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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
真面目でコーチの指示をちゃんと聞くのに理解が遅い子、ポジショニングなど動きを理解させるにはどうしたらいい?
公開:2025年1月31日 更新:2025年2月 3日
真面目で勉強はできるタイプだけどサッカーの理解が遅い子。説明に耳を傾けているのにいざやってみるとその子だけポジショニングやスペースの使い方がわかってない......。
難しい伝え方をしているつもりはないけど、その子がイメージできるようにするにはどんなアプローチをしたらいい? とのご相談をいただきました。
ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた池上正さんが、指示を理解してもらうためのアプローチを伝授します。
(取材・文 島沢優子)

<<小学校入学と同時にサッカーを始める新一年生、未経験の子たちを指導するときは何 から教えればいい?
<お父さんコーチからの質問>
はじめまして。担当しているのはU-10です。
理解が遅い子への対応について教えてください。
おとなしい子で、真面目です。私を含め、コーチたちの話にもしっかり耳を傾けています。
が、レクチャーしたことができないのです。ポジショニングや空いたスペースの使い方、どこに動けばいいのか、などを説明してからトレーニングしても、その子だけキョトンとしています。
強豪チームでも何でもない、普通の少年団ですが、ほかの子は割とすぐに出来るので、そんなに難解な内容でもないと思いますし、伝え方も難しい言い方はしてないつもりです。
親御さんも「何事も真面目でコツコツやるタイプ」と言っていて、学校の成績は良いみたいなのですが、イメージする力が弱いのでしょうか。
医学的な相談をしたいわけではないのですが、ほかの子より理解が遅い子への良いアプローチをご存じだったら教えていただきたく思います。
やんちゃで話を聞かない子ならまだ納得ですが、真面目で話も聞いている、自主練もコツコツするタイプと自認してるため本人の落ち込みも見えてしまい......
(話を聞いてない子たちのほうが練習の意図や本質を理解するのが早かったりするのがまた......)
<池上さんからのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
5つほどアドバイスします。
■頭の中で咀嚼できていない可能性がある、内容を理解しているか確認しよう
1つめ。指導者はできない子を責めてはいけません。
ご相談文の最後のほうに「本人が落ち込んでいる」と書いてあります。落ち込んでいるのなら尚更「みんなができるのにどうしてお前はできないのか」と責めるような言動はやめてください。
2つめは、その子に問いかけること。できないことをこの子は自覚しています。どう理解するか、例えばこれもその子に質問する必要があるでしょう。
「こういうふうな説明したけど、理解できたかな?」と。どう理解できたか言ってもらってその理解度を指導者側がまずは把握するのが重要です。
よくあるのが「多分わかってないだろう」みたいに憶測だけで止まってしまうケース。これからどうするかを一緒に考えよう、という姿勢をコーチがまず見せましょう。
すごく真面目でよく聞いているけれども、ひょっとすると単に聞いてるだけで、自分の頭の中でもう一度それを咀嚼する、つまり理解する作業ができていないかもしれません。
したがって、ぜひ「理解してますか?」といった問いかけをしてみてください。
例えば「これはどうしたらいいのかな?」と尋ねて、一度その子の言葉で表現してもらいます。
それはみんなが見ている前で言うのではなく、その子ができないときに、そのときもしくはその後で話をするほうがいいでしょう。
他の子たちがすでに練習を進めているのなら「ちょっと練習やっといて」と告げ、その子をつかまえて対話してください。
■実際の動きを見せて「こういうことをしてほしい」と伝える
3つめ。みんなの動きを一緒に見てもいいでしょう。
例えば「さっき説明したことってさ、ほらあの子こんなふうにしたでしょう? こういうことをしてほしいんだよね」と伝えましょう。それは一回だけでなく繰り返し行うこと。コーチは根負けせずに付き合ってあげる必要があります。
私が過去に教えたなかにも、私が言った説明を聞いて「はい」と返事をしてすぐやろうとするのにできない子どもはたくさんいました。
ほかの子どもたちにはそのまま練習を続けさせて、その子に話を聞いて、これはこういうことで、こうしていかないといけないんだと一度頭の中で考えてごらんよという話をしました。
頭の中が整理できたらプレーしてみる。そうすると、動き出しは遅いのですができるようになりました。ちょっと待ってあげて、考える時間を与えます。並ぶ順番を後ろにして、他の子がやっているのを見せてからやってもらいました。
そういった工夫をしてほしいのですが、どうしても子どもにベクトルが向く指導者は少なくありません。あいつはダメだ、みたいになりがちです。
そうならずに丁寧に教えて行けば、ひとり一人が上手くなっていくのでチームの底上げになるのでぜひ理解してほしいところです。
■理解度に合わせてグループ分けをするのも1つの方法
4つめ。なかなか理解できない子がいたとしたら、グループ分けをしてもいいでしょう。
その子たちは理解できるようなことから始めてあげる。つまりメニューを少しだけ簡単にします。
複雑すぎて、考えなきゃいけないことがいっぱいあって、その中から何を選びますか? というのは難しいけれど、いくつかの選択肢の中から何を選びますか? といったものからスタートします。
練習のすべてではなく、そのように習熟度別で行う時間帯があってもいいと思います。
■成長には個体差がある 各個人の進化、変化を見るようにしよう
5つ目は、基本的な教育観を持つこと。すべての子どもが楽しめて成長できるようにすることを心がけてください。子どもたちには違いがあります。
例えば4月生まれと早生まれでは理解する力や身体的な発達が異なります。そういった個体差がある。認めることが大切です。理解が遅いというのは、他の子と比べるから遅いだけ。そのような考え方です。
この教育観を持てれば「最初はこうだったけど、今はこうなったね」と子どもの進化、変化をきちんと見てあげられます。その変化をしっかり見ることができ、なおかつ指導者としてそれを楽しめるようになってほしい。
よくいわれる「スモール・ステップ」を待てる、気づける、楽しめる指導者を目指してください。
それとは逆に「他の子はできているのに、この子は遅い」「全体の練習が進まない」とイライラすることがあってはいけません。トレーニングをスムーズに続けるために「この子をどうするか」という受け止め方ではなく、こういう子がいることこそ他の子にとってもすごくいい経験になることを知ってほしいです。
誰かが何かを出来ないことをほかの子どもたちが受容して、カバーする。そんなチーム、いいと思いませんか?
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