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育成の名門、三菱養和サッカークラブに聞いたサッカー上達につながる「判断力」の身につけさせ方

公開:2020年2月 4日

キーワード:サッカーIQ三菱養和サッカースクール判断力判断力を高める状況判断考えて行動する自分で決める

東京都の伝統ある街クラブとして、長きに渡って優れた選手を輩出する、三菱養和サッカークラブ。今年度のU-12東京都大会では準優勝を収めるなどの結果を残すとともに、選手育成に定評があります。

技術と判断に優れた選手を育成する三菱養和サッカークラブでは、『判断力』についてどのようにとらえて、指導しているのでしょうか? 三菱養和サッカースクールの統括責任者を務める、秋庭武彦さんに聞きました。
(取材・文:鈴木智之 写真:新井賢一)

  

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「判断力を高める」ために大事なこととは

 

■子どもに判断力をつけさせるための第一歩とは

――サカイクには読者の方、とくに保護者から「子どもの判断力を高める方法を知りたい」という意見が多く届きます。三菱養和サッカースクールでは、判断力を高めるために、どのような働きかけをしていますか?

私たちは年度が始まる前の2月から3月にかけて、それぞれのカテゴリーで保護者会を開催しています。保護者の皆さんの前で1年間の活動方針や、理念をお話ししています。そこではサッカーの細かい話をしていても、すべてを理解していただくのは難しいと思うので、判断力に関してはサッカー外の、日常生活の部分について話をさせてもらっています。

 

――どのような話をされるのでしょうか?

日頃から、自分のことは自分でするという部分です。先程、「判断力を高めるために、どうすればいいですか?」というご質問がありましたが、日常生活から、子ども自身に判断させる場面を増やすような関わり方を、保護者の方にはお願いしています。自分のことを自分でするということは、その都度、判断や決断がありますよね。その判断、決断がうまくいかなければ、次はこうやってみようかなと、子ども自身が考えるわけです。その繰り返しによって、判断力や決断力が身についていくと思うので、サッカーの部分は我々コーチとの関わりの中で高めていくので、日常生活の部分では、「自分のことは自分でするようにしてください」とお願いしています。そのためには、親御さんの働きかけがとても大切です。

 

――とくにジュニア年代では、保護者が先回りしてなんでもしてしまい、子ども自身が判断して、決断する機会を奪ってしまうという話も聞きます。

年代によって関わり方は様々ですが、今までべったり関わっていたのであれば、少し距離を置いて、見守ってあげるのもひとつの方法だと思います。保護者会では「子どもたちに日常生活の中で小さな判断、決断をさせて、少しずつ責任を体験させることも大事ですよ」という話はさせてもらっています。それは学校での取り組みや、家庭の中で役割をもたせることなど、小さなことで良いと思います。チャレンジすることが大切で、サッカーにもつながる部分ですよね。

 

■上手いけど伸びない子は自分で決断できないことが多い

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選手たちだけで作戦会議。全体での意見の共有をしたうえで、自分で考えて決断するのが大事

 

――三菱養和サッカースクールはジュニアのスクールから始まり、小学5年生から選抜クラスになり、ジュニアユース、ユースと選抜されていきますが、上のカテゴリーまで進む選手の「判断力」はいかがでしょうか?

ボール扱いが上手なだけで終わってしまう選手、伸びていかない選手は、自分の意思や決断のもとに行動できていない選手とイコールなことがあります。サッカーはグラウンドの中で、自分で考えて決断することが大切なスポーツです。我々はたくさんの子どもを見てきましたが、ジュニアからジュニアユース、ユースと昇格して行く選手と、上げられなかった選手の違いを考えたときに、自分の意志で相手よりも先に動くことができたり、仲間に対して自分の気持ちを発信して、意見のキャッチボールをすることでチームの力になることのできる選手が、上のカテゴリーに進んでいくことが多いと感じています。つまり、そこがない選手は昇格するのが難しいと言えます。

 

――自分で考えて行動できる選手、チームのプラスになる行動ができる選手が、上のカテゴリーへと昇格していくのですね。

そうだと思います。もし、保護者の方がこの記事を読んでくださるのだとしたら、試合中の判断や決断に対して、もっとこうしたほうがいいんじゃないかと思ったり、ポジショニングや体の向きなど、サッカーの部分で気になることがあるかもしれませんが、まずは日常生活や行動の中で、「自分で考えて判断し、決断できているか」という部分に目を向けてほしいと思います。そこができるようになることで、グラウンドの中でも発揮できるのだと思います。

 

――そのような話を保護者にされると、子どもたちに変化は出てきますか?

