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中村憲剛の「KENGOアカデミー」

中村憲剛が指摘。育成年代で蔓延する「止める・蹴る」の誤解と本当の目的とは?

公開:2021年5月21日 更新:2022年12月 2日

キーワード:JリーグKENGOアカデミートラップポジショニング中村憲剛川崎フロンターレ指導止める練習育成視野蹴る

「育成年代から日本サッカーをより良くしたい」という想いから、引退後は育成年代の指導や情報発信を積極的に行っている中村憲剛さん。
今回の記事では、憲剛さんが最も重要と話す「止める・蹴る」について、その考えをお聞きしました。(取材・文:鈴木智之/写真:新井賢一)

※写真は2020年1月撮影

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■ボールが止まれば目線が上がる

サッカーをする上で「ボールを止めること」は、とても大切なプレーです。しっかりボールが止まると、たくさんのメリットがあります。

僕は『KENGO Academy』で子どもたちの指導をしていますが、子どもたちに、こんな話をします。

「一度のコントロールで、ボールがしっかり止まるとどうなる?」

そうすると、子どもたちから「目線が上がる!」という意見が出てきます。

そのとおりで、目線が上がると、相手がどこにいるか、味方がどこにいるか、どこにスペースがあるかを見ることができるようになります。これだけたくさんのことが長い時間見えていると、相手の守備のねらいもわかります。

相手が右サイドのボールをカットしようとしているのであれば、左に蹴ればいいし、右も左もパスコースを切っていれば、真ん中に蹴るか、もっと遠くの味方にパスを出せばいいわけです。

反対に、ボールコントロールに時間がかかり、ボールを見ようと目線を下げると、周りの状況が見えなくなります。その瞬間、相手にプレッシャーをかけられたら、気づかずにボールを奪われてしまいます。加えて、周りを見ていないと、味方がどこにいるかわからないので、パスコースを見つけることができません。

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■子どもたちに意識付けさせる方法とは?

ボールが一度のコントロールで止められないと、次のプレーにこれだけの違いがあります。だから子どもたちには「ボールを一度のコントロールでしっかり止めることができたら、たくさんのものを見ることができるので、プレーも大きく変わるし、何よりも相手にボールを奪われなくなるよ」と話をします。

そう言うと、子どもたちの意識も大きく変わっていきます。理由も説明せず、ただ単に「ボールをしっかり止めよう」とだけ言っても、子どもたちの心には響きません。結果、プレーも変わらず、上達もしづらいでしょう。

それは、すごくもったいないことだと思います。指導者のすべきことのひとつとして、子どもに一方的に指示を出して、ロボットのようにやらせるのではなく、ヒントや気づきを与えることだと思います。

ピッチの中でプレーするのは、指導者ではなく、選手たちです。そのためには成功体験、失敗体験を繰り返して、教えたことを自分のものにしてもらう必要があります。

そこでコーチが、例えばですが右に出せ、左に出せと言って、子どもたちにそのとおりやらせたとしても、その場ではうまくいくかもしれませんが、子どもたちはその声に反応して動くだけなので、そこに彼らの意志はないし、それだと本当の意味での成功体験にはならないと思います。

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■しっかりとボールを止めるだけが正解ではない

僕自身、昔から「止める・蹴る」にそこまでこだわっていたわけではありませんでした。でもフロンターレの監督が風間(八宏)さんになって、「お前、ボールが全然止まってないぞ」と言われたところから、より深く考えるようになりました。

要は、しっかりとボールを止めるだけが正解ではなく、ボールが止まり、次のプレーに素早く移ることができる状態にすることが、風間さんが言う「止める」ということだったんです。

ボールの勢いを殺して、ワンタッチでスパッと止めることができても、足元に深く入りすぎてしまったら、次のプレーに素早く移ることはできません。コントロールする時間が必要なので、そのときに相手に寄せられたら、取られてしまいます。

ボールを止めて、0秒台のスピードでパスが出せる。そこまでがセットになって、初めて「ボールがしっかり止まっている」と言うことができるのです。

以前、あるテレビ番組で僕のプレーを分析してもらったのですが、来たボールを止めて、パスをするまでの時間が、0秒台のプレーが何本もありました。0秒台でプレーするということはボールを持つ時間が短いので、相手が奪いにくる前にプレーを完結しているということです。その速さでプレーしていれば奪われないですよね。つまり、ボールを止めることが目的ではなく、ボールを止めて、蹴る、運ぶといった動作に、どれだけ速く移ることができるかが重要なのです。

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■「止める」は次のプレーを成功させる第一歩

ボールを止めたのに、素早く、次のプレーに移れないということは、ボールがちゃんと止まっていないということです。そこは子どもたちに伝えたいし、指導者の方たちにも理解していただきたいところです。

最近、「止める・蹴る」という言葉が、独り歩きしていると言うか、真意が伝わっていない、誤解を招いていると感じることがあります。

「止める・蹴る」で終わりではなく、蹴って(パスを出して)動く、止めたボールをドリブルで運ぶなど、サッカーは動作が連続するスポーツです。

目的があってボールを止めるわけなので、止めて終わりではなく、次のプレーに素早く、ミスなく移るために「止める」に意識を向けてほしい。そして、しっかりとボールを止めることが、次のプレーを成功させるための第一歩になるんだと、意識してもらえたらと思います。

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●なぜ中村憲剛は「育成」に情熱を注ぐのか? 選手や親として感じた課題と日本サッカーへの熱い想い>>

●「止める・蹴る」を切り取って練習していないか? 中村憲剛が伝えたいトレーニングの本質

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取材・文:鈴木智之 写真:新井賢一

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