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コロナで大会中止、頭で理解しても気持ちがついていかない時の子どもへの接し方

公開:2020年5月27日

キーワード:しつもんメンタルトレーニングインターハイコロナ大会中止探究心気持ちの整理甲子園目標藤代圭一

全国的に緊急事態宣言が解除され、プロスポーツなどの再開のニュースも報じられています。

しかしながら、インターハイや甲子園を始めとする学生の大会は、新型コロナウイルスの影響で、軒並み中止になっています。中には地域でなんとか代替の舞台を用意しようと動きかけている分野もありますが、全ての都道府県で実施されるかは不明で、このまま引退となる選手もいることと思われます。

このような事態で、大人の立場からすると「仕方がないから、切り替えて頑張ろう」というメッセージを送ってしまいがちですが、しつもんメンタルトレーニングの藤代圭一さんは「物事は、そう簡単に割り切れないこともあります。それは決して、悪いことではありません」と、アドバイスを送ります。

なんらかの事態により目指していた大会が中止になったり、出られなくなることは小学生年代でも起こり得ることなので、そんな時親としてどうしたらいいかの参考にしてください。

(取材・文:鈴木智之)

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写真は少年サッカーのイメージです

 

 

頭で分かっていても感情がついていかないこともある

「大人はたくさんの経験をしていて、先が見えていることも多いので、切り替えて次に行こうと言ってしまいがちです。でも、そう簡単に割り切れないこともあると思うんです。そこを出発点にすると、アプローチの仕方も変わってきます

勉強、運動、ダイエット...。大人でも、したほうがいいのは頭ではわかっているけど、感情がついていかず、行動に移せないことが多々あります。

「ネガティブな感情にふたをして、見て見ぬ振りをすると、その場はやり過ごせるかもしれませんが、原因の根本的な解決にはなっていないので、どこか鎖につながれたままの状態になってしまいます。好きな人に告白して振られたからといって、割り切ってすぐ次にはいけませんよね(笑)。それと同じです」

たしかに、すぐに切り替えて、次の目標に進むことができたら楽ですが、そう簡単に折り合いがつくものでもありません。

「不安や恐れは、僕たち人間の中にあるものです。でもスポーツをしていると、その気持ちを持ってはいけないという指導を受けている選手が多いと思います。その結果、『不安や恐れを感じてしまう自分はダメなんだ』と、自己否定につながることもあります」

藤代さんは、ひとつの例をあげます。

人間は感情の生き物です。ハーバード大学の意思決定センターの研究によると、感情は12個に大別されていて、うれしい、楽しいだけでなく、恐怖心や罪の意識など、様々な感情を味わうことが"人として生きる"ということだと考えられているそうです。なので、ネガティブな感情を持つことは、決して悪いことではありません。大切なのは、その感情を認めた上で、どう考えて、行動するか。スポーツには、そこに働きかける力があると思います」

自分より屈強な相手試合をするときに、恐れを感じることもあると思います。だけど、立ち向かって行くしかありません。自分が置かれた環境を見極めて、最高の結果を出すために行動を起こす。それは、スポーツをする中で自然と育まれていく力です。

「スポーツ選手は、普段のトレーニングを通じて、積み重ねる力を身につけていると思います。目標を達成するために、なにをするべきかという考えを一人ひとりが持っています。いまは大会が軒並み中止になり、目標を見失っている人も多いと思いますが、積み重ねることの大切さに、いま一度目を向けてみると良いと思います」

 

「今日はどんな一日だった?」日々の積み上げが次の目標につながることを意識させる

保護者の立場で、スポーツをするお子さんをサポートするために、どのよう心がけると良いのでしょうか? 藤代さんは「1日ベースで振り返りをするのが良いと思います」とアドバイスを送ります。

「自粛期間中、お子さんが家でダラダラしている姿が目につくご家庭もあるかもしれませんが(笑)、そんなときは『今日はどんな一日だった?』というしつもんをしてみてはいかがでしょうか。すると子どもは『なにもないよ』などと言うと思いますが、『じゃあ明日はどんな一日にする?』といった会話を繰り返す中で、日々の積み重ねが、次の目標や大会につながっていくんだと、認識する機会をつくることが大切だと思います」

さらに、こう続けます。

焦りは情報からやってくることもあります。テレビやスマートフォンをずっと見ていると、様々な情報が入ってきます。情報から距離を置くことも時には大切で、今日という時間をどう過ごしたいか。家族で話しあってみてください。そうすることで、『今日はどんな一日だった?』というしつもんも、押しつけにならなくなると思います」

しつもんが「押し付け」にならないこと。これがポイントのようです。

「『今日はどんな一日だった?』というフラットな質問も、関係性や状況によっては『今日は何もしなかったね』という指摘が裏側に潜んでいるのではないかと受け止める子もいます。それをできるだけなくすためには、まずは僕たち大人が余裕を取り戻すこと。『この状況を楽しむためには、どうすればいいのだろう?』『そもそも、自分はどうなりたかったんだっけ?』と自分にしつもんをして、考えを深めていくことで、現状を冷静に、客観的に見ることができるようになっていきます」

どうすれば、突然できた空白の時間をうまく生かすことができるか? そこに目を向けることが、活動が再開されたときに、より良い自分になるためのひとつの方法のようです。

「僕の友人におもしろい家族がいて、自粛期間中に家族全員が一人ずつ、何かを研究・探求すると決めて、家庭内で発表しあっていました。何がしたいかを突き詰めることができる時間でもあると思うので、お子さんが探求したいテーマを、一緒に見つけてあげるのも良いかもしれません」

 

制約がある中で課題を発見して解決していくのがスポーツ

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写真は少年サッカーのイメージです

 

藤代さんは、そう言ってひとつ例をあげます。

「自分の好きな選手は、どういうストーリーを辿ってプロになったのか。どういう考えのもとに努力を積み重ねてきたのかなど、動画でプレーを見て参考にするだけでなく、普段は目を向けなかった部分にも注目してみてほしいです。その視点で考えると、スポーツから学べることはたくさんあると思います」

最後に、こんなメッセージを送ってくれました。

ルールという制約がある中で課題を発見して、解決していくのがスポーツです。スポーツに取り組んでいる人は、いまのような時期に力を発揮できると思っています。みんなでがんばりましょう!」

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藤代圭一(ふじしろ・けいいち)
スポーツメンタルコーチ
スポーツスクールのコーチとして活動後、教えるのではなく問いかけることで子どものやる気を引き出し、考える力を育む「しつもんメンタルトレーニング」を考案。全国優勝を目指す様々な年代のチームから地域で1勝を目指すチームまでスポーツジャンルを問わずメンタルコーチを務める。全国各地でワークショップを開催し、スポーツ指導者、保護者、教育関係者から「子どもたちが変わった」と高い評価を得ている。2016年からは「1人でも多くの子どもたち・選手が、その子らしく輝く世の中を目指して」というビジョンを掲げ、全国にインストラクターを養成している。著書に「子どものやる気を引き出す7つのしつもん」(旬報社)などがある。

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取材・文:鈴木智之

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