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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
小学校入学と同時にサッカーを始める新一年生、未経験の子たちを指導するときは何 から教えればいい?
公開:2025年1月17日
小学校入学とともに入団してくる新一年生。全員サッカー未経験だけど、一番最初はどんなことを教えたらいい? というご相談。
学生時代サッカーをしていた親御さんでも、いざ教える立場になると何から始めればいいのか迷ってしまいますよね。
ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた池上正さんが、ご自身の主宰するチームのお話などを踏まえ、おすすめの練習を紹介します。
(取材・文 島沢優子)

<<低学年あるある「パスをしない」を解消したい。どんなタイミングでパスを出せばいいか、気づかせる方法を教えて
<お父さんコーチからの質問>
こんにちは。
学校のチーム(カテゴリーとしてはスポ少だと思います)で、U-8年代の保護者兼コーチをしております。サッカー経験は高校までで、特に強豪でもない部活でやっていました。
相談内容は、来年度迎える新一年生の指導です。
全員サッカーは全くの初めてなのですが、サッカーを一番初めに教えるときにどんなことをしたら良いのか教えてほしい。という相談です。サッカー経験者ではありますが、改めて今の時代に合った指導を知りたいと思いまして。
4月から新一年生が入ってきます。学童のように放課後を過ごす場としてサッカーさせてるような感じであり、全員が同じ状態からスタートです。田舎で保育園時代にサッカーする場はないので。
運動能力については、都会の子より低めだと思います。
最近は地方でもボール遊びができない公園なども増えてきており、田舎の子たちも外遊びする子などあまり見かけません。野山を駆け回るなど皆無です。
まして、コンビニにすら車で20分とかザラにある地域なので、子どもたちはどこかに行くときは親の車で移動するのが当たり前、体育以外の運動をしている子は少ないです。(スポーツも文化的なものも、クラブやスクールは車で30分とかなので)
こんな感じの子どもたちへの「初めてのサッカー」で、どんなことを体験させればいいのかアドバイスをいただけると助かります。
<池上さんからのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
今の時代に合った新1年生の指導はどうすればよいか? という質問ですね。
これから春になり1年生がクラブに加入する時期を迎えるので、指導で心がけていただきたいことをお話しします。
■まずは楽しくボールを追って、簡単にゴールが決まるような経験をさせてあげる
まずは試合をさせることが重要です。5対5や8対8など少人数で設定します。最初はみんなボールになかなかさわれないけれど、ワイワイと楽しく追いかける。それで十分です。
ただし、自分から行けない子も出てきます。
そこで「この人数だとボールをさわれない子もいるから、ちょっと分けてやってみましょう」と言って、そういう子たちとひとりで行ける子でグループ分けをします。
さらに人数も減らして、2対2とか3対3で試合をしてもらいます。あくまでも楽しくやることを目指します。例えば得点が入ったときにみんなで喜ぼう、といったルールにします。
そういうことを最初に経験させてあげると、子どもはもっとサッカーをやりたくなります。
サッカーを始める入口では、いかにモチベーションを上げるかが大事です。
それはこちらがどんな練習を提供するかで変わってきます。子どもはゴールできるとうれしいので、点が入らないような試合だったらコーチがそこに一緒に入ってうまくパスをしてゴールさせてあげるお膳立てをしてもいいでしょう。
■体を動かしたい、という欲求を満たしてあげる
「田舎でも子どもたちが外遊びをしなくなった」ということですが、日本全体の体力テストを見ても地方の子どものほうが数値が低いようです。
親御さんたちの時代は何キロも歩いて通学したのに、今はスクールバスが出る。外出も習い事に行くのも電車はあまり使わず自宅から親の車で移動する。そのように地方は車社会なので歩く機会が減っています。ほぼご相談者様の見立て通りだと思います。
だからこそ、最初に試合にしてあげてボールを追いかけることが楽しい、体を動かすことが嬉しいという感覚を味わってもらいます。
やっているのはサッカーなのですが、そういった子どもたちが本来持っている「常に体を動かしたい」という欲求を満たしてあげることを念頭においてください。
■子どもは本当に苦しくなると自分から休む
子どもは本当に苦しくなると、必ず自分で休みます。自分から足を止めるとか「コーチ、もう走れない!」と言ってくれます。そのため、やりすぎるということがありません。
運動不足の子たちはすぐにあきらめてしまいがちですが、休めばまた動き出します。全員が本当に動きが悪くなったら、ちょっと1回休もうかと休憩を入れます。
そうやって、なるべくゲームをする時間を長く取ってください。最初の1か月くらいはゲームしかしないぐらいのつもりで練習を組み立てましょう。
私が地元で主宰しているスクールも、練習に来たらまず30分以上は試合をします。
1年生は最初のころは途中「のどが渇いた」などと言いに来るのですが、1~2か月もすれば30分試合を続けられるようになります。
■スポーツ障害の予防ではウォーミングアップよりクーリングダウンが重要
加えて、低学年の練習については「ウォーミングアップは必要ですか?」という質問を受けます。けがの防止という観点から必要だとの意見が多いのですが、いろいろ研究されている中で、アップの量でけがの発生頻度が変わることはありません。つまり、影響しません。
スポーツ障害の予防についても、ウォーミングアップよりも、クーリングダウンを重要視したほうがよいという研究結果が出ています。
1年生くらいであれば、例えば鬼ごっこをするとか勝ち負けのあるゲーム的なものがお勧めです。
■キッズ年代の動きづくりは、体を動かす楽しさを覚えてサッカーを好きになってもらうこと
日本サッカー協会が「キッズ年代の動き作り」(サッカー協会のページに飛びます)という言い方でメニューを紹介しています。
スキップ、ジャンプ、ターン、ジグザグに走るといったものがあります。そういったことを競争にしてやると楽しめるでしょう。ただし5分か10分で十分で十分なので、すぐ試合をやります。
私が所属する京都府サッカー協会で「キッズコーチ」というライセンスを作っています。
ゲーム後にジグザグドリブルを、ではなく、最初から2対1に入ります。仲間と一緒に協力して何かができたら嬉しい。2人でプレーして喜んでもらうのが目的です。うまく攻めるとか、うまく守るではなく、失敗してもいいから楽しくやるということに注目します。
日本サッカー協会のキッズリーダーのような、まさしくサッカーの入口に立つ子どもへの指導を学んでもらいます。
初めてやる子たちが体を動かすことが楽しくなって、それでサッカーを好きになってもらう。そんな考え方です。
■常に「見て、判断」しないといけない練習を
試合やってみんな楽しくなってきた。次はどうしよう? と考えたとき、やはり技術の向上をと考えます。
ただ、ドリブルをするにしても、試合では必ず守備をしてくる相手がいる。自分のボールを取りに来る相手がいます。その都度、右か左か前か後ろかどの方向を選んでドリブルに行きますか? と判断を問われます。
したがって、子どもたちが常に「見て、判断」しないといけないような練習を考え出してほしいのです。
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