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考える力

子どもが自主的にチャレンジするために必要なこと【マンチェスターUの指導理論1】

2012年1月20日

キーワード:イングランドゲームトレーニングドリブルパス練習

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サッカーは子どもを大人にし、大人を紳士にする――。

現代サッカーの指導メソッドは、『コーチがプレーの手順を教え込む』という古い発想から、『子どもたちに考えさせて自主的な判断ができる人間を育てる』という方針へと大きく変化しています。
 
ヨーロッパの強豪クラブ、あるいはJクラブなど、それぞれに指導方針の違いはあっても、自分で考えられる選手を育てるという根本的な考え方は変わりません。言われたことをこなすだけの指示待ち人間では、広いピッチの中で刻一刻と変わる状況に対して柔軟にプレーすることができません。サッカーでは選手1人1人が考え、状況判断をできる大人になることが求められます。
 
では、そのような選手を育てるためにはどうすればいいのか?
 
昨年末に行われた指導者講習会、『ナイキ エリートトレーニング』のゲストとして招かれた、マンチェスター・ユナイテッドFCの育成コーチ、ケビン・ウォード氏の指導理論を紹介したいと思います。
 
 

■「~ができるか?」と課題を問いかける

ケビン氏の指導セッションは、それほど特殊な練習メニューを用いるわけではありません。基本的なメニューから徐々に実戦へと近づけていきます。例えば以下のような大まかな流れになります。
 
  1. 四角形のエリアの中で他の人にぶつからないようにドリブルやパスを行ってウォームアップ
  2. マーカーを置いてジグザグにドリブル
  3. ドリブルにシザーズなど様々なフェイントを混ぜてステップアップ
  4. 守備者をつけて対戦形式にする
  5. ミニゲーム形式へ
 
このような流れ自体は別段珍しいものではありませんが、ここで大切になるのは、ケビン氏が選手に対してどのような声をかけて指導していたのか、ということ。
 
ケビン氏は、『選手にチャレンジをさせる』『考えさせる習慣を早い段階で身につけさせる』と強調していました。
 
「ワンタッチでプレーできるか?」
「プレースピードを上げることができるか?」
「スペースに入ってパスを受けられるか?」
 
実際に指導セッションを行っている間、ケビン氏は選手に対して数多くの「Can you play~?」で始まる課題の問いかけをしていました。どうすればワンタッチでプレーできるのか、プレースピードを上げられるのか、スペースでパスを受けられるのか、その手順や答えは教えません。「こうしなさい」と命令するのではなく、選手に自分でプレーを考えさせ、悩ませるステップを大事にしているのです。
 
多少回りくどくなったとしても、このような小さな習慣の積み重ねが、将来的に自立した大人になるか否かの大きな差となって現れるのです。
 
 

■待ち時間を減らし、密度の濃いトレーニングを

ケビン氏が行っていた、一つのメニューを紹介しましょう。
 
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7つのマーカーを上図のように配置します。
 
まずは選手を2列作り、A→C→D→F→Gという順番でジグザグにドリブルするチームと、G→E→D→B→Aとドリブルするチームに分けます。これを往復しながら、シザーズを入れたり、インサイドターンを入れたり、さまざまな動きを入れながら反復していきます。そして徐々に対人練習、ミニゲームと、段階的に実戦に近づいていくようにステップアップします。
 
ここでケビン氏が強調していたのは、『選手の待ち時間をできる限り減らすこと』でした。
 
最近ではかなり少なくなったと思いますが、昔のサッカーの練習では、選手が大名行列を作って順番を待ちながらシュート練習をするような場面が多く見られました。シュートを打って、ボールを拾って、また行列のいちばん後ろへ……。
 
そのような練習では、選手のフィジカルや持久力が鍛えられず、練習時間の割にチャレンジ回数が少なく、何よりも集中力が持続しないので気持ちがダラダラとゆるみがちです。
 
待ち時間をなくした密度の濃いトレーニングと、待ち時間が多くて2倍の時間を使う密度の薄いトレーニング。どちらがいいのか?
 
ヨーロッパのサッカーの練習は、チームによって異なりますが、基本的には試合時間に合わせた90分で行われています(ただしミーティングやフィジカルトレーニング等の時間は90分に含まない)。たとえば日本の部活が90分で終わるとしたら、ずいぶんと短い感じがしますが、本当に集中して待ち時間のない濃い練習をこなせば、実は90分でも体や頭は相当疲れるし、そこで十分なトレーニング効果が得られているというわけです。
 
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では、それをどのように実現するのか?
 
ケビン氏の場合、ジグザグドリブルのメニューを行った後は、A&B&C&Dと、D&E&F&Gの2つのひし形に分けて、それぞれのエリアの中で1対1を連続するメニュー。さらに次はB&C&E&Fの四角形を使って、外周をドリブル競争、対角線にドリブルしてスイッチなど、どんどんメニューの内容を変えていきます。
 
ここで注目するべきポイントは、メニューとメニューの間で、マーカーの配置を動かす作業が最小限に抑えられていることです。
 
1つのメニューが終わるたびに、マーカーをいろいろと動かしたり、コートを作り直していると、前述したような待ち時間とダラダラ感が襲ってきます。そこでケビン氏は、選手に一切の待ち時間を与えず、同じマーカーの配置のままでどんどんメニューの内容を変えられるように工夫しているのです。
 
選手は目まぐるしく変わるメニューに、即時対応しなければならないので、体も頭も疲れる密度の濃いトレーニングになります。しかもこれなら、町クラブのようにコーチの数が少ない場合でも、最初にマーカーさえ並べておけば、効率的に選手を指導することができるでしょう。
 
何となく置かれたように見える7つのマーカーですが、実はこのような意図が隠されていたのです。
 
マンチェスター・ユナイテッドの指導理論2を読む>>
 
 
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ケビン・ウォード//
Kevin Ward
マンチェスター・ユナイテッドFC アカデミーに所属。イングランドFAが将来の代表選手となるべきユース年代の育成を目的に設立した「FAナショナル・スクール・オブ・エクセレンス」で指導経験を積み、U18のアカデミーコーチとしても12年間の指導経験を有す。マンチェスター・ユナイテッドFCアカデミーではコーチとして7年間、様々年代を指導。技術育成コーチとして指導に従事する傍ら、アカデミーのスカウト、保護者とのコミュニケーション、トレーニング・プログラムの作成とその質の向上の責任者も務める。
 
 
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取材・文/清水英斗(サッカーライター)、写真/TOTAL FOOTBALL

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