考える力

2018年8月14日

「教科書には載ってない」情報こそが大事 恩師が語るベルギー名門で10番を背負った森岡亮太の成長の原動力

■サッカーは一つのことに集中していては出来ない

勉強などの学ぶ意欲はサッカーと密接に繋がっています。

松本監督は「サッカーは一つのことに集中していては出来ないスポーツ。あらゆる角度で物事を見たり、視野の広さ、イマジネーションが無ければいけない。先生から教科書で教えてもらうこと以外のことが凄く大切で、彼にはそうした賢さがあった」と話します。

久御山高校サッカー部(C)森田将義

森岡選手の存在があったからこそ、松本監督は今の選手たちにも気付くこと読書の重要性を説くそうで、「森岡は考える力に長けている。プレー面だけでなく、私生活でもイマジネーションに長けているから、人生が広がって行く」と続けます。

そして、松本監督が何より評価するのは執着心です。「超がつくほどの負けず嫌い」という森岡選手を象徴するのが、高校1年生の時に行った1対1の練習です。4人1組のメニューで、10個のフィールドを用意。勝てば上のランクに進み、負ければ下のランクに下がる条件で行うのですが、GKを含めた1年生のみのメンバーで勝ち上がり、最終的には一番上のランクで終わりました。

負けず嫌いな性格から生まれる執着心は、悔しい想いをした際にも無駄ではありません。唯一の1年生として出場した2007年の高校サッカー選手権大会は、初戦で敗退。ルーキーながらも責任感は人一倍強く、「負けたのは自分のせいだと思っていると思う」。A代表デビュー戦となった2014年のブラジル代表戦も同じで、「何もできなかったけど、得る物は大きかったはず。このままではダメだという想いから海外に渡ったから、今の森岡があると思う。海外でどれだけ出来るか模索したから、急激に伸びていったんじゃないかなと思う」。

悔しさを自身の力に代える森岡選手を踏まえ、松本監督はこう話します。「成長するためには、挫折も大事。悔しい思いなくして、上手くなったり強くなったりしない」

サッカーは勝敗がつくスポーツです。試合で勝つことによって得られる物もありますが、負けた時だからこそ得られる物もたくさんあります。ピッチを離れた日常生活でも、そうした意識は大事で、失敗した時こそ学ぶべきことや成長のヒントがあるのではないでしょうか?

サカイクキャンプでは、勝つことの楽しさ、負ける事の悔しさはもちろんですが、それ以上に「じゃあ、どうする?」と自分で考えて行動することを大切にしています。自分が「こうなりたい」「次はゴールを決めたい」と思ったら、そのためには何をすればいいのか、味方とどんなふうに協力して相手を交わすのかを考えるきっかけを与えます。

親も将来どんなふうに社会が変わっていくのか不安を抱える時代ですが、社会を生き抜くためには自分で考える力、問題解決能力、コミュニケーションなどがより大切になるのは間違いありません。所属チームとは違う場所で、大好きなサッカーを通して自分で考えて行動するきっかけを与えませんか。

後編では、教師として長きに渡って子どもたちを見てきた松本監督が、今どきの子どもたちに危惧することをお伝えします。

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松本悟(まつもと・さとる)/久御山高校サッカー部監督
京都市出身。大学卒業後、公立の久御山中学に配属され12年間勤務。同校を全国中学校サッカー大会3位に。1996年に久御山高校に異動となり今年で22年目。
高校サッカー選手権5度出場、第89回大会では準優勝、2015年の全国高校総体でベスト16という結果を残した。同校は、ボールを扱うテクニックや狭いスペースでのパス回し、ポゼッション重視のスタイルから「京都のバルサ」とも呼ばれている。

久御山高校サッカー部のHPはこちら>>

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