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「超弱いチームでも強くなるよ」と語る監督が実践した、選手がよく伸びる指導法

2018年4月17日

選手を「よく見て」「わかりやすいように」伝える<前編>

キーワード:コーチングパクヨンウン伝え方大分高校指導指導者朴英雄監督

元大分高校サッカー部監督・朴英雄氏。Jユース・公立高校に優秀な選手が流れる環境のなか、県内で二番手・三番手の選手たちを率いて全国高校サッカー選手権・インターハイに幾度も出場した名監督です。

2010年の高校サッカー選手権では全国3位という好成績。記者会見では

「うちのように県で2.5番目の選手を集めたって、弱いチームこそ強くなる。それを本にして、県でベスト8以上のチームには売らない。それ以下の、小学校から幼稚園までわかるような説明が入っているものを皆さんに配りたいくらいの気持ちがあります。そうしたら強くなるので。タイトルまで考えています。『超弱いチームほど強くなるよ』」と語り注目を集めました。

そんな朴監督の選手の個性を生かし、特長を伸ばす指導、そしてモチベーションを引き出すノウハウに迫ってみました。

これまでは、選手それぞれの特長を伸ばす指導のコンセプトやそのトレーニングについてお話を伺いましたが、今回は監督が大事にしている選手への「伝え方」についてご紹介します。
(記事提供:内外出版社、取材・写真:ひぐらしひなつ)

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(選手ひとりひとりを理解して、個々にあった伝え方をすることが大事 ※写真はイメージです)
<<前回:一人ひとりの個性を磨くトレーニング

■発想と思考力で人間はつながっている

人は人と共同作業が出来る生き物なんだけど、連係したり連動したりするためにはリンクしていかなくてはならない。それは技術的なものだけでなく、心のリンクもです。互いにわかりあっているチームづくりをしなくてはなりません。だから日々、トレーニングするんですね。

だけどサッカーは足が速いだけではダメ。ボールを扱う技術があって、相手の状態を見ることが出来、味方の状況を見ることが出来て、自分がどうするかを決めなくてはならない。そしてそれらの能力において優秀であったとしても、それを味方たちに伝えるコミュニケーション能力が備わっていなくては、周囲と連動できないんです。

サッカーは組織でやるスポーツだから、チームとしてコンセプトがひとつにならないと、やりたいことを表現することは出来ない。やりたいことをやりたいようにやるため、個性と個性の呼吸を合わせてコンセプトをひとつにするために、トレーニングをして、勝利のパーセンテージを高めていくんですよ。

その前段階として、パーツを切り取って行う練習も多いです。まず左サイド、とか真ん中の部分、とか。そして何メートルを何秒で何周、何本走るといったオーソドックスなインターバルよりも、戦術的なランニングをやったり。マーカーを置いて、実戦での動きをイメージしながらそのとおりに走らせる。

実際の試合のときにその選手が最もたくさん動く距離と場所をね。中盤については、守備のときに中盤の底の位置までスライドしてくるけど、最終ラインまで下がることはない。攻撃のときにはゴール前まで走る。走る必要がある距離は、その範囲なんです。実際に試合で走る距離以上に走る練習をする必要はないと、僕は考えたんです。

まっすぐ走らせるだけじゃないですよ。ボールの動きによって、サイドステップやバックステップ、ターンも出てくる。そうすることでフィジカルを鍛えるのと同時に、戦術も身に沁み込んでいくんです。

■その失敗をもう一度やれますか

――ゲーム形式のトレーニング中に、プレーを止めて指示しますよね。普通は修正して終わりですが、修正したあとにもう一度、失敗したプレーをやらせていました。その意図は。

「いまどういうふうにやったかもう一度やってみなさい」と言ったとき、選手が覚えていないんです。失敗したことに対して記憶があるということは、それなりにヴィジョンを持ってプレーした結果の失敗ですよね。だけど大抵は何も考えずにプレーして失敗している。だからもう一回やれと言っても出来ない。

紅白戦を途中で止めて、攻撃側を指導しているときに、もう一度さっきと同じことをやらせようと思っても、守備側の選手までほんの少し前にやったのと同じポジションを取ることが出来ない。なんとなくディフェンスしていたから。それで「それじゃあさっきのシーンが再現できないじゃないか」と僕に怒られる(笑)。

