東日本大震災から4年の月日が経ちました。筆者は、その日、バルセロナに居ました。4年前の3月8日に欧州チャンピオンズ・リーグのゲームがバルセロナのホーム『カンプ・ノウ』にアーセナルを迎えて行なわれたのですが、それに合わせてバルサの経営改革に成功したフェラン・ソリアーノという人物と会うアポがとれたのです。(取材・文 広瀬一郎 写真 田丸由美子)
■ビジネスの基礎は、サッカーを通して学んだ
じつはベンゲル監督が率いるアーセナルのチーム戦術が好きで、その4日前の週末にロンドンにあるアーセナルのスタジアムでプレア・リーグも観戦しました。短い期間で2度もアーセナルのゲームを目の当たりにすることができ、「至福の時だった!」と言いたいところですが、どちらのゲームもアーセナルがドン引きの戦いで、ガッカリした記憶があります。
フェランは自分たちが行なった経営改革の内容を『ゴールは偶然の産物ではない』という本にまとめています。この本を読み感銘を受けて、インタビューを申し込んだのです。この本はJリーグのクラブ経営者たちの必読本でしょう。まさに「クラブ経営とは何か?何とすべきか?」について、非常に具体的に述べられています。
8日のゲームの前日にバルセロナでフェランと会い、食事をしながら3時間近く話をしました。彼曰く、「経営とは、(1)目標設定と(2)目標を達成するためのフレーム設定と(3)各フレームに高度な能力を有す専門家を配し、(4)それぞれの人間がその能力を発揮できるような条件を整え、(5)全体のバランスを取ること」だそうです。2003年度に250億円だった売り上げを2005年度に320億円に拡大し、その後のバルサの財政的安定を確保する礎を作った本人の言葉ですから説得力がありました。
そして、「ビジネス能力の基礎は、サッカーを通して学んだのであるからサッカーに恩返しをするのは当然だ」という彼の言葉も忘れられません。
8日のゲームの翌日、当時バルサの強化本部長をしていたベギリスタインと会うことができました。(彼との話は紙幅の関係で割愛します。)
そして金曜日の午後、帰国の途上につこうとしてバルセロナ空港に行くと、航空会社のカウンターで女性職員たちが泣いているのです。「どうしました?」と尋ねると、「日本が消滅した!知らないのか?」と。慌ててインターネットを覗くと、まるでCGで作ったパニック映画さながらの映像ばかりが流れていました。
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取材・文 広瀬一郎 写真 田丸由美子