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「超弱いチームでも強くなるよ」と語る監督が実践した、選手がよく伸びる指導法

2018年4月24日

選手を「よく見て」「わかりやすいように」伝える<後編>

キーワード:コーチングパクヨンウン伝え方大分高校指導指導者朴英雄監督

元大分高校サッカー部監督・朴英雄氏。Jユース・公立高校に優秀な選手が流れる環境のなか、県内で二番手・三番手の選手たちを率いて全国高校サッカー選手権・インターハイに幾度も出場した名監督です。

2010年の高校サッカー選手権では全国3位という好成績。記者会見では

「うちのように県で2.5番目の選手を集めたって、弱いチームこそ強くなる。それを本にして、県でベスト8以上のチームには売らない。それ以下の、小学校から幼稚園までわかるような説明が入っているものを皆さんに配りたいくらいの気持ちがあります。そうしたら強くなるので。タイトルまで考えています。『超弱いチームほど強くなるよ』」と語り注目を集めました。

そんな朴監督の選手の個性を生かし、特長を伸ばす指導、そしてモチベーションを引き出すノウハウに迫ってみました。

前回はは監督が大事にしている選手への「伝え方」についてご紹介しましたが、後編では選手の自主性と個々の判断を育てることをベースに、理解度がグッと増す戦術の落とし込み方などをお伝えします。
(記事提供:内外出版社、取材・写真:ひぐらしひなつ)

大分高校 三位の記念碑.jpg
(大分高校 三位の記念碑)
<<前回:「闘わせる力」を持ってこそ監督だ

■戦術ボードの向きは縦か横か

――戦術を伝えるときに、いろんな喩え話をまじえて伝わりやすく工夫されていますね。

僕自身、音楽が好きで、ボクシングも好きだし車も好き。人と話をするときに、そういうことを引き合いに出したら興味を持ってもらいやすいし、話題が広がって、またそこから新しいイメージが生まれてきたりするじゃないですか。

でも、僕が音楽が好きでも相手が音楽を好きじゃなかったら、それはわかりあえる手段にはならない。共通言語にはなりえないんです。だから、コミュニケーションを取るときもサッカーと同じで、相手のことをよく見て、知る。理解する。それが大事です。

自分がわかりやすいように話すのではなく、相手にわかりやすいように話すのが「伝える」ということですからね。

わかりやすい例を挙げると、戦術ボードの向きなんです。

僕たち指導者はテクニカルエリアからゲームを見ているから、ピッチは横向きに見えている。横向きに見た状態で、相手とのマッチアップを見て、考えていますよね。でも、プレー中の選手たちの視点に立てば、ピッチは縦向きなんです。自陣から相手陣地へと、前に前に攻めていく。敵は前からやってくる

だから、戦術ボードは縦向きに置いたほうがいい。選手たちに実際のゲーム中のシーンをイメージさせやすいように、選手の視点に置き換えて説明するんです。

当たり前のことのようだけど、意外と気づかないことも多い。そのひと手間をかけることで、選手たちの理解がぐっとスムーズになったりするんですよ。

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(選手たちの視点に立って説明すると理解度がぐっとスムーズになることもある ※写真はイメージです)

■トイレのドアは内向きにつけてはいけない

――戦術を落とし込むという部分なんですけど、育成年代では、監督があまり細かく指示したために選手たちの自主性が損なわれ、個々の判断力が育たなくなってしまったという話も、ときどき耳にします。

それは難しいところですよね。でも僕は、サッカーのやり方はしっかり教えたいと思っています。

このあいだ選手たちにも言ったことなんですが、「いいか、家の作り方にも決まりがあるだろう」と。トイレのドアを内側に開くようにつけたら便器に当たって中に入れないから、外向きに開くように作る。そうすると今度は必然的に、トイレのそばの部屋のドアは内側に開くように作らないといけない。どちらも外向きだと、トイレから出ようとしたときに隣のドアが開いていようものなら、ドアがドアに当たってトイレから出られなくなる。

僕が教えているのは、そういうことなんです。だから自分で勝手にドアをつけておいて「先生、トイレから出られんようになった。助けて」と言われても、僕は知りません。「ほれ見ろ、俺の言うことを聞かんからそうなるんや」と(笑)。

ただ同時に、選手たちがプレーしやすいようにもしてあげなきゃいけない。今度は服をつくることに喩えましょうか。全体のデザインは僕、つまり監督がやります。でも、ポケットをどの位置にいくつつけようかとか、えりのかたちをどのようにしようかとかは、着る人のニーズに合わせてあげることも必要になる。それも含めてのデザインですよね。それが監督の仕事なんじゃないかと思います。

■スランプの子にはプレーをさせない

――シーズンのあいだには、スランプに陥る時期もあります。そんな選手にはどう指導するのですか。

悪いところを修正できるように、粘り強く愛着をもった指導をします。......と、多くの指導者は答えると思うんですけど。

僕は伸び悩んだ選手には、プレーをさせません。休ませるんです。グラウンドのいちばん高い場所に座らせて、見ていなさいと言う。自分があの場面にいたらどうするか。あるいは自分が監督だったらあの選手にどういう指示を出してどう動かすか。ヘタクソでもいいから、選手と監督それぞれの立場で観察してみなさいと。悩まなくていいと。

そうして何日間か経つうちに、彼はボールを蹴りたくなる。そうなったときに、プレーさせる。「蹴りたくなったら言いなさい」と伝えておいて。

で、プレーさせるんだけど、結局、伸び悩むというのは、出来ないことがあるから伸び悩むんですね。詰まっているところがあるから、やる気をなくして落ち込んでいるわけで。

そういう、出来ずに悩んでいる選手に対して、それを修正できるように、いくら根気強く指導しても、いくら愛着をもって優しい言葉をかけても、ハッパをかけても、出来ない子は出来ないんです。何故って、そこまでが限界なんです。

だから僕は違うところに目を移す。じゃあこの子は何が出来るのかと。

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(スランプに陥った選手は休ませ、その子ができる事に目を向けるという ※写真はイメージです)

結局、スランプに陥る選手というのは、山があって、山の中に入ってしまったということなんですね。入ってしまったために、自分のもっと大きな目標や、自分が本来しなくてはならないことが見えなくなっている。山の中のウサギや花や木は見えるけれど、山全体のかたちが見えない。だから視野が狭くなって、問題点ばかり見すぎてしまう。そして行き詰まる。

そこで開拓して道を造って進めとは、僕は言いません。そんなことをしても、どんどん狭くなるので。一旦、山から離します。山から遠いところに立たせて、山を見ろと。つまり全体を見たいわけです。

サッカーもそうなんです。困ったときは伸び悩む。試合のときも同じです。今日はなんだかプレーが上手くいかない。そこでどんどん潜り込んでしまう。なんで? なんで? もっと頑張らなきゃ、もっと頑張らなきゃって。そんな状態になったら、もうその選手は監督から交代させられてしまいますよね。

次ページ:真ん中のプレーだけ修正しようとすると、真ん中も外もできなくなる

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記事提供:内外出版社、取材・写真:ひぐらしひなつ

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