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同じ時間でもトレーニング効果が何倍も違う! カテゴリー分けされたリーグ戦がもたらす成長効果

公開:2021年8月16日 更新:2021年8月17日

キーワード:3ピリオド制FUTUROあざみ野FCあざみ野キッカーズサッカー大会プレミアリーグU-11ホーム&アウェーレギュラー全員出場大豆戸

プレミアリーグU-11が誕生して7年。全国36都道府県537チームが参加する、日本最大のリーグ戦に成長しました。「全員出場」「3ピリオド制」など、独自のレギュレーションを設け「力の拮抗した相手と、年間を通じてホーム&アウェイを戦う」ことを目的とし、日本にリーグ戦文化を根付かせるための活動を続けています。

プレミアリーグU-11創成期からのメンバーであり、70チームが参加する長谷工プレミアリーグ神奈川U-11(プレミアリーグ神奈川U-11)の責任者を務める、末本亮太氏(大豆戸FC代表)に「カテゴリー分けされたリーグ戦の意義」について話をうかがいました。
(取材・文:鈴木智之)

 

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長谷工プレミアリーグU-11神奈川1部 あざみ野F.C.の選手たち

 

<<前編:「全員出場」が子どもたちの成長につながることを指導者たちも実感、プレミアリーグU-11がチーム強化につながるわけ

 

■実力の拮抗している相手との真剣勝負の方がトレーニング効果が高い

プレミアリーグ神奈川U-11は1部から3部に分かれていて、昇格・降格があります。ジュニアサッカーはクラブや少年団の間で力の差が激しく、2ケタの得点差がつく試合も少なくありません。

そのような試合はお互いにとって得られるものは少なく、大量失点で負けた子たちの心情を察するに、デメリットにすらなります。この現状を改善するために、プレミアリーグは1部、2部、3部と実力に応じてカテゴリーを分けました。末本氏は言います。

「プレミアリーグは『実力の拮抗した相手と、真剣勝負の中でプレーする』ことで、選手の成長に良い影響を与えられると考えています。かつては前後半15分ずつ、3本目は15分のフレンドリーマッチというレギュレーションでしたが、3本目の試合の強度がガクッと落ちてしまっていたんですね。そこで3ピリオド制にしたら、強度の高い真剣勝負が繰り広げられるようになりました」

たしかに、結果が昇格・降格につながる試合とフレンドリーマッチでは、選手の意識が違うのはうなずけるところです。末本氏は「コンサートで言うと、本番とリハーサルぐらいの違いがありました」と、当時を振り返って言います。

「フレンドリーマッチに意味がないとは言いませんが、真剣勝負の強度の高い中でプレーすることの方が、同じ時間試合をするとしても、トレーニング効果は何倍もあると思います

 

■点差がつく試合はどちらのチームにとってもメリットにならない

プレミアリーグ神奈川U-11に参加する、あざみ野キッカーズの佐渡誠監督は「拮抗したレベルの試合ができるのはいいこと。点差がつく試合は、どちらのメリットにもなりませんよね。全員出場というルールも、全体の育成という意味ですごく良いと思います」と、プレミアリーグのレギュレーションに賛同します。

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長谷工プレミアリーグ神奈川U-11に参加しているあざみ野キッカーズの選手たち

 

あざみ野F.C.の林和泉代表も「点差が開かない試合をシーズンを通してやることはすごく大切で、プレミアリーグの場合は、年に何試合かとくに重要な試合があります。そこには、指導者も子どもたちも、公式戦の重要な試合と同じモチベーションで挑んでいます」と話します。

全員を出場させることで全体のレベルアップをうながし、真剣勝負の場を体験させる。その経験が6年生になったときに、活きていると感じることも多いようです。末本氏は言います。

「今年のU-12横浜市春季少年サッカー大会の上位はプレミアリーグの参加クラブでしたし、地区予選を勝ち抜いて出場する、神奈川県大会の出場クラブのおよそ半数が、プレミアリーグに参加しているクラブです。5年生のときに、同じぐらいのレベルの相手と真剣勝負を繰り広げたことで力をつけて、6年生に良い形でつなげていると感じています」

 

■子どものサッカーを「点」で見ないで「面」で見る

プレミアリーグには昇格・降格があるので、次年度にどのカテゴリーに所属するかは、シーズンを終えてみないとわかりません。

「今年の4年生が来年5年生になるので、そのときにプレミアリーグの1部に所属しているかもしれないし、2部かもしれません。4年生のコーチは、翌年のプレミアリーグのことも見据えて準備をする必要性が出てきます。全員出場なので、『8人の上手な子だけじゃ、試合にならないぞ』と理解すれば、自然とその学年の選手全員をレベルアップさせることに、意識が向いていくと思うのです」

プレミアリーグに参加するクラブの選手は、「小学5年生のときに、年間を通した強度の高いリーグ戦に出場する機会が保証されている」と言えます。これは非常に珍しいケースです。

選手は試合に出ることで、間違いなく成長します。それが同じぐらいのレベルの相手ではなおさらです。メディアを通じて情報が発信されることで、『プレミアリーグに所属するクラブには5年生のリーグ戦があって、必ず試合に出られる』という理由で、選手や保護者に選ばれるクラブも出てくると思っています」

プレミアリーグは年間を通した結果で優勝が決まり、各地域の優勝チームが争うチャンピオンシップもあります。2部リーグ以下では、U-11のセカンドチーム、U-10チームの登録を認めるなど、様々な出場機会を創出。サッカーの上手、下手に関係なく、プレーする場を提供し、経験を積む機会を与えています。

「子どもたちのサッカー人生はこれからです。小学生のときにセカンドチームだった子がJリーガーになった例なんて、いくらでもありますよね。保護者は子どものことを、その瞬間という『点』で見ていますけど、僕ら指導者はその子のサッカー選手としての成長という、長い『面』で見ています。そこの違いはあると思いますが、プレミアリーグは両方のちょうどいいところにアプローチできるリーグだと思っています」

 

■子どもの成長のためにどんな場を作るか、を大人が考えなければならない

年間を通じて、実力の拮抗した相手と真剣勝負をする。全員を試合に出場させ、全体のレベルアップをうながす。その理念に共感した、全国的な家電メーカーのアイリスオーヤマが2019年よりスポンサードするなど、広がりを見せています。

神奈川県では独自に、2020年度より長谷工コーポレーションがメインスポンサーとして、子どもたちの環境をサポートしています。

子どもの成長のために、どのような場を作るか。情熱を持った大人たちが真剣に考え、毎年のようにレギュレーションがブラッシュアップされているのも、プレミアリーグの特徴のひとつです。

このリーグを経験した子どもたちの中から、将来のJリーガー、日本代表選手が出てくるのも、そう遠くない未来になりそうです。

 

末本亮太(すえもと・りょうた)
JFA B級ライセンス、フットサルC級ライセンス、JFA公認キッズリーダー。
大豆戸FC代表理事、U12監督。ジュニアユース、シニアチームの立ち上げ、クラブのサッカー以外の多角的な活動構築にも尽力。「ちょっと自慢できる、サッカーを通じて出会うはずのない感動、人、未来を創造し、非日常を提供すること」をミッションに掲げ、自チームの活動の他に「プレミアリーグU11神奈川」の運営や地域でサッカー広場を開催するなど、育成年代の活動に力を注ぐ。
また、小学生を連れての被災地訪問などNPO団体として、サッカーだけにとどまらない活動も行っており、将来を担う子どもたちの育成にも力を注いでいる。

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取材・文:鈴木智之

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