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考える力

日本代表・柴崎岳、室屋成ら40人ものJリーガーを輩出した名門・青森山田の黒田監督に聞く、プロで活躍する選手の親には意外な共通点があった

公開:2019年7月 9日 更新:2019年7月16日

キーワード:Jリーガー室屋成指導者柴崎岳観察青森山田高校高校サッカー選手権大会黒田剛

高体連屈指の名門として、40人を超えるJリーガーを輩出する青森山田高校。近年は高校サッカー選手権大会、高円宮杯U-18チャンピオンシップで優勝するなど、タイトルを多数獲得しています。

サカイクでは、ゼロからチームを作り上げ、強豪へと育て上げた青森山田高校の黒田剛監督にロングインタビューを行いました。

全4回でお送りするインタビュー。前回は冒頭でサカイクが提唱している、サッカーを通して身につけることができる「考える力」「チャレンジする力」「感謝する力」「コミュニケーション力」「リーダーシップ力」など人生で必要な5つのライフスキルについてなどもお伺いしましたが、第2回目となる今回は、OBの柴崎岳選手らのエピソードが飛び出します。

(取材・文:鈴木智之)

<<前回:どんなに正論を語っても、相手に聞く耳が無ければ何も伝えてないのと同じ。選手に届く指示の出し方

■夢を実現するための道筋が見えているか

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青森山田高校出身の柴崎岳選手(左)と室屋成選手(中) 二人に共通する性格とは...... (C)新井賢一

――自著の中で「夢を持って青森山田に入ってくる子どもは多いが、夢を叶えるために必要な本当の苦悩を見ようとしない子が多い」ということを書いていましたが、そのような子に対して、どんなアプローチをしていますか?

根本的に良くない風潮は、漠然と大きな夢を語ること。「夢は見るものではなくて叶えるもの」などと無責任に言うサッカー経験者も多くいますが、決してそんな軽いものではないと思います。「自分の夢はプロサッカー選手になることです」とは言うけど、夢を叶えるための思考や努力、覚悟がない子が多すぎるのではないかと感じています。日々の鍛錬はもちろんのこと、いろいろなものを犠牲にしてまでやりきる覚悟があるか、どんなことがあっても継続することができるか。長い年月をかけて一つひとつのステージ目標をクリアしていった先に、夢は見えてくるものす。「夢を叶える」とは言うものの、そんな努力もせずに、行動が伴わない子は多いと思います。目標をクリアするために重要なことは、いかに自分のウィークポイントと向き合えるか、そして具体的かつ根拠をもって課題克服までをイメージし、いつまでに何をするのかというタスクを確実に落とし込んでいくことでしょう。

 

――青森山田は本州の端に位置する青森にあるので、越境入学して来る子は覚悟があるように思えますが、そうではないと?

現在では飛行機や新幹線を使えば、東京から青森はあっという間です。かつては道路が整備されていなかったので、決意を持って夜行バスや夜行列車で来るみたいな子もいましたが、今は交通機関が便利になったぶん、ハングリーさは徐々に失われているように感じます。保護者も関東や関西からでも、すぐに来ることができます。「夢を叶えるため」「意図する結果を残すため」には「人よりも抜きんでたハングリー精神」が必要で、保護者も「青森山田でサッカーをすると決心したのなら、3年間は帰ってくるな!」と、それくらいのスタンスで送り出せばいいと思うんです。うちからプロになって活躍している選手の親は、だいたいそのようなスタンスで、一度預けたら一切介入はしてきません。柴崎岳の親もそうです。預けた環境、指導者、我が子に対し、信じる「勇気」と「覚悟」をもっている。子供は親のそんな姿勢をよく見ているものです。親は子の「鏡」ですから。

 

――柴崎選手は中学3年生のときに高校のトップチームで試合に出ていました。ともすれば周囲が勘違いしてしまいがちですが、そうではなかったのですか?

岳の親御さんからは、預かる時、彼がまだ小学6年生当時に「プロにしてください!」と言われたので「わかりました!」と言ったことはありましたが、それ以降は一切何も言ってくることはありませんでした。とても誠実、友好的で、いまでもプレミアリーグの試合をうちのグラウンドに観に来て応援してくれることもあります。あらゆる選手や、その保護者と接してきましたが、確実に言えることは、決して親が手を貸すのではなく「自分で選んだ人生なんだから後悔のないよう責任もって臨みなさい!」と突き放して送り出された選手の方が確実に伸びていますね。

 

■失敗からリスクマネジメントを学ぶ

――親は子どもを失敗させたくないですよね。一度失敗したら、正規ルートに戻れないんじゃないかという、親自身の不安もあります。そのため、「子どもに大きな失敗をさせたくない」という気持ちになる部分もあるのではないでしょうか?

