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サッカー豆知識

子どもたちが楽しいと思えないトレーニングは何時間やっても意味がない! イタリア街クラブの育成大家が語る少年サッカー指導の極意

公開:2019年9月 4日

キーワード:W杯アンジェロイタリアカルチョの休日トレーニングワールドカップ指導者練習

■楽しいと思えないトレーニングは何百時間やっても意味がない

――「最も大切なこと」とは?
アンジェロ:もちろんそれは数えきれないほどあるのでしょうが、私が最も大切にしているのは「とにかく思いっ切り遊ぶ」ということですね。トレーニングではなく、あくまでも遊び。

グラウンドへ来るのが楽しみで仕方ない、仲間達と一緒にボールを蹴る時間が終わってほしくないと、そんなふうに子ども達が思えないようならばその「トレーニング」は何百時間やっても意味がない。むしろ無益にして有害と言うべきでしょう。

例えばの話、カラーコーンを並べてのジグザクのドリブル練習に一体どんな意味が? ゴール前に立つ監督に縦パスを当てて、そのリターンを受けてフリーで打つシュートに一体どんな意味が?

いずれの場合も答えは「無意味」。時間の無駄でしかない。そんな練習を何万回やっても試合で使える技術を培うことは絶対にできないからです。

そんな時間があるのなら遊び、すなわち「ゲーム(試合)」をやらせた方が遥かに有益です。ゲームの中でこそ子ども達はトラップを、コントロールやフェイント、ドリブルやパス、シュートといった使える技を相手のプレッシャーがかかる状況下でやるからこそ習得していきます。それに転ぶことや走るスピードの強弱の付け方やジャンプや方向転換といった類の体の使い方、つまり身体能力を高めることもゲームの中でこそ子どもらは自然と身につけていくのです。

かつてのように路地でボールを蹴ることができなくなった現代社会において、小さな子ども達に何をどうやって教えるべきか。

とりわけここ十数年の間、指導者に求められる資質は大きく変化してきているのですから、より良い指導法が何であるのかを私たちは常に模索しながら最適な答えを見出そうと努力を重ねています。もちろん、繰り返しになりますが、そんな指導者は決して少なくはない。むしろ無数にいる。

そして、特に「ロナウジーニョの出現」を境にサッカーの質が大きく変化したなか、子ども達に模範を示す義務を負う指導者に求められる技術レベルも当然のことながら上がっているのですから、それをできない指導者達が淘汰される現実もあります。

 

――相対的に子ども達のボールを扱う技術が高くなっている一方で、だからこそ、例えば先ほど名前の出たマリオ・ファチェンダ(元ジェノア、フィオレンティーナ選手)のような指導者の存在がさらに重要となるのでしょうか。

アンジェロ:そう、何と言っても彼は現役時代にあのロベルト・バッジョと共にプレーし、あのディエゴ・マラドーナをマークしたディフェンダーですからね。特に1対1における守備に何が必要かを知り抜いている。つまり、そんな彼に指導されたディフェンダー達と対峙することによって、攻撃側の子ども達もまたさらにその技術を磨くことができる。だからこそゲームが持つ意味を私たちは大切にしているのです。

そして、次に大切なのが、私たち指導者こそが楽しむこと。練習を終えて帰路につきながら、「今日も楽しかったなぁ」と思えなくなれば指導者を辞める。これを信念として今日まで私はグラウントに立ち続けてきました。さらに、とりわけU12以下の子ども達の試合で私は決して勝敗にこだわらない。一生懸命やったかどうか、その試合を心の底から楽しむことができたかどうかこそが唯一にして最も大切であって、日々の練習も含めて1日に3つ良いことがあればもうそれで十分。昨日までできなかったプレーをできるようになる時、その瞬間の子ども達の目の輝きと笑顔を目にしたくて私は今日もグラウンドへ向かうのです。

 

――その指導を間近で見た一人ですから私も知っているのですが、練習でも試合でも監督は絶対にネガティブなことを言わないですね。「今のはパスすべきだろ!」という類の言葉も監督の口から聞いたことがありません。
アンジェロ:難しい場面、判断に迷う場面こそがサッカーで一番おもしろいのですから、そうした一つひとつの局面で子ども達がどういう答えを見出すことができるのか、そこを見守ってあげればいい。自由にプレーできなければそもそもサッカーする意味がない。なるほどそういう判断をこの子はするのか、というように、子ども達の自由な発想を目にするのが監督として最大の喜びなのですから、ああしろこうしろと試合中に監督が指示すること自体が私には理解できません。

もっとも、そんな監督だからこそ私は36年にも渡って指導しているというのにこれといったタイトルを何ら手にできていないのですが......(笑)。でも、この「無冠の監督」である自らを私は誇りに思っているのです。

 

■上のカテゴリーに行けるか、プロになれるかどうかなんて重要じゃない

――さらにもう一つ、アンジェロ・カステッラーニ監督といえば、その名アンジェロ(=エンジェル 天使、の意)から、「天使の金曜日」がある。それがどういう意味なのか説明してくれますか?

アンジェロ:いつからか子ども達が自然とそう呼ぶようになったんですけどね、しかしやはり自分で言うのはかなり恥ずかしいのですが......(笑)

要するに、その天使の金曜日というのは言わば「補修授業」のようなもので、週2日の練習に出なければ週末のリーグ戦に出場できないというルールがあるなかで、でも病気だったり学校の勉強が忙しかったりで1日の練習を休まざるを得ない子ども達が少なくはないのが現実ですから、だったらそんな子ども達に「来れるようなら金曜日にグラウンドへおいで」と言うようになって、その金曜日を試合に出るための練習としてカウントするよう全カテゴリーの監督たちに認めさせたわけです。

なのでその金曜日のグラウンドには下は5、6歳から上は17、18歳の子ども達まで来る。そして、小さな子ども達からすれば憧れの存在でもある上手なお兄ちゃん達に遊んでもらえるし、お兄ちゃん達からしても可愛い弟のようなチビッコ達と一緒に遊べる時間になりますので、そこには文字通り「最高に楽しいサッカー」があるということになるのです。もっとも、ここでもやはり一番楽しんでいるのは他ならぬ私自身なのでしょうが(笑)

例えば16歳の子が6歳の子どもにとって最も受けやすいパスを通してあげるのは決して簡単ではないですから、とても有意義な練習になるんです。それこそ公園や広場でやる草サッカーと同じですね。大きな子達はチビッ子を思いやり、チビッ子達は大きなお兄ちゃんに負けないよう必死に頑張るという、あの理想的な構図が私の指導する金曜日にはある。そして、そのおかげでリーグ戦に出場する権利を得られるということで、子ども達が天使の金曜日と呼んでくれるようになったんですよ。

 

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テキスト構成・文:宮崎隆司

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