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ワールドカップで活躍した日本代表もやっていた「壁当て」が"止める・蹴る"の練習に効果的な理由

公開:2022年12月13日

キーワード:キックトラップ壁当て止める自主練蹴る

筑波大学サッカーコーチング論研究室に所属し、育成年代の指導に取り組む内藤清志さんに、昔の子どもたちがやっていた「壁当て」について、その効果と重要性をうかがいました。題して「ひとりでできる、止める・蹴る練習のすすめ」。ぜひ参考にしてみてください。(取材・文:鈴木智之)

「壁当て」に最適なリバウンドボード>>

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■サッカーに必要な技術はボールコントロールだけではない

子どもたちに「自主練で何に取り組んでいますか?」と尋ねると、「リフティング」「ドリブル」といったボールコントロールのメニューが返ってきます。人数やスペース、安全性の問題もあり、足元の技術向上に取り組むことが多いようです。これは現代の日本の環境を反映している回答だと思います。

しかし、サッカーに必要な技術はボールコントロールだけではありません。キックも重要な技術です。とはいえ、キックをすると足元からボールがなくなってしまうので、ひとりではできません。そのため、自主練でキックの練習をする選手はあまりいないでしょう。

ひとりでは取り組みづらいキック練習ですが、あるものを使えばやりやすく、効果的なトレーニングになります。

その、あるものとは「壁」です。

かつては家の塀やマンションの壁をめがけて、ボールを蹴っている子どもはたくさんいました。内藤さんは子どもの頃、野球とサッカーをしていたそうで、どちらも壁当てに取り組んでいたそうです。

しかし、現代では安全性や騒音の問題などから、「壁当て」をしている子はあまり見かけなくなりました。学校のグラウンドや公園に壁があれば、使うことができますが、「ボール遊び禁止」を掲げている公園も多く、子どもたちが、自由にボールを蹴ることのできる環境は減っていると言っていいでしょう。

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■筑波大からプロになった選手もやっていた「壁当て」

内藤さんは言います。

「個人的に、壁当てはすごくいい練習だと思っています。筑波大の選手はグラウンドの側面のスタンドの脚にある、ボール1つ分くらいの壁をめがけて、よくボールを蹴っていました。ワールドカップでも活躍した川崎フロンターレの谷口(彰悟)選手や車屋(紳太郎)選手もしていましたし、その時代の筑波の選手で、そこへめがけて壁当てをしていない選手はいないと思います」

内藤さんがコーチをしていた頃の筑波大学は「止める・蹴る」の要求レベルが高く、高校時代に有名な選手であっても、技術面でチームが求める水準に到達していないことも多く、1、2年生の頃は試合に出られないケースもあったそうです。

「筑波大時代の車屋選手や中野嘉大選手(湘南)は、入学時に、自分の技術がチームの要求レベルに到達していないことを感じ、黙々と止める・蹴るの練習をしていました。二人とも監督やコーチにアドバイスを聞きにくるタイプではありませんでしたが、その姿を見たときに『彼らは自分に足りないものを自分で気づいて、補おうとしている。きっと良い選手になるだろう』と感じたのを覚えています」

自分と向き合い、弱点を克服し、長所を伸ばす。それが自主練の醍醐味です。ボールと、自分と向き合う時間が長い選手は、成長へのストーリーを描いていくことでしょう。

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■壁に繰り返し蹴ることでキックのコツをつかむ

内藤さんは「うまくなるために、自主練は必要なものだと思います。壁当ては基礎的な運動動作が身につきますし、壁には、感情がないのも良いですよね」と話し、理由を次のように説明します。

壁はこちらが蹴ったボールに反応するので、自分のキックが緩かったから、跳ね返りが甘くなったのか。もしくは強かったから、跳ね返りの勢いが強くなってしまったのかなど、原因を自分に求めることができます。『ボールのここを蹴ったら、こういう弾道になるんだな』といったように、繰り返し蹴ってコツをつかむことは、サッカーがうまくなるために、すごく大切なことだと思います」

壁当ては基礎的な動作の習得だけでなく、サッカーに必要な「とっさの反応」にも有効です。おうとつのある壁にボールを蹴ると、跳ね返りの弾道が予測しにくいので、とっさに足を出し、ボールをコントロールするトレーニングになります。

また、砂混じりの土や河川敷によくある剥げた天然芝など、地面がでこぼこしているところにある壁は、バウンドした際に予測のつかないところへ飛んでいきます。

■クロアチア人コーチが天然芝にこだわりを持つ理由

「以前、日本がワールドカップでも対戦したクロアチアに行ったことがあるのですが、ほとんどのグラウンドが天然芝でした。クロアチア人のコーチに聞いたら『俺達は天然芝にこだわりを持っている。人工芝だと、決まったバウンドしかしないだろう? でも、試合は天然芝で行われる。コントロールする直前に、ボールが変化することもある。それに対応できることが大事なんだ』と言っていて、なるほどなと感心しました。さらに、ダイレクトのキックの際にギリギリまでボールを見極めて蹴るので、振りがシャープになり、ミートが上手になるという理屈にも納得させられました」

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▲どこでも「壁当て」の練習ができるリバウンドボード

■壁当てできる場所がない時に活用したいツール

反復練習で身につけた技能を、イレギュラーな状況で適応させることがスキルであり、サッカーに必要な要素です。壁当ては工夫次第で基礎動作、イレギュラーな状況の両方を体験できる練習と言えるでしょう。

「サッカーのように認知や判断が大事なスポーツは、最終的に変化するボールに、どれだけ対応できるかが重要になってきます。でこぼこのある壁や、コンディションの悪いグラウンドでトレーニングをすることは、その練習になりますよね。いまの子どもたちは人工芝でサッカーをする機会が多いです。環境が整備されている分、不規則なものに対応する経験は少ないのかなと思います」

自主練をするときは、あえてでこぼこな場所でキックをしたり、ドリブルをするのも良さそうです。公園や学校などに、壁当てをしてもいいボードや塀などがないか、探してみてはいかがでしょうか。

もしちょうどいいものがなければ、ちょっとしたスペースがあれば設置できる「リバウンドボード」や「リバウンドネット」がおすすめです。小さめの公園でも設置して使えるので、自主練に最適です。自主練を楽しくし、やる気を高めるパートナーになってくれるでしょう。

次回の記事では内藤さんに、壁当てを通じて、止める・蹴るがうまくなるためのポイントについて、話をうかがいます。

後編:トラップミスを減らすポイントは「足を引かない」 1人でも"止める・蹴る"が上達する壁当てトレーニング

「壁当て」に最適なリバウンドボード>>

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●どこでも「壁当て」ができるリバウンドボード>>
●内藤清志氏の「トラップ新指導論~サッカーをうまくする「止める」技術の教え方~」>>

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取材・文:鈴木智之

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