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考える力

チームの負の連鎖を断ち切る!状況把握能力の大切さ

2014年10月17日

キーワード:U19日本代表アジア状況把握高木大輔

うまくいっているときや調子がいいときは、自然とチームの雰囲気がよくなるものです。うまくいっている状況が、自信を生み出し不満要素を打ち消してくれているからです。こういうときは、選手たちは気持ちよくプレーできます。しかし、試合に負けてしまいチームの雰囲気が悪くなってしまったら、どうでしょう。
 
うまくいかなくなると、選手たちの中に不安が生じ自信が奪われていきます。選手たちに不満が蓄積され、最悪の場合、それが爆発してチームが崩壊してしまう恐れもあります。
 
いい雰囲気のときは気にならなかったことが気になるようになり、負の連鎖が止まらなくなります。そうなったとき、選手はどういう振る舞いをするべきでしょうか。ミャンマーで戦うU19日本代表の高木大輔選手が示した姿勢が、ひとつの答えかもしれません。
 
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取材・文・写真 安藤隆人
 

■チームの負の連鎖を断ち切ったひとりの選手の振る舞い

ミャンマーの地で戦うAFCU-19選手権において、U-19日本代表はこの『負のスパイラル』にはまりかけた。グループリーグ初戦、選手のだれもが中国に負けるとは思ってはいなかった。初戦の緊張もあってか動きが固く、開始早々にPKで失点をすると後半にも失点し、1-2で敗れた。
 
4チーム総当たりのグループリーグにおいて、初戦を落とすことは非常に痛い。しかも、あとに続くのがベトナム、韓国と強敵揃いで、チームには大きな暗雲が立ちこめたと言える。しかし、ここでひとりの選手が、負のスパイラルを断ち切る振る舞いを見せてくれた。
屈強なフィジカルと強いハートを武器に、献身的なハードワークとゴール前での勝負強さを発揮する高木大輔は、中国戦をベンチから見ていた。
 
「短期決戦において『チーム』とは大げさに言えば『家族』というか、それくらいの気持ちでまとまらないといけない。誰かが落ち込んでいたら、誰かが助けないといけないし、ひとりじゃなくて、何人かが声をかけることで、その選手が『俺はひとりじゃない』と思ってくれればいい。誰かが喜んだら、みんなで喜んであげることも大事。シンプルなことをもっとやらないといけない。だれかに言われないでもやることが大事だと思う」
 
試合直後、落ち込む選手たちに笑顔で声をかける。翌日の練習でも、石田崚真と漫才のような掛け合いを見せたりして、明るく振る舞っていた。見方によっては、緊張感のない不真面目な態度に見えるかもしれない。しかし、高木はチームの中で一番冷静に物事を見ていた。
 
「つねに全体に目を向けるようにしています。全体の雰囲気をつねに意識して、ロッカールームやバスの移動中、練習場での雰囲気やチームメイトの表情を見ていると、『こいつ緊張しているな』とか、『いつもより硬いな』ということが分かります。そういう変化が分かったときに、どう声をかけるか。かける場所、タイミングを考えながらやっています」
 

■奈落の底に落ちたチームをよみがえられた『声』

印象的なシーンがある。それはベトナムとの第2戦。この試合に負ければほぼグループリーグ敗退が決まり、引き分けでも絶望的になる状況で、チームは89分まで1-0でリードをしていた。ところが、90分にMF奥川雅也が負傷し10人(交代枠を使い果たしていた)になると次の瞬間、カウンターから同点ゴールを奪われてしまう。ひとり少ない状況下での痛恨の同点弾に、ピッチ内の選手たちはその場でうずくまってしまい、センターサークルにダッシュでボールを運びキックオフを急ぐような選手はいなかった。
 
しかし、ベンチにいた高木は失点直後にタッチラインまで飛び出し、ピッチ内の選手に向かって「まだまだできるぞ!まだ時間はあるぞ!!大丈夫だ!絶対に勝てるから大丈夫だ!!」と叫んだ。これに鼓舞された選手たちは、後半アディショナルタイム(4分間)に、DF中谷進之介が勝ち越しヘッドを決めると、同6分にはMF井手口陽介が加点し3-1の勝利。
 
高木の『声』が、一度は奈落の底にたたき落とされたチームをよみがえらせた。
 
「ピッチに立っている選手たちの苦しさは分からないけど、逆に出ていなかったからこそ言える、元気だったからこそ言える場面でした。だって、たとえ自分が出ていなくても、ここでチームが引き分けてしまったら、自分たちの活動が終わってしまうんです。決して人ごとじゃない。そう考えたら、『じゃあ絶対に勝たなきゃいけないよな』と思えたし、『これまで自分たちはベトナムに負けていないんだから、負けるはずがない。勝てるはず』と思ったので叫びました」
 
この言葉に筆者は大きな感銘を受けた。先月バンコクで行われたU16アジア選手権のコラムにも書いたが、いま、試合の意義を理解しないまま試合に臨んでしまっている選手が多い。この試合は単なる親善試合なのか、世界がかかっているのか、グループリーグ突破がかかっているのか、ぼやけた状態で試合に入ってしまうからこそ、それが試合の状況判断の甘さにも繋がってしまう。彼は、チームが置かれた状況を十分に理解しているからこそ、ピッチ外においても的確な状況判断とそれに基づいた『声』を出すことができた。これは素晴らしいサッカーの能力のひとつと言ってもいい。
 
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取材・文・写真 安藤隆人

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