時間はかかりますが、少しずつ変わっていきます。自分で考えて判断することは、保護者の方だけでなく、我々コーチングスタッフも日々、言い続けていることです。保護者の方も、家庭の中で「自分のことは自分でしなさい」と言ってくれているようで、試合の持ち物や家に帰ってからの洗濯も含めた片付けなどは、自分でやる子が増えています。夏休みには菅平高原で合宿をするのですが、親元を離れて過ごすことで「この子は家でも自分でやっているな」「まだできていないな」といったことがわかります。サッカーはグラウンドの中だけでの取り組みでは上手くはなりませんし、強い選手にもなれないと思っています。

 

■保護者はわが子だけでなくチーム全体を応援してほしい

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保護者もわが子だけでなくチーム全体を応援しましょう

 

――チームに対して、保護者はどのようなスタンスでいるのが望ましいと考えていますか?

保護者の方が関心を持って応援していただくのは、すごく良いことだと思います。指導者仲間や周りのクラブの方からは「養和って、一体感があるチームだよね」と言っていただくこともあります。保護者の方も近からず、遠からずのところで一緒になって応援してくれています。

 

――たしかに巣鴨のグラウンドは、応援も含めていい雰囲気です。

練習や試合を見る中で、コーチは子どもたちにどんな声かけをしているのかを聞いて、理解してもらうと良いのかなと思います。そして、自分の子どもだけでなく、チーム全体を応援してほしいですよね。日常生活の話で言うと、サッカーに注ぐ時間は1日のうち2時間ぐらいで、それ以外は家庭や学校にいるわけです。その中で子ども自身に考えさせたり、親としてはもどかしいかもしれないけど、見守ってあげるのは大事なのではないかと思います。

 

――コーチから「判断が悪い」と言われたときに、保護者はどうすればいいでしょうか?

アドバイスをするのであれば、「判断をするためには、ボールを持っていないときに周りを見ておくことが大切だよ」といった程度のことでいいと思います。どこをどのような基準で見るのかは、コーチが指導することです。ただし、良い判断をしても、技術的なミスをしてしまってはもったいないので、とくに年齢が下の子どもたちにとっては、まずはボールをたくさん触ること。ボールを止めて蹴ることについて、ストレスなくできるようになることが先決だと思います。それがあって、良い判断のもとにプレーできるようになるのが理想だと思います。

 

三菱養和サッカースクール
ヨーロッパ諸国のクラブをモデルとして創立した日本サッカーのパイオニア的サッカースクール。一貫指導システムによる、発育・発達に応じた練習内容で、段階的な育成を行っている。
U‐18年代は日本クラブユースサッカー選手権で優勝3回、準優勝7回、高円宮杯全日本ユース(U‐18)サッカー選手権大会(現高円宮杯 JFA U‐18サッカーリーグ)では3位が2回など輝かしい成績を残している。U‐18年代は高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグでプレーしており、2019シーズンは関東4位。

巣鴨と調布でサッカースクールを運営。小中学生年代でも多くの実績路残している。育成クラブとしての成績もさることながら、永井雄一郎、田中順也、加藤大、小川佳純、相馬勇紀、中村敬斗ら多くのJリーガーを輩出している。

三菱養和サッカースクールのクラス内容、カレンダーはこちら>>

 

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秋庭 武彦(あきば たけひこ)
1963年生まれ。東京出身。
1975年三菱養和スポーツスクール開設時小学6年生より高校1年生まで在籍。大学在籍中よりサッカースクール指導に携わり、それ以来30年間三菱養和一筋。2016年より、サッカースクール統括責任者を務める。
日本サッカー協会公認S級ライセンス

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取材・文:鈴木智之 写真:新井賢一

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