしているかを見ると性格が一番分かりやすく、キックミスをした際にスパイクやグラウンドのせいにする選手は伸びる印象がありません。

人を騙さないかどうかも重要で、疲れたフリや怪我したフリをして、奪われたボールを追い掛けない選手はすぐに分かります。将来的に伸びる見込みがあるなと思ったら、自分のチームで獲る予定がなくても気付いたポイントを伝えるようにしていました。

――チェックするポイントはプレーだけではないのですね。

選手からは「そんな所まで見ているんですか」と驚かれたりもしましたが、人が見ない所まで見るのがスカウトです。岩崎悠人選手(現・北海道コンサドーレ札幌)を獲得した際は、普段の彼をチェックするためと熱意を伝えるため毎日のように学校に行っていました。

ただ練習を見るだけでなく、人となりの情報を得るためにチームメイトと話をしたりもしました。「最近、彼の学校生活はどう? この間、こんなプレーがあったから気になって」などと話すと、チームメイト経由で本人に伝わるかもしれないと思って。

心理学的に直接本人に褒められるより、間接的に褒められた方が嬉しいと本を読んだので、スカウト活動に取り入れていました。

――どうすれば上手く行くか工夫をするのは現役時代と同じですね。

技術面で良い選手か悪い選手かを判断するのは、多少サッカーを経験していればできる事です。「大事なのは、自分が惚れ込んだ選手を獲れるかどうかだ」と当時の上司から教えてもらいました。

スカウトも現役時代と同じで結果が大事なんです。現在、コーチを務めている浦和レッズハートフルクラブの活動でも子どもたちが練習を楽しんでくれていないと感じる時は、自分の仕事としての結果が出ていないんだと考え、反省します。

■現代の子どもたちの特徴

――指導やスカウトを経験した上で、今の子どもたちの特徴を感じることはありますか?

今の子どもたちのプレーは、特徴を五角形で表すと全てのバランスが良い選手が多いように感じます。そのまま五角形が大きくなっていけば良いのですが、全員がそう上手く行くとは限りません。

だったら、いびつであっても、一つの特徴を伸ばしても面白いのではないでしょうか。海外にはそうした選手がたくさんいます。

元イングランド代表のデビッド・ベッカム選手も足が速くありませんが、キックは超一流です。今の日本代表もそれぞれの武器を挙げろと言われれば簡単に浮かぶ選手ばかりですし、武器がないとプロの世界で生きていけません。

「自分の武器は何だ?」と尋ねられて、3つくらいすぐに浮かべない選手は本当にプロを目指しているのかなと疑問が浮かびます。厳しいことを言えば、自己分析ができていないですよね。

僕は身体も大きくないし、性格もプロ向きじゃないと言われていました。なので、そういったハンデを克服するためには誰にも負けない武器を持たないといけないと考え、体力とスピード、そして自信があったキックを磨こうと考えました。

上のレベルで戦っていくためには、自分を知り、強みを伸ばすために何をすればいいのか、思考し行動に移すことが欠かせません。

――ジュニア年代であっても必要な要素かもしれません。

自分の武器を分かっていないと、どんな練習をすれば上手くなれるかも分かりません。自分が苦手なプレーも理解できていないと克服できないので、自己分析できないと成長はないと考えています。自己分析した上で上手くなるために何をすれば良いか考える。また、這い上がるために何をすれば良いか考えるのです。

また、武器も常に使うのではなく、どんなタイミングで使うのか考えなければいけません。スカウトとして僕が関わった選手に、「お前たちは武器を持っているけど、どんな時に使うか知っているか?」と尋ねたことがあります。「試合中に使います」と答えたので、僕は「いつも使っていたら武器にならない。いざという時に使うから武器なんだ」と返しました。どうしてだと思いますか。

サッカーでは相手を騙すのが常套手段です。騙すというとネガティブな印象を与えてしまうかもしれませんが、相手の逆をつく、という感じでとらえてください。

たとえば、体力がないフリをして、ここぞという場面で猛烈に走れば相手を置き去りにできますよね。そんなふうに、状況が変わり続ける試合の中で相手の想像以上のことを考えるのがサッカーの楽しさではないでしょうか。

――相手との駆け引きとも言えます。

現役時代、対面する相手には石川直宏選手(元FC東京)や加地亮選手(元ガンバ大阪)、内田篤人(現・鹿島アントラーズ)といった日本代表経験者がいました。チームの紅白戦では同じく日本代表経験者である山田暢久さん(元浦和レッズ)と対面する機会も多かったです。

