今年7月にドイツサッカー連盟とドイツプロコーチ協会共催で行われた国際コーチ会議にて、チュービンゲン大学スポーツ心理学オリバー・ヘーナー教授が「サッカー選手に必要な認知能力」というテーマで非常に興味深い講義をしていましたので、ここでご紹介したいと思います。(取材・文:中野吉之伴)
(写真は少年サッカーのイメージです)
人間は行動する前に「認知-選択-判断-決断」の思考プロセスを踏みますが、その認知から決断におけるプロセスにおいて大事なのは、まず状況を自分からの主観的な観方でとらえたところから、次のプレーにどんな選択肢があるかを探し出すこと。
そして、サッカーの試合の中で起こりうる再現性の高いプレーや状況を経験として持つことで、どんな現象が起こりえるのかをイメージできることが大事になります。
このままだと専門的すぎてわかりにくいので、へーナーさんは一例としてドイツ代表ヨシュア・キミッヒのプレーを映像で見せながら、説明をしてくれました。
■キミッヒ(バイエルンMF)はなぜ瞬時にプレーを変更できたのか?
右サイドでボールを持っていたキミッヒは前から寄せてくる相手を交わそうと、センター方向に短いドリブル。すると前のスペースにいた味方選手がパスを引き出そうと近づいてきたので、キミッヒはその足元へのパスをしようとします。
しかし次の瞬間、相手DFがこのパスを寸断しようと勢いよく味方選手への距離を縮めてきました。このままパスを出すと取られるかもしれないと思ったキミッヒは一度、この味方選手へのパスを取りやめると、その動きを見ていた別の味方選手が、この相手DFの裏スペースに向けて走り出しました。
これを見たキミッヒは素早く動きを修正すると、そこへ見事なパスを通し、決定的なチャンスを作り出したのです。
目で見てとりいれた情報から「あ、味方選手がボールを欲しがっている」という認知をし、「足元へのパス」を選択。その後新たに「相手選手が取りに来ている」という認知をしたことで、「足元へのパス」という決断をキャンセル。
そして、「相手が動いてできたスペースに味方が走りこむかもしれない」という予測をしたところ、味方選手がその動きを見せたことで、素早く「スペースへのパス」という決断。
こうした思考プロセスができるようになるにはどのような取り組みをすればいいのでしょうか。
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文:中野吉之伴