サッカー豆知識
【第3回】「知ってます?世界のサッカー常識」- 世界4大リーグの基礎知識
公開:2010年12月 6日 更新:2013年8月14日
■おさらい的常識「世界4大リーグ 攻守の哲学」
このコーナーでは毎回、知っていそうでいなかった世界のサッカー事情について、ランダムにとりあげます。世界各国で様々に楽しまれているサッカーというスポーツの奥深さを感じるような話題、子どもとの会話のネタになるような話題を数多くセレクトしていく予定です。
第三回目は今さらちょっと人に聞きづらい、世界4大サッカーリーグにみる戦い方の傾向、勝利を目指す哲学の違い、に着目します。ワールドカップでも容易に理解できる通り、世界各国のサッカーの戦い方には明確な差異が見られます。これは主に、その国の必然から生まれたもの、つまり国民性からくるものであると言えるでしょう。
なかでも長年、世界の4大リーグと呼ばれるイタリア、イングランド、スペイン、ドイツの戦い方はどのようなものなのかを見ていきましょう。
【スペインの哲学】
まずはスペイン。この国でよく言われているのが「美しく戦う」ということ。この国の観衆は1-0で勝つよりも、4-5で負けた方が満足するとさえ言われます。もちろん勝つことにこだわりはありますが、いかに美しい攻撃で得点をとるかに興味が注がれ、その結果、負けてしまっても仕方がない、という考えがこの国では通用します。こうしたサポーター達に囲まれるスペインのリーグでは、ファンタジックなプレーが華麗に繰り広げられます。サッカーはエンターテインメントのひとつであり、無骨に勝利だけを目指すチームはあまり好まれません。
【ドイツの哲学】
続いてドイツ。ひと昔前はロングボールを前に入れて強靱で長身のFWが頭で競るという肉弾戦が主流だったこの国。タフなフィジカルのぶつかり合いが中心で、創造性あふれる美しいプレーというのはこの国のスタイルではありませんでした。もともとバイエルン・ミュンヘンというトップクラブに代表の主力級を多く集め、このクラブを国をあげて強化することで代表強化に繋げるという独特の手法をとっていたドイツ。 このバイエルンが2000年代中盤頃から、方針を徐々に転換していきます。体力勝負一辺倒を避け、より早く鋭いパスまわしや、アイデアあふれる攻撃を重視した方針を採り始めたことから、段々と、魅惑的な攻撃的プレーヤーが脚光を浴びるようになってきました。
さらには2004年に現代表監督のヨアヒム・レーブが代表のコーチに就任したあたりから徐々に情勢は変わっていきます。ヘッドコーチに就任したレーブはスピードとパスを重視した攻撃的なチームを目指し、多少、守備のリスクはおかしてもどんどんと攻めるスタイルを確立していったのです。このようにバイエルン、代表がともにほぼ同時期、積極的な攻撃的チームづくりに方向転換をした結果、ドイツのサッカーは大きく様変わりしました。
フィジカルの強い選手ばかりを並べるチームづくりはなりを潜め、魅惑的なパスサッカーを核としたスタイルで結果を出し始めたのです。先頃のワールドカップでのドイツの活躍もしかり、一時は古豪の凋落とも言われたバイエルンも攻撃的なスタイルで復活。欧州のトップクラブと肩を並べ、チャンピオンズリーグで再び優勝を狙えるチームへと変貌したのです。
【イングランドの哲学】
数十年前までは、ドイツと同じくフィジカル重視のチームづくりが目立ったイングランドも、今ではその経済力を生かし、各国のトップ選手を集めた魅力的なクラブがひしめき合っています。この国のサポーターは勝負にもこだわりますが、その焦点は主に「点をとること」。3-0で勝っている試合でもどん欲にゴールを目指す選手でないと、サポーターには認められないという傾向があります。点の取り方は美しくても、無骨でもかまいません。とにかく真摯に戦う姿勢が愛されます。このような観点から見ると、4大リーグのなかで最も得点に飢えたリーグがイングランドだと言えるでしょう。
【イタリアの哲学】
最後にイタリアを見てみます。伝統的な戦いの哲学はやはり守備を強固にかためる「カテナチオ」。門に鍵をかけるというこの言葉は長年、イタリアサッカーの戦いの基本とされています。勝負にとことんこだわり、最も優れた勝利は1-0だとさえ言われるこの国。敵の攻撃を完全に封じることに始まり、最少得点で効率的に勝ちをおさめるというのが、イタリアサッカーの理想であるとも言われています。近年ではその守備戦術にも多少かげりが見えはじめ、今後、どのような転換を見せるのかに注目が集まっていますが、イタリアはまだまだ守備の国。組織と個人で守るという守備の高度な戦術は世界最先端の理論を持っていると言えるでしょう。
このようにサッカーの戦いはその国の個性が如実に出るもの。こうしたことを知っておくと、世界のサッカーを観るのがより面白くなってくるでしょう。