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考える力

2018年5月28日

「今のままじゃ、Jリーガーになれても日本代表としてW杯に出るのは無理」スペインで活躍する柴崎岳が変わるきっかけとなった青森山田高校・黒田監督の言葉

キーワード:日本代表柴崎岳青森山田高校高校サッカー黒田剛

青森という豪雪地帯のハンデをものともせず、2016年度には高校年代の日本一に輝いた、青森山田高校。1年のうち3、4か月は雪でグラウンドを使っての練習ができません。

それでもこれまで柴崎岳選手をはじめ櫛引政敏選手、室屋成選手など35人以上のプロ選手を輩出するなど、日本屈指の強豪として知られています。チームを率いて24年になる黒田剛監督に、子どもを自立させる親の関わり方や、自ら伸びる選手が備えている能力を伺いました。OBの柴崎岳選手の高校時代の話など、興味深い話が次々に飛び出します。

(取材・文:鈴木智之)

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(C)新井賢一

(青森山田高校出身で現在はスペイン1部ヘタフェに所属する柴崎岳選手)

■子どもに関わらない覚悟があるか

――サカイクには「子どもを自立させるためには、どうすればいいですか?」という質問が寄せられます。黒田監督はどう答えますか?

簡単に言うと、放っておくことです。子どもに関わらない覚悟があるか。「保護者は何もしてくれないんだ。自分でやらなければいけないんだ。でも、大好きなサッカーをやりたい」という気持ちにさせられるかどうかですよね。保護者はそこに対して「あんたがやりたいと言ったのだから、責任をもって最後までやりなさい」と、発言や行動に責任を持たせること。その判断や行動に対して、保護者が評価をしてあげればいいんです。

実際に青森山田でプロになった選手の保護者を見ても、基本的に子どもを信じて手を貸さず、甘やかさない人が多かったですし、ある年のキャプテンの保護者は、入学式と卒業式だけしか見にこなかったこともあります。

――保護者が、手をかけすぎることの弊害に気づくことが大切なんですね。

せっかく子どもが自分の力でやろうとしているのに、保護者が手を貸したり、口を挟んで、やる気を削いでしまう。困ったときは必ず「保護者が助けてくれるんだ」という感覚にしてしまうこと自体が自立や成長を抑制してしまいます。「子どもの力になっている」と錯覚し、保護者が子どものサッカーや教育に従事していると感じているのは、保護者の自己満足です。自立や成長の妨げであり、何もできない子どもにしていることに気づいていないのです。今の時代、子どもの夢を応援する半面、そのように錯誤した違和感をすごく感じます。


――ほかに保護者に共通する姿勢はありますか?

24年間指導をしていますが、素晴らしかった選手の保護者に共通しているのが、保護者が子どもに関わりすぎていないことです。「中途半端な気持ちでやるくらいなら辞めてしまいなさい」と言うぐらいで、子どもの判断と行動に責任を持たせていました。そして、それを見守ること。

子どもは「自分の夢は自分が叶えるもので親が叶えてくれるものではないんだ」と感じ、じゃあどんな行動が大切なんだろうか? と自分で考えることが成長のスタートなんです。保護者は、本当は口を出したいんだけど出さない、手を貸さない。そして、本当に困った時にだけヒントを与える。教育方針が夫婦揃ってできれば、子どもの「逃げ道」にならず、素晴らしい教育になると思います。

■柴崎岳(ヘタフェ・スペイン)にかけた「Jリーガーになれても日本代表としてW杯に出るのは無理だろう」という言葉の意味

――柴崎岳選手の保護者もそうだったのでしょうか?

はい。余計な口出しはせず、子どもを信じていました。結局のところ、自分の子どもを信じることができるかどうかだと思うんです。日本サッカーの天才と言われた小野伸二中村俊輔遠藤保仁などもそうですが、彼らは監督からいちいち何か言われて育ったかと言うと、そうではありません。彼らは勝手に上手くなる。自分に足りないものを見つけて、指導者や保護者の手を借りずに、自分で克服する能力を持っているんです。

――黒田監督は中学時代の柴崎選手に「自己発見能力と自己改善能力を身につけなさい」と言ったそうですね。

岳が中学2、3年生の頃に「お前の能力ならJリーガーにはなれると思うけど、監督やコーチにいちいち指導されているようでは、日本代表になってワールドカップに出るのは無理だろう。大人にいちいち言われているようでは限界があるよ」と言いました。「自分に足りないものを自分で見つけて、自分で克服する力がないと、日の丸をつけるのは無理だ」と言ったら、朝から晩まで黙々とやるようになりました。中学、高校時代に伸びていく選手は、監督やコーチ、保護者になんとかしてもらおうではなく、自分でどうすればいいかを考えて、ひた向きに取り組めるタイプです。


――柴崎選手はサッカーが上手くなるために、色々なことを貪欲に吸収する選手だったそうですね。

中学時代から大人と話をしたがる子でした。同級生とは、感覚的に話が合わなかったんでしょう(笑)。自分が出ていない試合を見て、監督がベンチからどんなアドバイスをしているのかを、じっと聞いているようなやつでした。率先して副審をしたり、チームのために水を汲みに行ったりと、周りのためになる行動もできる選手でしたね。あとは、何と言っても負けず嫌い。できない自分を認めたくない男でした。だから、できないプレーやウィークポイントが見つかると、できるようになるまで自主的に取り組んでいました。自分の好きなこと、得意なことだけに取り組む「頑張り屋」ではなく、苦手なことを克服するための取り組みができる。まさに「努力家」ですよね。

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文、写真:鈴木智之

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