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中村憲剛の「KENGOアカデミー」

なぜ中村憲剛は「育成」に情熱を注ぐのか? 選手や親として感じた課題と日本サッカーへの熱い想い

公開:2021年5月18日 更新:2021年5月31日

キーワード:JリーグKENGOアカデミートラップポジショニング中村憲剛川崎フロンターレ指導止める練習育成視野蹴る

2020年シーズンを最後に、18年に渡る現役生活にピリオドを打った中村憲剛さん。引退後は「川崎フロンターレ リレーション オーガナイザー(FRO)」という肩書で、育成年代の選手への指導、アドバイスを行っています。なぜ、育成年代の選手へ関わる役割に就いたのでしょうか? そこに込める熱い想いを話してくれました。(取材・文:鈴木智之/写真:新井賢一)

※写真は2020年1月撮影

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■選手を辞めた後の「自分の行き場」

現役を引退する数年前から、「サッカー選手を辞めた後、自分の行き場はどこなんだろう」と考えていたときに、真っ先に浮かんだのが育成年代の選手に携わることでした。それは決して、「引退したから、まずは若い選手の指導から始めよう」という安易な考えではありません。そこははじめに強調しておきたいです。

僕は現役時代、自分より若い選手と接する中で様々なことを伝え、アドバイスをしてきました。彼らと対話をする中で、「これをもっと若い年代の選手に伝えたら、どうなるんだろう」という想いが強く湧き上がってきました。

とくに同じポジションのリョウタ(大島僚太)やアオ(田中碧)たちに教えていく中で「トップチームの選手だけでなく、プロになりたい、もっとうまくなりたいと思う若い子たちにも、彼らに伝えてきたことを伝えた方がいいんじゃないか」と考えるようになっていきました。

その想いから、JFA(日本サッカー協会)の『ロールモデルコーチ』のオファーも受けさせていただきました。むしろ、育成に対する情熱がなければ、ロールモデルコーチは引き受けませんでした。それぐらい、育成年代の指導に対して真剣に取り組みたい気持ちがあります。

それを前提に、自分が引退後、川崎フロンターレというクラブに携わることを考えたときに、トップチームは、いま自分が携わらなくても大丈夫だろうという印象を持ちました。トップチームでプレーする後輩たち、とくに中盤の選手には、僕が伝えたいことを伝え引退できた実感もありましたから。

なので、次はトップに選手を送り込むアカデミーに携わり、トップチームの選手たちに接してきたように、アカデミーの選手たちにできればと思っています。フロンターレのトップチームには脇坂泰斗、三笘薫、田中碧、宮城天といったアカデミー出身の選手がいますが、彼らに続く選手が、毎年1、2人は出てきてほしい。それはクラブの望みでもあるので、そこをサポートできたらと思っています。

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■育成年代から日本サッカーを変えたい

フロンターレのサッカースタイルは独特です。当然ですが、合う選手となかなか合わない選手がいます。僕自身、フロンターレで18シーズンプレーしてきて、いまのスタイルのベースを作った風間(八宏)さん、そして監督の鬼木(達)さんのもとで長くプレーしてきたので、いまのフロンターレの選手に求められる要素は理解しているつもりです。

今後はアカデミーの選手に、トップチームの基準、考え方などを伝えることができれば、人材供給の面でスムーズにいくのではないかと思っています。僕がトップチームの「ものさし」としての役割を果すイメージです。

もちろん、アカデミーの各カテゴリーには監督、コーチがいらっしゃるので、そこを差し置いてでしゃばるつもりはありません。なのでクラブには、「アカデミーの練習を見に行って、選手の成長をサポートできる役割を担いたい」と言いました。

それが「川崎フロンターレ リレーション オーガナイザー(FRO)」です。「関係や繋がり(リレーション)」を「構築(オーガナイズ)する」という意味があり、フロンターレの「フロ」ともかかっています。

引退後の活動の根底にあるのが「育成年代から日本サッカーをより良くしたい」という想いです。フロンターレのトップチームで若い選手たちに接してきた中で、大事だなと思ったことは、子どもたちにも積極的に伝えたいと思っています。

止める・蹴る、立ち位置、ポジショニング、判断など、プロでも小学生年代でも変わらないのではないかといまは思っています。小学生の息子がサッカーをしているのもあって、彼に伝えながらどこまでやれるかを見たときに、足が速い、ドリブルが得意、パスが上手など、各自が持つ個性を発揮するためのベース、プレーの本質的な部分を伝えることが大事だなと、改めて感じました。

子どもたちに、サッカーの本質をわかりやすく、噛み砕いて伝えると、よりよい成長曲線を描けるようになると思っているので、育成に関して真剣に向き合いたい。2015年から続けている『KENGO Academy』は、その想いで取り組んでいます。

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■いまの少年サッカーは、上手な子しか楽しめない

また、日本サッカーがより発展するためには、オンザピッチとオフザピッチ、両方の質を上げることが大切です。先日、JFAの登録制度改革本部の「JFAグロース・ストラテジスト」に任命していたただきましたが、サッカーに生涯で関わる人を増やしていくことも、これからすべきことだと感じています。

日本サッカーの発展に関与する人を増やしたい。それは選手だけではなく、指導者、レフェリー、運営など、たくさんの立場があります。そこが充実することで、今度は応援する人、サポーターやファン、スポンサーといった形で多くの人がサポートすることで、日本サッカー全体がより大きくなっていくことができると思っています。

それと同時に、グラスルーツの活動にも関わっていきたいです。僕はサッカー少年・少女の親として、子どもたちのサッカーに携わっています。その中で、もっとこうしたほうがいいのではないか? と感じる場面に遭遇してきました。

対戦相手にレベルの差があり、大差がついた試合を見たことが何度もあります。これはお互いにとってメリットは少なく、むしろどちらにもマイナスの影響になりかねません。そういった試合があるのは現行しょうがないことだとは思うのですが、レベルに合ったチーム同士で試合ができる、例えばレベルを分けてのリーグ戦など、環境を整備することが大切だと思います。いまの少年サッカーは、上手な子や勝ち残る子しか楽しめない環境になっているのではないでしょうか。

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■日本サッカーの発展に最も大事なこと

「サッカーはそれほどうまくはないけど、サッカーが好きで続けたい」という子の行き場を作ることも、日本サッカーが大きくなるために必要なことだと思っています。

サッカーがうまい、うまくできないなど関係なく、その子のレベルに合った試合に出られるのであれば、様々な理由でサッカーを辞めてしまう子、嫌いになってしまう子も減らせるのではないかと思います。

「トップレベルを目指すのはあきらめたけど、サッカーには携わりたい。サッカーが好きで生涯スポーツとしてサッカーに携わりたい」という人をどれだけ増やすことができるか。それが、これからの日本サッカーの発展に大事なことだと思います。

サッカー少年・少女の親として、少年サッカーの現場で見たこと、感じたことを、少しでも良い方向に導くことができるように、「JFAグロース・ストラテジスト」としてみなさんのお役に少しでも立てるように活動していきたいと思っています。

引退後、様々な肩書をいただいて活動していますが、根底にあるのは「育成年代から日本サッカーをより良くしたい」という気持ちです。サカイクさんのようなメディアのみなさんの力も借りて、今後もいろいろなことを発信していきたいと思っています。よろしくお願いします。

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●中村憲剛が指摘。育成年代で蔓延する「止める・蹴る」の誤解と本当の目的とは?>>

●「止める・蹴る」を切り取って練習していないか? 中村憲剛が伝えたいトレーニングの本質

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取材・文:鈴木智之 写真:新井賢一

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