高校サッカー名門校における、選手のお父さんお母さんの立ち位置とはどういうものか。どの名将を持ってしても、選手の親と監督、スタッフとの関係性は、「きわめて重要」と異口同音する。では、実際に名門校の門を叩く選手の親とは、どのようなスタンスで子どもと接しているのだろうか。過去、選手権優勝1回、準優勝2回の実績を持ち、リオデジャネイロ五輪を目指すU-22日本代表FW浅野拓磨(広島)ら、多くのJリーガーを輩出した三重県の名門・四日市中央工の樋口士郎監督に話を聞いた。(取材・文・写真 安藤隆人)
■自立している子どもは、親が違う
「まず、伸びる選手の絶対条件は自立しているかどうかだと思います。目標を自分で設定して、そこから自己分析をして、いろいろな行動を起こし、結果が出たらそれを復習して、次の目標を設定する。当然、マッチ、トレーニング、マッチの繰り返しの中では、そのサイクルでうまく行かないことや、しんどい事が出てきます。その時に親がその選手にどう関われるか。そこで選手が環境や周りのせいにすることに同調してしまったり、親が『お前は頑張っているのにな』と言ってしまう。それでは選手が自分のことを変に正当化してしまい、不満を周りにぶつけるようになってしまいます。それでは伸びません。一番重要なのは、選手の自立に対して、我々スタッフと親御さんが情報を共有して促してあげること。そのためには我々もしっかりと選手たちに目を配らないと行けませんし、親御さんや学校の先生もこれを共有できれば、自ずと選手が伸びる環境になると思います」。
樋口監督が真っ先に口にした言葉が『自立』だ。中学までとは違い、高校サッカーは『大人への入り口』と言える。高校を卒業すれば、大学に行く者だけでなく、プロ選手になったり、就職したりする選手も存在する。子どもたちが社会に出て行く前に、いかにその準備をしっかりできるか。ただ単にサッカーがうまくなるだけでなく、人間教育と言う側面が高校サッカーにははっきりとあることを忘れてはならない。
「自立した選手の親御さんは、ある程度子どもたちに任せています。当然、経済的なバックアップや家庭でのサポートはありますが、一定の線を超えてくることはありません。そういうバランス感覚を持っているお父さんお母さんを持つ子どもは伸びます。決して過干渉ではなく、全面的に親から私たちに任せてもらえる環境が大事だと思います。任されたぼくらも、精一杯、選手と向き合わないといけません」。
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取材・文・写真 安藤隆人