失敗に慣れろとは言いませんが、たとえば一度失敗をしたとして、その経験から「二度と失敗したくない」というモチベーションに変わっていくことが大切だと思います。失敗や敗戦には必ず原因があります。チャレンジした者にしかこの経験や感覚、反省は生まれません。結果的に、一度も失敗をしたことが無い人よりも、失敗や挫折した経験のある人が、リーダーになった時にリスクマネジメントをしっかりと実践できるんだと思います。

 

――最近は自己主張をしたがらない、いわゆるリーダー気質の子が減ってきていると言われています。その中で、どうやって責任感や当事者意識を持たせればいいのでしょうか?

たしかに、子どもたちの気質は変化してきていると感じます。スマホや携帯ゲームがなかったころは、公園や川や海で遊んで、そのグループの中から自然とリーダーが生まれてきました。でも今は個人で楽しく遊べるものばかりが普及し、公園で集まっても各々が携帯ゲームをやっている。そういう時代になってきたので、リーダーが出なくなるのは必然ですよね。我々は指導者として、その現実を踏まえた上で策を練らなければいけません。サッカーでいうと、チームの中で仲間同士の競争意識を煽って成長を促すこともあれば、許せる範囲の理不尽さや、我慢や辛抱をあえて与え「チームの絆」をより深めるさせるよう働きかける必要はあると思っています。その理由や意図を具体的に説明し理解させることで、自発的に動きだす選手が多く現れてきます。チームみんなで頑張って乗り越えてきたという経験は、ハングリー精神やリーダー性を育むことにつながるのではないかと思っています。

 

■柴崎には「少し休もうぜ」と言った

――青森山田には、毎年注目される選手がいますが、天狗になるようなことは?

それはないですね。うちは絶対に勘違いさせませんから(笑)。そういう選手に対しては、私だけじゃなくコーチも厳しいです。「お前、何を勘違いしてるんだ?」と言いますし。今は日本代表でもプレーするようになった柴崎(岳)や室屋(成)も、当時から勘違いするようなことは一切ありませんでした。彼らはサッカーが上手くなることに貪欲で、常に何かを得ようとしていました。何気ない会話も高校生と話している感じがしないくらい大人びていました。二人とも学べるものは何でも学びたいタイプの性格です。岳の高校時代のエピソードで、こっちは試合中に大声を出して疲れて、帰りのバスで少し寝ようかと思っているのに、発車して間もなく、私の隣に座って試合のビデオを再生して自分のプレーを見直すんです。しかもノートとペンも一緒に持ってきて、私にいちいちコメントを求めてくる(笑)。私もさすがに「岳、おまえ疲れてないの? 少し休もうぜ」と言ったぐらいです。

 

――成長に対するハングリー精神が凄まじいですね。

岳は歴代の他の選手と比べても別格ですね。今までああいう選手はいません。3年生になると、普通はバスの後ろの方に位置取り、のんびり友達と話をしたり、寝ながら移動したりするのですが、岳は前の方に座っていつも本を読んでいました。そのへんの中高生が興味を持つような遊びや会話にはあまり興味がないようでした。ゲームもやりません。ストイックで負けず嫌いなので、自分にできないものがあることが許せないようです。できないことに対して、果敢に取り組んでいる姿を見てきました。最初にプレーを見た小学6年生の時は、ボールを左足で扱えない、蹴れない、守備はサボる、好んで走らない選手でした。しかし、キラッと光る絶対的な能力に満ち溢れていたのも確実に見ることができました。視野の広さや判断力シュートやパスの精度は別格に優れていました。青森山田中学校に入学後は、自分の弱点を自己発見して、朝練で確実に克服、自己改善していっていました。私が朝の5時45分に学校に到着すると、その時点で彼は汗だくでしたから。とくに左足のキックを練習していましたね。得意なことを伸ばすのも良いですが、もっと上手になるためには今の自分に何が足りないかをきちんと分析して苦手なことを克服しようとする姿勢、それこそが伸びる選手が備えているスキルだと思います。

 

次回は指導者の言葉より効果的な「責任の持たせ方」についてお伝えしますのでお楽しみに。

<<前編:どんなに正論を語っても、相手に聞く耳が無ければ何も伝えてないのと同じ。選手に届く指示の出し方

 

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取材・文:鈴木智之

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