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楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた

「Jリーガーになりたい人!」で手を挙げた子はゼロ ~世界を目指す子どもに伝えるべきこと。

公開:2020年1月22日 更新:2020年1月30日

キーワード:スポーツマンシップリスペクト中野吉之伴伊藤美誠全国高校サッカー選手権勝利至上主義早田ひな東京五輪池上正相手を称える

サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜協立大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。

聴講者はすでに6万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。

高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。

日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。

根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。
(監修/高橋正紀 構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)

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(写真は少年サッカーのイメージです)

 

■高校サッカー選手権監督インタビューから見るスポーツマンシップ

「年末年始はスポーツイベントがン盛りだくさんなので、ぜひ試合後の選手や指導者の姿を見てスポーツマンシップを学んでほしい」

昨年末のこの連載でみなさんにお伝えしたことです。いかがでしたか?

私はと言えば、新年早々の授業で、全国高校サッカー選手権の試合を引き合いに学生たちにこんな問いかけをしました。

「A高校とB高校の試合、みんな見たよね。勝ったほうの監督さんと、負けた側の監督さんのインタビュー、どう思ったかな?」

学生たちは僕の「スポーツマンのこころ」の講義を受けているので、ちゃんと視点を持っていました。

勝った側は「苦しい戦いでした」「持ち味を出しました」「選手はよく頑張った」と話しました。無論間違ってはいません。が、戦った相手を称える言葉がなかなか出てきませんでした。つまり、終始「自分たちのこと」ばかり話すのです。

この点では、負けた側も同じです。

「相手のサッカーが素晴らしかった」「パフォーマンスが良かった」といった勝者を賞賛する言葉が見当りません。この試合のみならず、ほかの試合の監督インタビューも似たような状況でした。

スポーツマンシップがある程度浸透している欧米では、勝者たちは戦った相手にまずは敬意を表します。全力で戦ってくれたからこそグッドゲームになったと、リスペクトの気持ちを伝えるのです。

敗者となった指導者に関しても、勝者を称える態度を選手に見せるべきです。自分たちのボスが相手のサッカーを認めている。そのことは、選手らが悔しさを腹の底に押しとどめて前を向く力になるはずです。負けたことをまずは認めなければ、新たな成長につながらないのですから。

 

■卓球・伊藤美誠が見せた、アスリートのあるべき姿

いわゆるグッドウイナーと、グッドルーザーの態度を見せられるスポーツマンは、人々から尊敬されます。

例えば、先日行われた卓球の全日本選手権。

女子シングルス準決勝で、伊藤美誠選手と早田ひな選手が対戦しました。伊藤さんはご存知のように世界ランキング3位で東京五輪出場を決めています。一方の早田さんは落選。でも、この前日に二人は全日本女子ダブルスで3連覇と、手の内を知り尽くした仲でした。

敗れた伊藤選手は、本物のトップアスリートだと思いました。試合後のインタビューでこう答えました。

早田選手がすごく上回っていたので。いいボールがたくさん入ってきたので、きょうの試合はよくここまで戦えたな、と。今持っているものは出せたと思います」

と、自分を破ったライバルの健闘を称えました。しかも「負けて良かったとは思わないけど、負けたからこそまた頑張れる」と敗戦を糧にすることを誓いました。

負けてしまい目に涙こそたまっていましたが、顔を覆って号泣するようなことはしません。時折笑顔さえ見せながら、気丈に試合を振り返る姿が印象的でした。

シングルスで優勝すれば、彼女は「史上初の3年連続3冠」の栄誉を手に入れるはずでした。その夢を打ち砕かれたショックはいかばかりでしょう。

対する早田選手も「ここまで成長できたのは伊藤選手のおかげです」とライバルの存在に敬意を払いました。世界で戦う19歳の女子たちは、あるべきアスリートの姿を我々に見せてくれたのです。

 

■相手がいるからこそ試合ができる、「当たり前」をしっかり理解すること

一昨年は、卓球のナショナルチームで12歳以下の選手を対象に「スポーツマンのこころ」の講義をしました。平易な言葉でかみ砕いて話せば、11、12歳の小学生にも十分伝わります。

勝った時はまず相手をリスペクトできるとかっこいい。

負けた時は泣かないほうがかっこいい。負けた時にこそ、自分の強さが試される――。そんな話を子どもたちはうなずきながら聞いてくれました。

スポーツは、相手がいてこそ試合ができ、ライバルの存在があってこそ自分も進歩できる。こんな当たり前の理屈を、ジュニアのうちからしっかり落とし込む機会が必要だと改めて思いました。

昨年は、ラグビーのワールドカップで日本中が盛り上がりました。海外では、渋野日向子選手が全英オープンで優勝。今年はいよいよ東京2020本番を迎えます。日本の子どもたちにとって、「世界」はすごく遠いものではなくなってきました。

数年前に、私が小学生を対象にした講義で「Jリーガーになりたい人!」と挙手を求めたときに誰も手を挙げないことがありました。

あれっ!?と思い、一人の子に「なりたくないの?」と聞くと

「僕はスペインリーグでプレーする」と答えました。

そこで、
「じゃあ、スペインとかプレミアとかブンデス、世界でプレーしたい人!

なんと、ここでパパっと手が挙がりました。そうなのです、既に子ども達の目は世界を見ていたのです。以後の私の講義での子ども達への問いかけは「世界のトップリーグでプロを目指してる人!」に変わりました。

 

次ページ:日本の指導者が世界基準から遅れている点

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監修:高橋正紀 構成・文:「スポーツマンのこころ推進委員会」

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