日本のトップ選手である彼らと真っ当に戦っても実力では敵いません。それでも力が劣る中で勝つ方法を考えるのが楽しかったんです。10回マッチアップすれば、9回は皆で協力して守りながら力を温存し、最後の1回で100%の力を出せば勝てるかもしれません。

それが得点に繋がれば、チームも勝てます。実力が多少劣っていてもプロになれるチャンスはあるし、試合で活躍できる。京セラの稲盛和夫名誉会長が勝負の方程式として仰っていた、「能力×才能×考え方」という言葉はとても参考になりました。

■親が熱心過ぎて子どもの自由を奪っていないか

――性格的にも鈴木さんの幼少時代から変化があるのではないでしょうか。

今の子どもたちは大人の顔色を窺っている気はします。浦和レッズハートフルクラブの活動でも「これは間違っていない?」と僕ら(コーチ)にまず聞いてから動く子どもが多いので、「まずはやってみよう」と声を掛けるようにしています。やってみて、どうすれば上手く行くか考えるのが大事なんです。

スクールで駆けっこをする際には「コーンまで競争だよ。笛の合図で始めるよ」と声を掛けてから、「よーい! スタート」と言うとほとんどの子どもが走り始めます。笛の合図で始めるよと言っているのに、考えずに反射的に動いてしまうのです。

言われたことをやるのは誰でもできます。ただ一生懸命やるのではなく、「考えた上で一生懸命にやる」のが大事なんです。プロも同じで間違った頑張り方をしても時間の無駄になるだけなので、成長するために考えた練習メニューを短時間で効率よく行った方が良いんです。僕も現役時代は、親指の角度まで意識しながら、キックの練習をしていました。

――親御さんの接し方も変化を感じる点はありますか?

良いことではあるのですが、子どもに熱心すぎるとも言えるのではないでしょうか。熱心すぎて子どもの自由を奪ってしまっては元も子も有りませんが、こうしなさいと口を出し過ぎている様に感じる場面も目にします。

例えば、どのチーム、スクールに行けば良いか意見を求められる機会があるのですが、「僕の経験上、どこでも良いです。プロになる選手はどのチームに行ってもなれます」と答えています。僕も選抜や代表を経験してなくても、プロになりました。

一番大切なのは楽しくサッカーをしているかどうか。楽しくというのはボールを蹴る楽しさはもちろん、上手くなる楽しさを感じられるかどうかです。できなかったことができるようになると嬉しいし、上手くなれば世界が広がります。親御さんには、達成感を感じられる手助けをしてあげて欲しいです。

――鈴木さんのご両親はどのようなサポートをしてくれていたのですか?


いつも朝早くから、弁当を作ってくれていたのですが、母親は冷凍食品を出さないようにしていると言っていました。僕の身体が小さいことを気にしており、「もう少し大きな身体に産まれていれば、相手との体格差を埋められたかもしれない」との想いもあったのでしょう。その分、栄養をある物を食べさせようとしてくれていたので、有難みを感じていました。

現役時代に怪我なくプレーできたのは、親のおかげです。そうしたサポートが一番、子どもが有難みを感じるのではないでしょうか。

僕の武器である体力と丈夫な身体は親や少年時代の指導者から授かった物なので、常に感謝の気持ちを持っています。

サッカー選手、スカウト、指導者とどの立場であっても、感謝の気持ちを持てないと成長できないと思っています。

親、家族、チームメイト、指導者、審判、相手チーム。サッカーは1人ではできません。周囲への感謝の気持ちを忘れないことで、素直に伸びていくと思いますし、浦和レッズハートフルクラブは全コーチングスタッフが、「一生懸命」、「楽しむ」、「思いやり」を指針にして指導しています。


サッカーはミスのスポーツですから、お互いカバーし合うことが大事です。その時に「サンキュー!」「ありがとう」と言える選手の方が、自分がピンチになった時に助けてもらいやすいのです。それは試合で勝ちを目指すうえでも大事なことです。

「ありがとう」の習慣づけは家庭でもできますので、ぜひ意識してみてください。

<<前編:浦和レッズ史上初のユース出身プロだったのに1年で戦力外! Jリーグ以下から這い上がり天皇杯で優勝した元Jリーガーが語る「プロになるために必要な事」


鈴木慎吾さんもコーチングスタッフとして携わる
浦和レッズハートフルクラブの活動内容はこちら>>

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取材・文・写真 森田将義

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