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浦和レッズはなぜ、"勝利を最重要視しない"活動を続けるのか? 元日本代表のキャプテンが語る「サッカーのまち」への恩返し

公開:2019年9月10日

キーワード:お互いを信頼し合うこころを育むキャプテン仲間への思いやり何事にも一生懸命やる心を豊かにする日本代表浦和レッズ浦和レッズハートフルクラブ落合弘

浦和レッズは、リーグ優勝1回、準優勝5回、3位2回、それに2007年と2017年にはアジア王者に輝きました。過去15年間で10位以下になったのは2回だけです。

Jリーグでもトップクラブである浦和レッズには、プロ選手を目指す子どもを育てるトップチームの育成組織であるジュニアチームがありますが、一方で地域に根差し心の育成を目的とした「浦和レッズハートフルクラブ」という活動があります。

2003年に始まった「浦和レッズハートフルクラブ」の中に、これからの子どもたちを育てるヒントがありました。

サッカーを通じて「こころを育む」というテーマを掲げ、「仲間への思いやり」、「お互いを信頼し合う」、「何事にも一生懸命やる」といった「こころ」こそがスポーツにおいて、ひいては社会の一員としてもっとも大切なことだというメッセージを伝えています。

「サッカーの実力」とは異なるベクトルの活動でした。特筆すべきは「勝利を目指す」や「上手くなる」という言葉がどこにもないことです。

今回は、浦和レッズハートフルクラブの「キャプテン」として16年間ずっと舵を取ってきた元日本代表主将でもあり、浦和レッズの前身である三菱重工サッカー部でも長きに渡り活躍してきた落合弘氏に活動理念や、実際の活動内容などお話を伺いました。
(取材・文:本田好伸)

 

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浦和レッズハートフルクラブの落合弘キャプテンは「浦和があって、レッズがある」といいます

 

■地域の人々の心を豊かにする活動

「浦和レッズはなぜ、勝利を最重要視しない活動をするのか」という疑問に対する答えは、落合キャプテンの「浦和があって、レッズがある」という言葉に、集約されています。

「普通であれば、Jリーグで戦うクラブは地域への『普及』や子どもの『育成』に取り組みますよね。でも、浦和の街で『普及』なんて言っては怒られてしまいます。レッズができる前からみんなサッカーを知っていますから。もっと違う地域との関わり方があるのではないかと考えたのが浦和レッズハートフルクラブでした」

2003年に始まった活動の当初から、落合氏は「キャプテン」に任命されました。

「当時のレッズは決して強くなかったですよね。だからまずはトップチームを強くしたい。それともう一つ、こんなに弱いのに応援し続けてくれている地域の人に恩返しをしたいという、2つの思いがありました」

こうして落合キャプテンたちが思い描いたものこそ「地域の子どもたちの心を育む」ことだったのです。

具体的には、ホームタウンの埼玉県さいたま市の各所で開講している「ハートフルスクール」や「小学校授業サポート」、小学校・保育園・幼稚園・障害者施設などの訪問する「ハートフルクリニック」、小学校・中学校・公民館などで"対話"を行う「ハートフルトーク」、浦和レッズのコーチ陣がパートナー企業とともにサッカーの楽しさを伝える「ハートフルサッカー」などを行なっています。ハートフルサッカーは、被災地や海外を訪れることもあり、年間を通してほぼ毎日のように各地で実施されています。

この浦和レッズハートフルクラブが大切にしていることは、子どもだけではなく、親御さんや地域の多くの人の「心を豊かにする」ことです。

「今の世の中は便利になっていく一方で、人間らしさがどんどん失われてしまっていますよね。人間が遺伝子レベルで持っているものを取り戻さないといけない。それは、何かを乗り越えて、何かができる喜びを感じるとか、そういうことだと思います。浦和レッズハートフルクラブの活動を通してそういうことに気づいてもらえたらいいなと。それこそがスポーツの価値だと思うし、プロスポーツクラブが考えなければいけないことです」

 

■レッズがあってよかったと思ってほしい

落合キャプテンは、スポーツの中でもやはり「サッカーは特別」だと言います。

「他のスポーツの人に怒られてしまうかもしれないですけど、サッカーって本当にすごい。それに私たちも実際に海外で活動もしますが、ボール一つで集まれます。ゴールがなくても穴を使ったり、木と木の間に設定したり。サッカーが上手いことがすごいのではなくて、私たちは、サッカーに関われているからこそこの喜びを味わえる。そのことを本当に痛感しています」

浦和レッズが続けてきた活動は、この16年で何万人もの人をつないできました。そうした積み重ねは間違いなく地域に広がり、それがまた、浦和レッズに戻ってきているはずです。

「決してチケットを売り歩いている活動ではないですが、私たちの活動を通して『レッズっていいな』って思ってもらえたら嬉しいですよね。仮に、チームの調子がいい時は応援に来てくれていなかったとしても、何か困った時に助けてもらえるような、そんな関係を築けていけたらいいと思っています。浦和があって、レッズがある。地域の人にとっては、レッズがあってよかったなと少しでも感じていただけるような、寄り添ってもらえるようなコミュニケーションを続けたいですね」

落合キャプテンはそう話しながら、しみじみと「いやぁ、サッカーっていいよね」と何度も話します。「あんな小さなボール一つで、全世界が熱狂できるんだよ。いいもんだよね。だから浦和に感謝なんです。私も浦和に生まれていなければ、もしかしたら今はプロ野球の世界で、大活躍していたかもしれないですから(笑)」

浦和レッズはなぜ、勝利を最重要視しない活動をするのか。それは、地域の人への恩返しの気持ちから始まったものでした。そうやって積み重ねてきたクラブと地域の関係性は、決して他のクラブでは真似できないような強固なつながりとなって、「浦和=レッズ」という形になっていったのでしょう。

 

■今、この時代だからこそ伝えたい、キャプテンのメッセージ

じつは、浦和レッズハートフルクラブの話はここからが本番です。

この活動がずっと目指してきたもの、形を変えて伝えられてきたこと、今、この時代だからこそ伝えたいメッセージがありました。それはまさに、「浦和レッズハートフルクラブ=落合キャプテンの生き様」といっても過言ではありません。

サッカーに取り組む、もしくは取り組んでいない子ども、またその親御さんや指導者、教育者、いや、すべての大人に知ってもらいたい想いを、後編でお届けします。


浦和レッズハートフルクラブの活動内容はこちら>>

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取材・文:本田好伸

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