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サッカー豆知識

子どもたちが楽しいと思えないトレーニングは何時間やっても意味がない! イタリア街クラブの育成大家が語る少年サッカー指導の極意

公開:2019年9月 4日

キーワード:W杯アンジェロイタリアカルチョの休日トレーニングワールドカップ指導者練習

朝練なし、居残り練習なし、ダメ出しコーチングなし、高額な活動費なし。蹴球3日でグングン伸びる。カルチョの国の少年たちと日本の育成現場は何が違うのかを紹介した「カルチョの休日 -イタリアのサッカー少年は蹴球3日でグングン伸びる-」の作者、宮崎隆司さんによる特別コラム。

子どもたちの可能性を伸ばすきっかけ、それはきっと最先端の育成理論の中だけではなく、何気なく見ている光景の中にちりばめられているもの。サッカーにおける「育成」とは何か。その本当の意味を見つけ出すヒントがちりばめられています。イタリア在住20年、これまで現場で見てきた、日本のように豊かな国で生きる子どもたちとの日常の違い、子どもたちのサッカーを取り巻く悲喜こもごもを感じてください。

今回は、「カルチョの休日」にも登場する街クラブの育成の大家、アンジェロ・カステッラーニさんの育成論をお送りします。「子どもたちが楽しいと思えないトレーニングは何時間やっても意味がない」というアンジェロさんが指導で心掛けていることをご覧ください。(全3ページ)
(テキスト構成・文:宮崎隆司 取材日:2017年11月23日、27日)

 

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アンジェロ・カステッラーニさん(後列右)とチームの子どもたち

 

■「勝つときもあれば負ける時もある」大人がまず結果を受け入れなければいけない

――イタリア代表がワールドカップ(W杯)出場を逃したあの日(2017年11月13日)から丁度10日が経ったのですが、国内ではなおもいわゆる戦犯探しが続き、大新聞やテレビ・ラジオなど主要メディアが率先する形でイタリアサッカーを全否定するかのような報道が続いています。W杯を4度も制した国が実に60年振りにその出場権を逃すというのは確かに重大なニュースであり、今回のプレイオフ(対スウェーデン)に敗れた代表が内部に極めて深刻な問題を抱えていたのは紛れもない事実ですが

アンジェロ・カステッラーニ(以下、アンジェロ):しかしこの国のサッカー界すべてを否定するのは明確な誤りであって、それこそ末端にいる私たちのような指導者からすれば、今日の国内に氾濫する否定的な報道の大半は実際の現場を知らない者達が単に商売のネタをばら撒いているに過ぎないとしか言い様がありません。なぜなら、例えば今から11年前と今日を比較した場合、この国のサッカー界全体のあり方に特別な変化は何一つとしてないからです。11年前にイタリアは世界を制し、ところが今回は残念ながらプレイオフで敗れた。それだけの話。勝つときもあれば負けるときもある。それが勝負の鉄則である以上、小さな子ども達を指導する私達こそがまずはこの結果を潔く受け容れなければならない。

もちろん、自分たちの国の代表がW杯に出場できない現実を前にして涙を流す子ども達を見るのは本当に辛いのですが。でもだからこそ、そんな彼らを抱きしめて頭を撫でてあげながら私はこんな風に言うのです。

「この悔しさを忘れるんじゃないぞ。そしていつか君たちが大きくなってから勝ってみせればいいじゃないか」。

もちろん、私が指導しているのはまだ5~7歳といった幼い子ども達ですから、すぐに涙を止めてあげることはできないのですが...。

 

――11年前と今日を比較しても「この国のサッカー界全体のあり方に特別な変化は何一つとしてない」
と育成の現場に長く立ち続けてきた監督が語る一方、繰り返しになりますが、主要メディアは「抜本的な改革の必要性」を声高に主張し続けている。このまったく相反する見解の果たしてどちらが正しいのでしょうか。

アンジェロ:確かに、例えば協会やリーグの組織としての構図であったり、ある一定数の指導者たちが今日もなお過度な勝利至上主義にとらわれているからこそ派生する問題であったり、若い選手たちをあたかも単に金儲けの道具としか考えていないような者達が少なくはないとの現実が横たわっているなど、他にもいくつかの正すべき点があるのは事実です。

ですが、言ってしまえば、そんな類の問題を抱えているのは何も私たちの国だけではないわけで、それこそこの種の問題は11年前にもその前にも同じように存在していたのですから、今日の現実を前に突如として「抜本的な改革を」と叫ぶ者達の姿はおよそ滑稽だと言わなければならないでしょう。

私たちは長年に渡って「この種の問題」と戦い続けているからこそ、その解決がいかに難しいことであるかも知り抜いています。清濁併せ吞む必要があることも当然のことながら知っている。だからこそ私は非力ながらも子ども達に「最も大切なこと」が何であるかを机上ではなくグラウンドで伝え続けているのです。

もちろん、私が指導するのはフィレンツェにある一つの小さな町クラブに過ぎないのですから、この国のサッカー界全体に及ぼす影響力など欠片のほどもないのですが、例えば同じくここフィレンツェにステファノ・マンネッリ(現U16トスカーナ州代表監督)やマリオ・ファチェンダ(元フィオレンティーナ選手)といった育成に生涯を捧げる指導者が無数にいるように、北のベルガモやミラノにも、もちろん南のローマやナポリにも数多く同様に優秀な、それこそサッカーを愛してやまない監督達が日々の指導を懸命に行なっている事実を知るからこそ、これからも長く私たちの国でサッカーが生き続けていくと強く信じることができるのです。当然、勝ったり負けたりを繰り返しながら。

大切なのは続けていくこと。ボールを蹴り続けていくこと。無心でボールを追う子ども達を私たち指導者が温かく支え続けていくこと。そして、指導者たちが心を込めて「最も大切なこと」を子ども達に伝え続けていくことだと思っています。

 

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テキスト構成・文:宮崎隆司

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