何回かそういうことを繰り返すうちに、選手たちも「また再現させられるんじゃないか」と警戒して、意識的、意図的にプレーするようになるんです。

失敗したときだけじゃないですよ。ゴールを決めて、僕が「いいねー」と親指を立てて、あとから「あのときどういうふうな狙いでどうやってシュートしたの」と訊ねたら、ちゃんと答えられる選手もいるけど、たまに「ボールが来たから蹴りました」みたいな子もいますからね(笑)。


■「闘わせる力」を持ってこそ監督だ

僕もグラウンドでは余裕がなくて感情的になってしまうことがあるから、そんな日はフォローしようと思って、夜になってから家に電話をかけるんですよ。「今日は俺、みんなの前で君のこと怒りすぎたよな。でも今日の君は簡単にあきらめてしまって、君らしくなかったぞ。君らしい君がいるからこそチームが成り立つんだ」っていうことを伝えたくて。

僕は叱るときは結構厳しく指摘するけど、必ず「いまのようなクオリティーの低いプレーは君らしくない。君らしいプレーをしなきゃ」という表現を使うようにしているんです。あるいは「君がしっかりしないと、誰がチームを引っ張ってくれるんだ」といったふうに、ひとりひとりのチームの中での必要性や存在感を認識させる。そのうえでサッカー的なことを伝えていきます。ただ叱るだけでは選手はヘコむし、技術や戦術のことだけを言ったところで、選手がそれを受け入れる気持ちになっていない状態では結局、一日で忘れてしまう。

だからまず、自分はチームの中で大事な存在なんだと選手に理解させるように、僕は神経を使って説明するんです。

でも電話口に出てきた子は小さい声でボソボソと「はい......」なんて言ってるもんだから「電話に出るときは明るい声で『こんばんは』って言うんだ!」ってまた説教がはじまっちゃう。その繰り返しで3年間が終わるんですよ(笑)。

僕はまず、新入部員が来たら、詳しくプロフィールを聞くんですよ。そういうところにも、プレーヤーとしての特徴や人としての性格が表れるものなので。

同じレギュラーの中にも、出来る選手、まあまあの選手、あまり出来ない選手というのがいる。そういう分類の中で僕は、叱り方や褒め方、接し方のパターンを決めています。個々のスキルと考え方とをトータルに考えて、いまの場面だったらこの選手にはもっと厳しく言ったほうが火をつけることが出来るな、といった判断をするんです。

死ぬまで勉強しても、サッカーには「これが正解」と言えるものはない。理屈で考えたら、正解の指導をすれば優勝できるはずなんだけど、それが出来ないということは、サッカー以外のところに原因がある。それが接し方の部分だと思うんです。

やっぱり選手たちを闘う気持ちにさせないと。「もっと周りを見ろ、ボールを失うな」と言うよりも、自然と周りを見なきゃいけないような環境に、その選手を置いてあげることが大事だと思うんです。

これはちょっと笑っちゃう話かもしれないけど。

トイレに行ったら、男子便器に蝿の絵が描いてある。場合によっては星のときもあるし、色が変わる仕掛けのときもある。男はそういうのを見ると、無意識のうちに当ててみようと思っちゃうんですね(笑)。

そういうのがないトイレには、正面のタイルに「一歩前に立ってください」とか「みんなのためにキレイに使いましょう」とかいった貼紙がある。それを見て、ああ、一歩前に行かなきゃと思わせるよりも、蝿の絵があったほうが、自然とそこに集中してしまう。

サッカーのトレーニングも同じなんです。ひとりひとりに、自然に目標達成に向かって夢中にさせる環境や頑張らざるを得ない状況を与えることが大事なんです。指導者が「頑張れ!」と押しつけるのではなくて。

戦績がともなわないときには、サッカー的な問題もあるかもしれないし相手との関係もあるかもしれないけど、同レベルのチームとの対戦でならやっぱり良い練習をしたチームが勝たなきゃ理屈に合わない。なのに勝てない状況が繰り返されるということは、戦術やトレーニングの問題じゃない。それを遥かに超えた、闘うか闘わないかという、選手ひとりひとりの気持ちの影響が大きいんです。

次ページ:視覚、聴覚、選手のメンタルに訴えかける「伝え方」

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記事提供:内外出版社、取材・写真:ひぐらしひなつ

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