テクニック

2019年10月11日

ボールを奪われない置き所と身体の使い方/川崎フロンターレU-10がこだわる「運ぶドリブル」のトレーニング

高いテクニックをベースとした攻撃サッカーを展開し、2年連続でJリーグチャンピオンに輝いた川崎フロンターレ。三好康児や板倉滉、宮代大聖など、アカデミーから多くの選手が巣立っており、育成手腕は誰もが認めるところだ。

フロンターレが魅せるスキルフルなサッカーをするために、ジュニア年代ではどのようなトレーニングを行っているのだろうか? U-10の冨田幸嗣コーチに「試合でマイボールを失わないための個でボールを運ぶトレーニング」を紹介してもらった。(文・鈴木智之)

(※COACH UNITED 2019年8月26日掲載記事より転載)

この内容を動画で詳しく見る

次回の記事を読む >>

運ぶドリブルの目的はマークを剥がすなど変化を生むこと

COACH UNITED ACADEMY動画、前編のテーマは「ボールの置き所と身体の使い方の習得」。 川崎フロンターレはトップチーム以下、ボールを止める・蹴るを大事にしており、冨田コーチは「U-10では、ボールを運ぶ練習にこだわっています。ボールを運べる技術を身に付けることが止める・蹴るといったサッカーに必要な技術につながっていきます」と話す。

「ボールを持つ、運ぶと言っても全員をドリブラーにするわけではなく、長い距離を運ぶ、短い距離を運ぶ、ファーストタッチで相手をずらすなど、ドリブルで変化を生むことを運ぶと捉えています。ボールを運ぶ中で相手の変化、スペースの変化などを見つけて、相手の弱いところを有効的に使いながら、スムーズに攻撃ができるところを見ていただければと思います」

最初のトレーニングは「コーンドリブル(インサイド)」。左右に置いてあるコーンの前に斜めのドリブルで入って行き、コーンの前でターンをして方向を変えることを繰り返していく。

ここではボールの置き所とターンする際の体の動きに意識を向け、「動きのスムーズさを大事にしよう」(冨田コーチ)という声が飛んでいた。インサイドターンの次は、アウトサイドターンを実施。冨田コーチは「失敗しても OK 。うまくできるんだったら、この練習はやっていないから。できないからやっているんだよ」とチャレンジを促し、前向きな声をかけていく。最後はインサイドとアウトサイドの両方を使い、2分間トライ。「失敗するレベルのスピード、できるかできないか、ギリギリのところでやろう」とアドバイスを送っていた。

続いての練習は「グリッドドリブル」。

正方形のグリッドの中にコーンをランダムに倒して置き、その中を選手がドリブルで進んでいく。ドリブルをする選手は他の人とぶつからないように、周囲を見ながらドリブルをするのがポイント。時折、グリッドの外側に入るフリーマンの選手にパスを出し、ワンツーなどを取り入れていく。

冨田コーチは「ボールの置き所を増やすこと。360度を見ること。その中でアイデアをどんどん出していこう」と声をかけ、トレーニングが始まった。ポイントとしては、相手(敵)はいないが、試合の状況を想定し、相手がいると考えてドリブルをすること。グリッドの外の選手に対しては、ただパスを待つのではなく、グリッド内でドリブルをしている選手の名前を呼び、ボールを引き出すことを意識付けしていた。

ボール保持時の数的不利な状況はドリブルで「相手の逆を取る」

次の「1対4」では、対人の要素が加わり、実戦へと近づいていく。グリッドの中央でパスを受けた選手が4人のプレスをかわし、グリッドの外に出たら勝ちというルールだ。

守備側はボールを奪い、パスをダイレクトで4本つなぐと勝ちになるので、攻守の切り替えのスピードも求められる。「ボールを取られないのが一番だけど、取られた後にすぐ切り替えて守備に入ろう。パス4本分は絶対に追うこと」と指示が飛んでいた。

冨田コーチからは、選手に対して「このトレーニングで大事なことは?」などの質問が頻繁に行われていく。そのたびに選手たちからは「相手の逆を取る」など、ポイントを抑えた声が返ってくる。U-10の選手であっても、日々のトレーニングと意識付けで身につく部分であり、日頃の指導の賜物だと感じる場面だった。

前編最後のトレーニングは「1対4+1サーバー」。先程のシチュエーションに、サーバーが加わる。サーバーへのパスを匂わせることで、守備の選手をかく乱することができる。パスを受ける前の身体の向きや、サーバーを見ることで目線のフェイントにも使えることなど、プレーの幅が広がる部分は参考になるだろう。

冨田コーチは、前編のトレーニングを次のように総括した。

「最初のコーンドリブルは、ボールと体を操ることに重点を置いています。ボールを操るだけでなく、体重移動のスムーズさ、技術のスムーズさがスピードを生むことを体で覚えてほしいと思っています。グリッドドリブルでは、360度プレーができるように、足元の色々な場所にボールを置くことを念頭に行いました。その後の1対4では数的不利の中で、相手の矢印を意図的に操ること、相手が来ると思わない方向にプレーすることなど、フロンターレのサッカーで必要とされる要素をトレーニングしました」

後編では、前編を踏まえて、実践に近いトレーニングを行っていく。

次回の記事を読む >>

この内容を動画で詳しく見る

【講師】冨田幸嗣/
川崎フロンターレU-10コーチ。選手時代は川崎フロンターレU-15、U-18でプレー。その後、川崎フロンターレのスクールコーチなどを経て、2014年からU-10のコーチを務めている。

1

関連する連載記事

関連記事一覧へ

関連記事

関連記事一覧へ