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JFAグラスルーツ推進部部長が行く!あなたの街のサッカーチーム訪問

2017年3月 2日

「次のステージでの成長のために」チームの成績より大切なものを養うエスペランサ熊本の独自指導

キーワード:JFAみんなPlayエンジョイグラスルーツ少年サッカー

日本全国にあるグラスルーツの原風景を求めて日本サッカー協会(JFA)グラスルーツ推進部の松田薫二部長が全国を訪ね歩くこの連載。二回目の九州上陸となる今回は、昨年の大震災の被害を受けた熊本のNPO法人スポーツクラブ・エスペランサ熊本にお邪魔しました。
 
「キッズ・小・中学校の枠を超えサッカーを通して『友情と仲間意識』を作り、人間教育を目的とした総合型スポーツクラブを目指す」というエスペランサ熊本の取り組みをご紹介します。(取材・文 大塚一樹)
 
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<今回訪問したエスペランサ熊本は以下の賛同パートナーです>
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<<「障がい者を教えることは、健常者を教えるうえでも役に立つ」障がいを特別扱いしないサッカーコーチの言葉
 

■スポーツフェスティバルで笑顔の輪が

熊本・八代に取材で伺ったこの日、会場となった八代運動公園に子どもたちの笑顔が広がっていました。エスペランサ熊本は、年に3回、地域の子どもたちを集めて「スポーツフェスティバル」を開催しているそうです。今日は2016年度の最後のフェスティバルです。
 
「これはとても良い試みですね」
 
松田部長は目の前に広がる光景に目を細めます。
 
グラウンドの右手には風船のような球体に包まれて大はしゃぎする子どもたち。話題のバブルサッカーを体験できるエリアです。中央ではエスペランサのコーチたちがサッカーの指導をし、手前の陸上トラックでは、地元の陸上クラブとコラボレーションした走り方教室が行われています。
 
「楽しむのが一番だと思うんです。前回はロアッソ熊本のサポーターに来てもらって、子どもたちに応援の仕方をレクチャーしてもらったりして交流もしました。サッカー以外にも陸上やラグビー、子どもたちが興味を持てるようなことをどんどんやっていきたい」
 
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こう話すのは、エスペランサ熊本の総監督を務める光永誠司さん。スポーツフェスティバルに来ているのは、エスペランサの子どもたちだけでなはく、近隣の子どもたちということもあり「楽しくないと続けたいと思ってもらえない。サッカーじゃなくても良いからスポーツを始めるきっかけになってくれれば」と自然に体を動かしたくなる楽しいイベントを心がけているそうです。
 
「バブルサッカーはどうしたんですか?」
松田部長が質問したのは、バブルサッカーの道具一式。最近はイベントなどで良く見かけるようになりましたが、用意するにはそれなりの費用がかかります。
「仲良くさせてもらっている島根のクラブに借りたんです。バスでバブルサッカーの道具一式持ってきてもらって、クラブの子どもたちは別の会場でうちの中学生と試合をしていますよ」
 

■サッカーをするのは何のため?子どもたちの自主性を引き出す試み

周りのスタッフに聞くと、光永さんは周りが驚くほどアンテナ感度が高く、「よく言えば勉強熱心。言い方を変えれば……変人?(笑)」というくらい、いろいろなところに出向いて新しいこと、子どもたちのためになることを見つけてくる人なのだそうです。そうした交流の中から、フェスティバルのようなアイディアが浮かんでくると言います。
 
今回のフェスティバルで、走り方教室を指導していた八代市陸上競技協会理事でMaedaアスリートクラブの代表である前田浩二さんも、サッカークラブが開催するイベントで多競技を行うことに賛成の声を挙げます。
「サッカーは進んでいると思います。子どもたちはもっといろいろなスポーツをやった方がいいと思いますし、こういうイベントに呼んでもらえるのはありがたいですね」
 
基本的な走り方、ウォーミングアップなどを教えていた前田さんも、子どもたちと触れ合ううちに自然と指導に熱が入り、陸上エリアでも笑顔の輪が広がって行きました。お手本を務めてくれた陸上クラブの子どもたちも、普段触れ合うことのない小さな子ども、サッカーをやっている同い年くらいの仲間との交流を楽しんでいる様子でした。
 
陸上クラブの子どもたちに限らず、運営にはエスペランサの中学生が協力しています。イベントのオーガナイズは大人のスタッフが行いますが、準備や子どもたちへのレクチャー、盛り上げ役を買って出るのは、かつて自分たちもこういうイベントで「先輩」たちにサポートしてもらった選手たちです。
 
「こういう笑顔が良いですね。運営もできることは子どもたちがやっているし、これがグラスルーツの良いところだと思いますよ。他競技を取り入れたフェスティバルはどんどんやるべきだと思います」
 
松田部長の感想に、光永さんは「ほとんど何も言わなくてもスタッフと子どもたちがやってくれているんです」と謙遜します。「でも、そういうふうに自然に動けるのが素晴らしいですね」松田部長の言葉にうなずいた光永さんは、ある選手を指さしてこんな話をしてくれました。
 
「あの選手は足をケガしているんですよ。ほら片方だけサンダルでしょう?小学生なので、手伝いの担当ではなかったんですが、昨日急に電話してきて『俺、明日練習できないんでフェスティバル手伝っても良いですか』って言ってきたんですよ。そういうことが一番うれしいですよね」
 
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■目先の勝利や結果より大切なもの

光永さんは、これから先のサッカーの上達を願うからこそ目先の勝利や結果よりも大切なことがあると言います。
 
「うちのクラブででは、“エスペランサビジョン”として選手はもちろん、保護者の方にも共有しているのですが、小学校、中学校の年代で『勝つこと』を第一義にはしていないんです。結果を出したい、勝ちたいという人は他のクラブをおすすめしています」
 
光永さんの言う、“エスペランサビジョン”とは、子どもたちが「将来、サッカーだけでなく人間的にも成長して、自分の望む結果、勝利を得られるように」と考えられた目標指針のことだと言います。
 
「短期、中期、長期の目標があって、それぞれやるべきことがあるんです。小学生の内は勝つことが目標ではありません。この次、さらに次のカテゴリで大きく成長するために、身体と心を大きくする時期なんです」
 
エスペランサ熊本では、こうした明確なビジョンをもって日々の指導に当たっています。こうした「育成のことを考え抜いたクラブ」が、結果を出せないかというと、やはりそうではありません。昨年の全少の予選では6年生19人全員出場を果たした上で、ベスト8という成績を収めたと言います。
 
「すごいですね。試合に出るのが一番楽しいし、一番うまくなる。私もそう思います。試合しに行ったのにチームメイトがプレーしているのを眺めて帰ってくることほどむなしいことはないですよね」松田部長は、光永さんの示す「次のステージで成長するためのエスペランサビジョン」に大きく共感した様子でした。
 
エスペランサ熊本が地域で実現している成果は徐々に実を結びつつあります。2016年には、卒業生である一美和成選手が大津高校からロアッソ熊本の特別指定選手を経てガンバ大阪に入団。2017年には8期生の林田隆介選手がV・ファーレン長崎に入団しました。八代の小さなクラブから、Jリーガーが誕生し始めていることは見逃せない事実です。
 
勝ちだけを求めない。サッカーだけにならない。独特の指導で存在感を示すエスペランサ熊本。次回は「高校、大学、そしてその次のステップで成長するため」にクラブが行っていることを中心にお届けします。
 
 
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大塚一樹

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