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ドイツ人が「日本人は守備をしない」と言う理由

公開:2014年6月12日 更新:2014年7月 4日

キーワード:ドイツ指導育成

今季、ドイツ・ブンデスリーガでプレーする日本人選手は二桁に登ります。これはあくまでトップリーグの数字で、2部リーグ以下も含めるとかなりの数になると言えるでしょう。山下喬さんは『指導者の海外組』として、岡崎慎司選手が活躍するマインツを拠点に日本人留学生のサポートをするかたわら、マインツU12のコーチを務めています。岡崎慎司選手をはじめ、ドイツで活躍する日本人を知る山下氏に、日本人選手の可能性について話を聞きました。
 
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Photo by dmartinigirl Fall 2010 soccer
(取材・文/鈴木智之)
 
 

■ボールを奪いにいくか、プレーを遅らせるかの違い

――山下さんのドイツにおける具体的な活動を教えて下さい。
 
いまはコーチとコーディネーターの2つの仕事をしています。コーディネーターとしては、ユーロプラス・インターナショナルというサッカー留学業を行う会社のドイツ担当として、留学をしに来る選手のサポートをしています。指導者としては、マインツU12のコーチをしています。初めてドイツに来たのが2003年なので、今年で11年目になります。
 
――マインツU12を指導していて、日本との違いを感じる部分はありますか?
 
一番の違いはボディコンタクトの有無です。先日、U7の室内サッカーの大会を見に行ったのですが、子どもたちがガンガン身体をぶつけながらプレーしていました。もちろん転ぶこともありますが、一目見て、日本の子どもたちがやっているサッカーとは違うと感じました。監督やコーチが「身体をぶつけろ」と言っているわけではないのですが、前提として『サッカーはボディコンタクトをするスポーツなんだ』という意識があるようです。ブンデスリーガを見ていても、ボディコンタクトが多いですよね。守備の時でも、相手を遅らせる(ディレイ)ことよりも、ボールを奪う意識が高いと感じました。マインツでプレーする岡崎選手のプレーを見ても、相手に体を預けてキープしたり、競り合いのときに先に身体をぶつけるなど、ドイツに来た当初に比べて変化してきていますよね。ドイツにいたら、コンタクトプレーは避けて通ることができないのです。
 
――相手に身体を当ててプレーする部分は、日本の選手はそれほど得意ではありません。ドイツでチャレンジする日本人留学生は、どのようにして克服しているのでしょうか?
 
それは私も一番気にしているところで、まず日本人とドイツ人との間にある、守備についての考え方の違いを理解する必要があります。日本人の留学生をいくつかのチームに連れていきテストを受けさせるのですが、よく言われるのが「日本人は守備をしない」と。どういうことかというと、日本人選手の多くはボールを奪いにいく守備ではなく、プレーを遅らせる守備を選択する傾向にあります。まずは抜かれないように相手に寄せにいって、仮にパスを出されても縦に決定的なボールを入れられなければOKです。しかしドイツ人からすると、守備とはボールを奪いにいく行為なんです。ですから「守備をする」と一言に言っても日本人とドイツ人の感覚は違います。ただ、ドイツ人はボールに対して一発で寄せにいくので、日本の感覚からすると「守備が軽い」と取ることができます。日本とドイツのどちらがいいか悪いではなく、ボールを奪いにいくプレーも、遅らせるプレーも両方できた方がいいですよね。そして、ドイツでプレーしていくのなら、ドイツ人の価値観に沿ったプレーをする必要があります。
 
 

■ドイツ人の1対1に対する価値観『ツバイカンプフ(格闘)』

――ドイツでプレーする選手に話を聞くと、監督やチームメイト、サポーターからはとにかく「1対1で勝たないとダメだ」と言われるそうです。
 
ドイツ人は1対1のプレーに対して、強いこだわりを持っています。ブンデスリーガのテレビ放送では球際の勝率データが出るのですが、これはドイツ特有のものだと思います。1対1はドイツ語で『ツバイカンプフ』と言うのですが、直訳すると『格闘』という意味なんですね。僕が指導をするときに、選手たちに言うのは、『逃げてはいけない』です。相手が体で来るならこっちも体で対応する。それに打ち勝たないといけません。そこはメンタルも影響してくると思います。
 
――マインツU12では、どのようなトレーニングをしているのでしょうか?
 
練習は週に3回、17時~18時半までの1時間半です。週末には試合があります。ドイツのU12は9人制です。ちなみにU10以下は7人制です。いつから9人制になったのかは正確には覚えていませんが、ここ数年のことだと思います。練習の内容はチームの育成部が中心となり、年間の指導カリキュラムが決まっています。たとえば、今月のテーマはロングボール、翌月はヘディングというように分けられていて、基本的にはそれに沿って練習を行います。各年代において、最低限これはできていないといけないという基準があります。ドリブルやパスなど、基本的なドリルをすることもあります。
 
――ドイツからは近年、才能豊かな若手選手がたくさん出てきています。山下さんから見て、その理由はどこにあると思いますか?
 
ドイツから良い選手が出てくる理由は、育成システムにあると思います。多くの子どもがサッカーをする環境が整っていますし、才能のある子が見つかるとブンデスリーガのクラブへと送り込むシステムが確立されています。そこでは毎年のように選手の入れ替えがあり、戦いに勝ち残った選手が上のカテゴリーへと進むことができます。年が上がるに連れて選手のクオリティも高まっていきますし、うまくて強い選手たちと一緒にトレーニングをしているので、自然と上達していきますよね。育成システム、仕組みのすばらしさが、ドイツから若手選手が出てくる理由なのではないでしょうか。
 
 
日本人ボランチが、ドイツではサイドバックに回される理由>>
 
 
山下喬(やました・たかし)
ユーロプラス・インターナショナル所属。滝川第二高校を卒業後、プロ選手を目指してドイツへ渡る。マインツ等でプレーした後、現役を引退。引退後はドイツでの会社員生活を経て、留学事業会社のドイツ担当コーディネーターを務めるかたわら、マインツU12のコーチを担当している。
 

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取材・文/鈴木智之

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