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少人数でオープンスキルを高めるトレーニングの考え方と作り方

公開:2022年9月25日 更新:2022年10月17日

「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、筑波大学大学院でコーチングの研究を行い、指導を実践する内藤清志氏による「少人数でもできる、オープンスキルを高めるトレーニングの考え方と作り方」を公開中。

後編では「練習メニューの解説とトレーニングのポイント」を紹介したい。(文・鈴木智之)

(※COACH UNITED 2021年9月6日掲載記事より転載)

この内容を動画で詳しく見る

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トレーニングを作る時は「人数」「局面」「要素」の3つを意識する

内藤氏が提唱する「トレーニングメニューを考えるときの3つのポイント」。それが人数、局面、要素だ。人数とは、個人、グループ、チームによって変わり、局面は攻撃、守備、切り替えがある。要素は技術、フィジカル、状況判断から構成されている。

これらをもとに、プレーの構成要素(状況把握、判断、実行)が伴うトレーニングになっているかを考えるのだが、ポイントになるのが、1人称(自分)、2人称(自分と味方)、3人称(相手を含める)という発想だ。

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サッカーは自分と味方、相手がいるスポーツなので、その3つを含めた設定にすると、実際の試合に近いシチュエーションになる。

また、ゴール設定をどうするかも重要なのだが、技術の習得レベルや年代によっては難しいこともあるので、「2人称でできなければ1人称に戻るなどして、指導者がコントロールしていくことが望ましい」(内藤氏)という。

「トレーニングでは選手の現状を分析して把握し、こうなってほしいという姿を描きます。そのためにはこんな練習が必要だなと考え、テーマを1つにしぼります。そして1回のトレーニングあたり、練習メニューを2、3個設定します」

ここからは「2人組の対面パス」(グラウンダー)を例に説明していく。誰しも経験したことがある対面パスだが、内藤氏は「まずは技術の安定を目指して行いましょう」と話す。

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「体のどこにボールのどこが触れると、安定した状態ができるかを理解することがポイントです。試合では、前後左右にボールを運ぶことが求められます。そのための体の角度、ボールの置所を調整します。ここでは、ボール操作と身体操作の両方が必要です」

さらに「サッカーは陣取りゲーム」(内藤氏)という考えのもと、相手ゴール方向にボールを運び、陣地を取ることを目指す。そうすることで、得点できる可能性は上がる。

「相手の守備ラインを超えるために、なるべく前(相手ゴール方向)を見られるような、ボールの置所、体の向きを作りましょう。そうすることで有益な情報を得ることができます。そのため対面パスでは、後ろや斜め後ろからのボールを止めるパターンも実施します。ボールが安定すると、正確に広いエリアにボールを届けられるようになります」

局面における複数の選択肢を提示すると選手はプレーを整理しやすい

続く「2人組の対面パス(持ち出す)」では左右のゲートへボールを運び、1タッチで突破する動きを実施。そこに状況判断の要素を加えるには、ひし形にマーカーを置き、横の人が攻撃側にパスをし、そのパスの移動中に守備者が片方のゲートを遮断する。ボールを受けた選手は、空いているゲートをドリブルで通過する動きを加えていく。

「このときに起こるのが、ドリブルでゲートを通過できない(実行のエラー)ことです。その場合は判断を抜きにして、実行のみにフォーカスします(1人称に戻す)。またドリブルで相手がいる方に行ってしまう(判断のエラー)場合は、最初の横パスのボールをゆっくりにする(見る時間を与える→情報を処理する時間が増える)、あるいは手でボールを扱う(実行の難易度が下がる)などのルールにして、要素を変化させていきます」

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続く2対2のトレーニングでは、「ボール保持者と相手の状況を見て、どのように動くのか」という判断(戦術的思考力)と実行(技術力)にアプローチしていく。

「ボール保持者の安定具合を見て、近寄ってサポートするか、裏に抜けてパスを受けるかを考えます。認知(情報収集)では、オープンの位置をとったほうが味方・ボール・相手が見やすくなります。サッカーは陣取りゲームなので、相手の背後にボールを運ぶことを意識します」

そして「相手を攻略(突破)する3つの方法」を提示。それがスルーパス、ドリブル、ワンツーだ。このように方法を提示すると、選手は「3つの中から何を選べばいいか」という選択肢が生まれるので、プレーを整理しやすい。

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「最近は、子どもたちからも『観ることや判断が大事』という言葉を聞くことがありますが、どのような状況になるとプレーが難しくなるのか。いつ実行すればいいのか。いつ、誰が、どうしているときに、そのような現象が起きるのかを、サッカーに即した状況で経験させることがポイントです」

さらに、こう続ける。

「トレーニングにエリアや陣取りの要素を加えることで、判断に働きかけることができると同時に、ゲームに近づけることができます。そしてなにより、戦術的思考力と技術力をセットで行い、選手にもその2つを切り離して考えさせないようにしましょう。それがオープンスキル、つまり相手がいる中で技術を発揮することにつながります」

COACH UNITED ACADEMY動画では、トレーニングの様子も交えて説明しているので、ぜひ全容をご覧いただきたい。動画とセットで見ることで、さらに理解が深まるはずだ。

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【講師】内藤清志/
筑波大学を卒業後、同大学大学院に進学。それと同時に指導者を志し、筑波大学蹴球部でヘッドコーチなどを長く歴任。谷口彰悟や車屋紳太郎など日本代表選手を指導。その後、サッカースクール・ジュニアユース年代の指導を経験した後、現在は筑波大学大学院に戻り自身が所属するサッカーコーチング論研究室の研究活動の傍ら、サッカーの強化・育成・普及活動を行う。

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