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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

回数はそんなに重要か。リフティング信仰から目を覚まさせるアプローチを教えて

公開:2020年9月11日

キーワード:ボールコントロールポジションリフティングリフティング練習機器察知空間認知試合で使える技術試合体験身体のバランス

監督がリフティングの規定回数を設けていて、達成できない子は試合に出さない。リフティング回数より試合経験を積む方が良いと提案しているが聞き入れてもらえない。

保護者の中にも回数を重視している方も多く、「できてないのに試合に出すのか」という声も。どうして日本はこんなにリフティングの回数を重要視しているの? と悩むコーチからのご相談です。

既定の回数を設けて評価することは、本来のリフティングの目的から外れるのでサッカーのスキル向上が望めないことや、子どもの自信喪失につながると池上正さんは言います。ではどんな改善を行えばいいのか。

これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが送るアドバイスを参考にしてみてください。
(取材・文 島沢優子)

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(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

 

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<お父さんコーチからの質問>

U‐8年代の指導をしているのですが、リフティングの回数についてのご相談です。

監督がリフティングの規定回数を設けていて、できない子は試合に出しません。既定の回数ができていなくても試合経験を積ませる方が良いのでは、と提案しているのですが、改善してくれません。

確かにボールコントロールを身につけるのに役立つ練習ではありますが、同じ場所で回数を重ねるリフティングがサッカーの上達に大きく影響するとは個人的にも思いませんし、実際にプロ選手や指導者の方も回数は重要ではないと言っていますよね。

監督もですが、保護者の中にもリフティングの回数を重視している方も多く、「できてないのに試合に出すのか」という感じの事を言う方もいます。

子どもたちもリフティング練習が好きで、一人でやれる手軽さもあって家でもやっているようですが、海外では日本のようなリフティング練習は無いとも聞きます。プロ選手でも何十回もできない選手もいるようですし。

どうして日本はこんなにリフティングの回数を重要視しているのでしょうか。根深い問題だと感じています。

リフティング信仰から目を覚まさせるアプローチや、おすすめの練習などはありますでしょうか。

 

 

<池上さんのアドバイス>

ご相談いただき、ありがとうございます。

欧州や南米の子どもはリフティングをして遊びますが、回数を数えません。しかも、リフティングをするのは基本的に小学生くらいの年代、子どもの間だけです。有名な選手がやっていたリフティングの技を真似して遊びます。ロナウジーニョ(元ブラジル代表)やネルシーニョ(柏レイソル監督)などでしょうか。

そして、それらを選手が試合で使っていることを知っているので、自分たちも実際に試合でやるために練習するのです。

 

■規定回数での評価はスキル向上につながらない

したがって、回数を数えてリフティングをするのは日本だけです。コーチに「百回目指せ」とか「千回できた人から試合に出します」などと回数を定められ、その目標に向かって黙々とやります。

規定回数があるため、失敗したくありません。失敗しないために、ずっと利き足だけでやる。もしくはずっと同じ蹴り方、例えば全部インステップでやるという状況になりがちです。ボールを扱うスキルを向上させるために始めたはずが、途中で「決められた回数をやる」という本来の目的とは違うものにすり替わっていきます。

欧州や南米はそうならないのに、なぜ日本だけがこうなってしまうのか。

それは教育が関係しているようです。学校教育の特徴として、テストであれば100点を取ることが求められます。何か数字的な目標があって、そこに向かって突き進む。よって、リフティングも回数が決められてしまうのだと考えられます。スポーツが「評価されるもの」というとらえ方を大人がするので、子どもにとってスポーツをする楽しさがどんどん半減していきます。

しかしながら、そうなってしまうと、もとの目的からどんどん離れてしまう。もっと言えば、サッカーでなくなってしまうわけです。スキルの向上は望めないうえに、決められた回数に届かない子どもは「ぼくはダメだ」と自信を失います。回数というわかりやすい指標があるため、子ども同士で比べあってぎくしゃくすることもあります。

 

■スキルを磨くのは試合で使うため

例えば、少しボール扱いはスムーズでなくても、空間認知の能力が高くいいところでボールを奪えたり、危険察知能力があってポジショニングが上手な子など、目に見えづらい力を持っている子どもたちがいます。そういう子どもが意欲をなくしたり、悪くすればサッカーから離れるといったリスクも考えられます。

先日、中学生が「ヒールリフトを練習したので、見てください」と言ってやってきました。実際、彼はとてもうまくなっていました。
「せっかくうまくなったんだから試合で使ってごらんよ」
私がそう言うと、彼は「え~っ?」と驚くのです。

「いや、何のために練習したの。ヒールリフトってどうしても抜け出せないときに、使うと便利だよね。コーチも練習して使ったよ」

彼の反応からは、使う気がないけれど練習したことが伝わってきました。

そんな子どもをブラジルのコーチが見つけると、「君はサーカスに行くの?」と言います。練習はあくまでサッカーの試合に出てくる技術を磨くのが目的です。そうすると、リフティングをする場面はどのくらい出てくるでしょうか。百歩譲ったとしても、浮き球のコントロール程度です。それを何千回もできる必要があるでしょうか。

フットサル指導者のミゲル・ロドリゴさんも「リフティングは試合で使わない」とおっしゃっていました。立ったまま動かずにボールを何度もリフティングするような場面は、試合にはありません。スキルを磨くのは試合で使うためです。日本の指導者や子どもたちはそこをもっと意識すべきです。

 

■利き足だけでなく、身体のいろんな場所でのコントロールを心がけること

よって、リフティング練習は基本、必要ないと思います。ただ、リフティングをさせるのなら、回数を目指すのではなく、試合で使うスキルを向上させることを念頭においてください。

まずは、二人でボールを交換する練習をしましょう。パスを受けたらリフティングして返す。ダイレクトで返す。左右交互に使う。もも、肩、頭、胸など身体のいろいろな場所を使ってコントロールすることを心がける。

二人でパス交換しながら移動してもいいし、ひとりでやるのなら壁に充てたボールをリフティングする。また、お母さんやお父さんに投げてもらったボールをコントロールして返す。それも可能なら移動してやる。

このような練習は、ボールコントロールのスキルだけでなく、身体のバランスをよくするコーディネーションにもつながります。神経系を刺激して自分の思うように身体をスムーズに動かす力を養います。そのためにも右も左もバランスよく使うことが肝要です。

私は大学時代、インステップを左右、アウトサイドで左右、インサイド左右からヘディング、そしてまたインステップに戻る練習をひとりでよくやりました。このようにさまざまな蹴り方、運び方を何周もするのは容易いことではありませんでした。ひとりでやるときは、そんな方法もあります。

 

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コーチからの質問に池上正さんがお答えします(チームの指導の悩み、例:年代がバラバラなチームの練習メニューなど)※記事になります

※質問の文言を記事にさせていただくことがあります。その際はプライバシーには配慮します。

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文:島沢優子

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