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なかなか答えを出せない子も高く評価。「遠藤塾」流、技術と判断力のある選手の育て方

公開:2018年7月13日

キーワード:技術日本代表止める考える力蹴る遠藤保仁遠藤塾遠藤彰弘

元サッカー日本代表で歴代最多のキャップ数(日本代表における公式戦の出場数)を誇る遠藤保仁選手が運営しているサッカースクール"遠藤塾"。

ここで指導者を務める遠藤選手の兄で、日本代表の10番だった彰弘さんがこのスクールでどういった指導を行っているのかを紐解いていきます。前編では"子どもたちにヒントを与える"ことの重要性について語っていただきました。

後編である今回はその具体的なアプローチ方法について、そして保仁選手のどういった部分を子どもたちに見てほしいかという点についても、話していただきました。

(取材・文:竹中玲央奈 写真:11aside)

<<前編:遠藤保仁のスキルを身につける! 日本トップクラスのMFの理念がつまった「遠藤塾」とは

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遠藤兄弟が技術に自信を持っているのは子どもの頃の体験によるのだとか(C)11aside

■サッカーの指導なのに車の話に例える理由

彰弘さんが子どもたちの指導において意識していることとして「ヒントを与える」というアプローチについては前編で触れましたが、具体的にどのような声掛けをしているのでしょうか。それについてはこう語ります。

「ヒントを与える時にサッカーではなく他のことに例えます。例えば車です。サッカーのことを言っても子どもたちは答えをひたすら求めてくるだけなので『車ってどうやって走るんだっけ? どうやって止まるんだっけ? どのタイミングで止まらなきゃいけないんだっけ?』と。そうすると"間合い"の話に繋がっていくんです。前の車がいるのにアクセル踏んではダメですし、突っ込んでいく必要もない。そう言うと、サッカーの中でもそういう作業はいらないと子どもたちも理解するんです。『隣のスペースが空いてたら車線変更すればいいんでしょ』とか例えたりするわけです」

サッカーのプレーを身近な事象に例えることは少し斬新でもあります。それゆえ、すぐに理解できない子どもたちもいるそうです。

■なかなか答えを出せない子も高く評価

「わからない、わからないと2ヶ月くらい悩んでる選手もいます。ずっと考えているんですよ」(彰弘さん)

ただ、なかなか自分なりの正解を出せずに苦しんでいることを遠藤塾では評価し、尊重するのです。何故かと言うと、"考える"ことが成長につながるからです。

「子供によっては答えが出てくるのに時間がかかるかもしれないですが、練習の中で何度もトライをする中で『こうした方がよかった』という風に考えて正解に近づいていってくれる。その中で少しずつ成功体験を積み『自分はサッカーが好きなんだな』と思えますので、悩むことは子ども自身の成長にとっても良いことになります」

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遠藤塾では子どもたちをの悩む力も大事にしています(C)11aside

とはいえ、サッカーが好きなのかもわからない全くの初心者がスクールに入団することもあります。そういう状況では"考える"以前に基本的な技術の指導が必要となるのでしょう。そこについても彰弘さんは"最低限のこと"は教えつつも、やはりヒントを与えて考えさせるというスタンスは崩しません。

「全くの初心者には『こういう足の角度を作る』、とか『ここに足を置いたらボールが止まるよ』ぐらいの基本的なことはもちろん教えますね。サッカーをやったことがない子はボールを止められないし、蹴ることができません。できない状態の中でヒントを与えた後にこの子がどうするのか、という部分を見ています。すると、大体が自分で自主的にトレーニングをし始めるようにもなるんです。普段のスクールやチームの練習以外での時間で、ですね。そういう自ら進んでサッカーに関わる選手になってもらいたいという思いはあります」

兄弟ともに日本代表! 遠藤兄弟が自分の技術に自信を持てた理由

指導者から答えが簡単にもらえないから自ら考え、何度もトライして小さな成功体験を積む。それによって子どもたちはサッカーが好きであることを自覚します。そして、スクールの時間以外でもプレーをするようになり、それが結果として選手としての成長につながるのです。そこには、彰弘さんの原体験に基づいたものもありました。

「そもそも僕ら兄弟がどうして技術に自信を持つ選手になっていったかというと、家の前の庭のサッカーでボールを触る回数が多かったからということに繋がるんですよ。毎朝僕らはそこミニゲームをしていたのですが、そこで負けず嫌い精神も生まれるし、テクニカルな部分はボールを触る機会がたくさんあることで養われるんです。僕らが子どものころは学校のスポーツ少年団の練習にも出てボールを触ってる時間は多かったと思うんですけど、最近は"公園でボールを蹴ってはいけない"というようなルールも多いので、なかなかそれができないのはかわいそうだなとも思っています。だから、とにかく練習のなかでボールを触る機会を増やしてあげる作業も必要ですよね。そこで遠藤塾では『じゃあボールを触れるようにするにはどういう距離感が良いと思う?』という話を車の話に例えたりしてするわけです」

次ページ:答えを教えて! という直球の質問への答え方

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取材・文:竹中玲央奈、写真:11aside

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