宮城県仙台市で活動する台原サッカースポーツ少年団。サカイクの理念に共感し、日々の指導に取り入れてきたこのチームは、昨夏スタートした「サカイク認定パートナー制度」にもいち早く参加しました。
代表を務める伊藤元気さんは、子どもたちの指導に立ちながら、指導者・保護者・地域の間に立ち、対話を重ねてきた人物です。
「強くすること」よりも、「楽しさを中心に据えること」を大切にしてきた伊藤さん。その背景には、これまでの競技経験と、指導者としての大きな価値観の転換がありました。
(取材:サカイク編集部/構成・文:木村芽久美)
■サッカーは教育の「手段」ではない。運動そのものが目的だと気づいた転換点
幼少期からサッカーを始め、千葉県や関東のトレセンに選出。高校時代は千葉県のサッカー強豪校に所属し、インターハイや全国大会も経験してきた伊藤さん。
当時は、結果を出すことが強く求められる環境の中で、「勝つこと」を最優先に考えるサッカーに打ち込んでいました。その経験は、努力することや仲間と目標に向かう姿勢など、人としての成長につながる大切な時間でもあったと振り返ります。
一方で、次第に違和感も覚えるようになります。
「サッカーが、"人を育てるための道具"になっていないか、と感じたんです」
大学でスポーツを体系的に学ぶ中で出会ったのが、「運動内容論の体育」という考え方でした。それは、運動を教育や成長のための手段として捉えるのではなく、運動そのものを目的とし、その楽しさや面白さを中心に据える理論です。
「まず運動そのものが楽しい。その結果として、技能や意欲が高まり、気づけば社会性や人間性も育っていく。順番が、これまでとは逆だったんだと気づきました」
在学中から活動していた仙台YMCAでの指導現場でも、その考えは確信へと変わっていきます。
多様な子どもたちと向き合う中で、「楽しい」が出発点にあるときこそ、子どもは主体的に関わり、学び始めることを実感したといいます。
■勝利でも躾でもない。「正しさ」より、子どもが夢中になれる環境づくりへ
その後、ご自身のお子さんが所属していたことをきっかけに、台原サッカースポーツ少年団へ保護者として関わり、やがてコーチとして現場に立つようになります。
当時のチームは、勝利を強く意識するだけでなく、挨拶や態度など、いわゆる「躾」に対しても厳しい指導が行われていました。
「どれも間違いではないと思っていました。ただ、子どもたちが"正しくあろう"とするあまり、サッカーそのものを楽しめていないように見えたんです」
伊藤さんが変えたかったのは、勝利至上主義でも、躾そのものでもありません。サッカーを何かのための「手段」として扱ってしまう、その前提でした。
審判やコーチとして現場に立ちながら、対立するのではなく、対話を重ね、少しずつ考えを共有。
時間をかけて、子どもたちが自分で考え、選択しながらサッカーを楽しむチームへと変化していきました。
現在の台原サッカースポーツ少年団では、子どもたちが自分で考え、選択しながらサッカーを楽しむことを最優先にしています。
結果や態度を"教え込む"のではなく、サッカーそのものに夢中になる中で、社会性や主体性が自然と育っていく環境づくりを大切にしています。
その考え方は、チーム運営の形にも表れています。
台原サッカースポーツ少年団はいわゆる地域の少年団ですが、「親の会」はあえて設けていません。保護者が義務的にチーム運営へ関わることはなく、地域の催しやイベントについても、「やらなければならない」ではなく、「やってみたい」・「面白そう」と感じた人が自然と関わるスタイルを大切にしています。
伊藤さんは、こう話します。
「子どもたちに"考えて行動しよう"と伝えるなら、大人も同じように、無理なく、前向きに関われる形でありたいと思っています。誰かに言われたからではなく、"なんか楽しそうだな"・"ちょっと関わってみたいな"そう感じてもらえる空気感のほうが、結果的に多くのご協力を頂けるんですよね」
■運営や指導のボランティアは「やるべき役割」ではなく、「関わること自体が楽しいもの」になること
伊藤さん自身の役割について、こう続けます。
「私が意識しているのは『関わりたい!』と思ってもらえる雰囲気をつくることです。
オープンマインドで、否定されなくて、意見を言いやすい。そんな空気があれば、人は自然と動き出すと思っています」
サッカーをする子どもたちだけでなく、チームを取り巻く大人たちも含めて「楽しい」が共有されていること。
その積み重ねが、台原サッカースポーツ少年団らしい文化として、少しずつ根づいてきています。
■サカイク10か条は、考え続けるための「共通言語」
台原サッカースポーツ少年団が認定パートナー制度に参加した理由も、ここにありました。
「認定パートナーという形があることで、チームとして大切にしている考え方を、客観的に、安心して伝えられるようになったのが良かったです」
そして、保護者向けの研修会では、サカイク10か条とクラブ理念を共有。「自分たちの関わり方を振り返るきっかけになった」と、多くの保護者が前向きに受け止めてくれたそうです。
「『ちゃんと考えて運営しているチームなんですね』と言ってもらえたのは、素直にうれしかったですね」
■認定パートナー制度は、完成形ではなく「伴走者」
サカイク10か条を保護者の皆さんに紹介する伊藤さん(写真提供:台原サッカースポーツ少年団)
伊藤さんは、認定パートナー制度を「何かを達成した証」ではなく、考え続ける姿勢を共有するための仕組みだと捉えています。
「完璧なチームなんてありません。でも、子どもを真ん中に置いて悩み続けることはできる」
今後は、認定パートナーチーム同士で実践や悩みを共有し合える場が広がることにも期待しています。
最後にこうまとめてくれました。
サカイク認定パートナー制度の基準となるのは、「サカイク10か条」への賛同です。
それは、指導方法を揃えるための制度ではありません。
子どもを"育てる対象"ではなく、主体的に育っていく存在として尊重するという価値観を、チーム内外と共有するための仕組みです。
サッカーを何かのための「手段」にしない。
まずは、心から楽しめる「目的」として大切にする。
そんな想いを持つチームにとって、サカイク認定パートナー制度は、その考えを言葉と形にする一歩になるかもしれません。
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皆さんのチームも登録して活用してみませんか?
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