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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
技術指導どころじゃない、おとなしく話を聞けない低学年・未就学児に説明不要で楽しめる練習メニューを教えて
公開:2023年11月17日 更新:2023年11月20日
学生時代ずっとサッカーをしていて、JFA(日本サッカー協会)のライセンスも取得して指導の勉強はして挑んだが、いざ現場に出ると状況が全然違った! というコーチ。
低学年や未就学児はそもそもおとなしく話を聞いてくれない。技術指導どころじゃない......。と悩む指導者は、実は多いのでは?
ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、海外の育成や、いつからどんな練習をすればいいかをアドバイスします。
(取材・文 島沢優子)
<<動きながらボールを受けてパス、海外選手のように流れるようなプレーを身に付けるには、どんな指導が必要なのか教えて
<お父さんコーチからの質問>
はじめまして。
田舎の少年団で教えています。担当はU-8です
学区に1校しかなく、保育園から中学までメンバーが変わらないような地域です。専任の指導者がいるクラブチームなどは車で2時間以上の距離にある都市部にしかありません。
そんな感じなので、小学校の少年団ですが未就学児の兄弟も参加することもあります。
私自身大学までサッカーをしており指導ライセンスも取得しておりますが、現場に出ると技術の指導以前の問題で、まずおとなしく話を聞いてくれません。
身体を動かして遊ぶのは好きなので、遊びを取り入れながらサッカーの要素を学んでいけばいいかと思っていますが、指導歴が浅いのでバリエーションが少ないのです。
ミニゴール(※)は2台あります。低学年&一部未就学児に、あまり長い説明が要らず楽しめるような方法があれば教えていただきたく思っています。
※編注:E-3ショップで販売、JFA100周年記念として全国の保育園幼稚園に配布している本格的なミニゴール。Jクラブもトレーニングに使用
<池上さんからのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
基本的に、スポーツはその語源通り「遊び」です。その理解をまずはしていただけたらと思います。
■スポーツは「遊び」、では「サッカーを象徴する遊び」とは?
スポーツが遊びであれば、サッカーを象徴する遊びは何でしょうか。そう、試合ですね。うまく試合をやらせてあげると、当然ながら子どもは楽しくなります。
私のスクールでは、1回の練習は90分。そのなかで50~60分は試合に費やします。保育園や幼稚園の小さい子や、小学生でもまだサッカーに興味がない子は、ほかのところに興味を示しがちです。トンボが飛べばトンボを追いかけるし、友達同士で遊び始めたりします。
そうなるのは当然です。子どもなのですから。おとなしくしてくれないとこぼす大人たちも、子ども時代は同じ姿だったはずです。
■サッカーにのめり込んでない子たちにもボールが集まるようなルールにしてみて
では、どうするか。
小学生と幼稚園生が一緒にやっていると、どうしても学年や月齢が上の子どもがボールを持ちがちです。ドリブルしたり、シュートしたり。そういう子どもたちだけで盛り上がってしまうので、下の子どもたちは楽しくありません。ですので「今はサッカーをする時間だよ」と言い聞かせたりせずに、有効なルールに変えてあげてください。
例えば「幼稚園の子にパスを出さないと、シュートが決まっても得点になりません」というルールを作ります。得点までのプロセスで幼稚園児がさわったらゴールにするというものです。もしくは、小さい子たち、学年が下の子が入れると10点にします。小さい子が貢献できるよう、ゴルフのハンディのような要素を入れてみてください。
このように、サッカーはボールへのかかわりが増えると、一気に楽しくなります。サッカーにまだのめり込んでない子どもたちにも同じように、彼らにボールが集まるようなルールをつくることをお勧めします。
■上手い子たちが注目される場面もつくる
このとき気をつけなくてはいけないのは、少しサッカーがみんなよりもできる子の扱いです。飽きてしまうと、ルールを無視してひとりでドリブルしてシュートを決めて喜ぶ、といった子どももいます。そんなときは「点にならないのにどうして楽しいの?」と尋ねます。
「今のルールは幼稚園生にパスをしなくてはいけないルールだね。それはファウル(反則)がダメなのと一緒だよ。君がやっているのはずっとファウルしているのと同じじゃないかな」そういう話をします。
また、自分勝手にシュートを打った後に「今のどう?得点になるの?」と質問してみます。すると「だって面白くないもん」と返ってくることがあります。そこで「じゃあさ、どうしてこのルールがあるかわかる?」と問いかけます。全員が楽しむことの大切さを味わってもらうことが重要です。
その子たちにとってはハードルが低くなり過ぎて楽しくなくなることもあります。よって、小さい子のためのルールを入れた試合はずっと続けるのではなく、みんなが楽しくなり始めたらまたルールを変えてください。そうすると、出来る子たちが注目される場面が出てきます。
行きつ、戻りつでいいのです。それぞれの子どもたちが楽しめる機会を創出しながら、月日が経つと「いつの間にかみんな上手くなったね」とか「みんなで普通に試合できるようになったね」と言えるようになります。
■サッカーの要素を「止める・蹴る」に限定しないこと
講習会などに出かけると、そこで出会うのは初めて指導する子どもばかりです。初めましての関係なので、その子たちの様子みながらどうオーガナイズすればいいかを考える。どんなメニューが合うかな? どうルールを変えてあげればいいかな? と観察しながら考えます。
しかし、ご自分のチームであれば普段から見ているから子どもの特徴がわかるはずです。練習の途中で遊ぶこともあるけれど、こんな遊びを入れるとまた熱中し始める。さまざま試せばうまくいったオーガナイズの引き出しは増えていきます。前述したルール変更同様、試合をする人数を減らして小さいコートでやるのもいいでしょう。環境をさまざま調整します。
もうひとつ大事なのは、指導者がサッカーの要素を「止める・蹴る」に限定しないことです。サッカーで遊びたい子どもたちは、そんな練習に興味はありません。楽しくなさそうな話です。よって「楽しくないこともやらないとうまくならないよ」などと言わずに、勝ち負けがあるようなサッカー遊びをどんどん提供しましょう。
次ページ:池上さんが実際に2年生対象に行っている練習メニュー
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