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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
セレクションの合否でチームの雰囲気が変わる。強豪に受かって自慢、落ちて自信喪失などメンタルケアが難しい、良い方法はある?
公開:2026年3月27日
高学年になると多くの子が受けだす「セレクション」。特に6年生になると強豪チームのセレクションに受かって天狗になる子、落ちて自信を喪失してしまう子が出てチームの雰囲気が......。そんなときの子どもたちへの声かけに悩むコーチからのご相談。
年々セレクションの時期が早くなり、同じような悩みを抱えるチームも少なくないのでは?
ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた池上正さんがアドバイスをお送りします。
(構成・文 島沢優子)
(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)
<お父さんコーチからの質問>
池上さんこんにちは。
街クラブで小学6年生(U-12)を担当しています。担当の学年はここ数年6年生か5年生です。
相談内容は、子どもたちの心理面のケアというか、どう接したらいいのかという事です。
最近はジュニアユース(中学生のクラブチーム)のセレクションが早くから始まり、私のチームでも半数以上の子が挑戦しています。しかし、多くのセレクションが終る時期になると「強豪クラブに受かった子」と「落ちてしまった子」が明確に分かれてしまい、チーム内の雰囲気が非常に難しくなります。
落ちてしまって自信を喪失し、サッカーの練習に身が入らなくなってしまった子や、逆に受かったことで他の子に対して少し天狗になってしまう子もいます。
「部活もあるし、セレクションが無いクラブもあるよ」と励ましてはいますが、全員がリスペクトし合い、楽しくサッカーに向き合うために、指導者としてどんな声かけやマインドセットを持たせるべきでしょうか?
<池上さんからのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
近頃は中学生チームのセレクション時期が以前より早くなったようで、小学生チームのコーチ側にこのような悩みも出てくるのでしょう。
まだ11歳や12歳で「受かった子」「落ちた子」といったレッテルが貼られてしまうのは、子どもにとって辛いことでしょう。
■サッカーも中学受験みたいになっている昨今、小学生年代のコーチができることは......
やるのはサッカーですが、私の目には中学受験と同じように映ります。
公立ではなく私立中学に行かなくてはダメだというような価値観が、子どもたちに植え付けられがちです。サッカーでも、強豪だったり名前のあるクラブに行けないとダメだという感覚です。ご相談文に書かれているように、セレクションに落ちると自信喪失してしまう。世界の終わりみたいに感じるようです。
そんなとき、小学生チームのコーチは「気にしなくていいよ」と励ましてあげてください。
例えば本田圭佑さん、中村俊輔さんなど、Jリーグのジュニアユースにいたけれど、上(ユース)に上がれなくて高校サッカーでキャリを継続して日本代表までなった選手はたくさんいます。そんな話をしてあげればいいと思います。
■クラブ選びで一番大事なポイント
私の場合、子どもたちに自分の体験を話します。
強豪でも名門でもない高校に入り、そこでサッカー始めました。初心者でもずっと試合に出られる環境だったので、上手くなりました。大学に入ると、当時創設された全日本ユースという代表チームに選ばれたことのある選手がいましたが、そんな人たちとポジション争いをして3年生からレギュラーになりました。
では、高校まで結果を残してきたけれどレギュラーになれなかった選手はどうなるのかといえば、試合に出られないと意欲を失ってしまったようです。
現在の子どもたちを見ていても、そうなる傾向が見られます。その点から考えると、いろいろな経験をした子どもたちは精神的に強くなるようです。
指導者の皆さんはそういった話を子どもたちにしてほしい。クラブ選びで一番大事なポイントは、自分が試合に出られそうなチームに所属すること。
背伸びをして強いチームに行っても試合に出られなかったら、なかなかうまくなりません。その視点とともに「本当にサッカーを楽しんでいるかどうかが大切だよ」と伝えてください。
■子どもたちには「なぜ」を聞いてみよう
最後に「全員がリスペクトし合い、楽しくサッカーに向き合うために、指導者としてどんな声かけやマインドセットを持たせるべきでしょうか?」という質問ですが、子どもがここのセレクションを受けますと言ったときに「なぜ、そこに行くの?」と問いかけてください。
古い話で申し訳ないのですが、私は東京ヴェルディの母体となった読売クラブの練習会に参加したことがあります。つまりはセレクションです。
その際、監督さんとの面談で「ところで君はうちのチームで本当に何がしたいの?」と質問されました。ほかにも「落ちたらどうするのか?」「試合に出られなかったら、どうするのか?」とも聞かれました。監督さんは、選手の展望や、本当の目的を見極めようとしていたのだと思います。
ご相談者様は選手を送り出す側ではありますが、子どもたちに「行くのは自由だから止めるわけじゃないんだけど、本当に何がしたいの?」と聞いてみてください。子どもたちが自分と向き合うきっかけを与えることはできるかと思います。
「例えばあのチームに行くと、こんなにたくさん選手がいるよ」とか、あるいは「あのチームで試合に出るのは大変だよ。ただそこにいるだけでいいの?」と尋ねます。
そういう話をして、子どもたちが何か気づきを促すようなことをしてあげるべきでしょう。
■日頃から親御さんと指導者が価値観を共有することが大事
その際、保護者が「子どもはチャレンジしようとしているのに」といったことを言ってくるかもしれません。そうならないよう、日頃から親御さんと指導者が同じような価値観を共有することが重要です。
子どもたちはネットやSNSなどでいろんな情報を入手できますし、夢を見るのは別に悪いことではありません。ただ、大人のそういった冷静な目も必要だということは親御さんにも理解してもらいましょう。
■「戻ってくる」ことに寛容になってほしい
一方で、中学生も併設するクラブがほかでセレクションを受けるのであれば、クラブを辞めてから行きなさいといった縛りもあるようです。しかしながら、大人の事情でそのような理不尽な条件をつける文化は、ぜひなくしてほしいと思います。
チャレンジしようとする子どもには「ダメだったら、うちでやればいいよ」とか、「また戻っておいでよ」と言える。そんなクラブであってほしいです。
ドイツでは街クラブから名門クラブに行って、試合に出られなくて戻ってきても「ああ、よく戻ってきたね。いいチャレンジしたね。また一緒にやろう」と出迎えます。そのような寛容な態度が取れるのは、自分のクラブが勝つことが最優先ではないからです。
日本だと、もう二度と戻れない。そんな感覚ではありませんか? あいつは裏切り者。みたいな感じになって、クラブも受け入れない。そうなってほしくはありません。
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