考える力
高校で結果を残すことがすべてではない!國學院久我山の"自立"と"文武両道"はその後の人生で役立つ
公開:2016年1月13日 更新:2021年1月27日
小学生のサッカー少年少女を子に持つお父さんお母さんなら、わが子の今後の成長について、いろいろと考えを巡らせることがあるでしょう。小学校を卒業し、中学、高校、大学とどのような道を歩むことになるのか。いまはまだ「プロサッカー選手になる」と自分の夢を疑わないお子さんのほとんどは、成長の過程で現実と向き合い、ひとりの社会人として生活していくことになります。そのとき、お子さんがあなたの力を借りずに逞しく生きていくために、いま、あなたにできることは何でしょうか?
決勝で東福岡に0-5で敗れ準優勝に終ったとはいえ、第94回全国高校サッカー選手権大会での國學院久我山は「厳しい制約があること」、「高いレベルの文武両道を実践していること」で大きな注目を浴びました。前回記事では、久我山の李総監督や清水恭孝監督が教え子たちに実践する“自立”の育み方をお伝えしました。今回は國學院久我山サッカー部を経由して子どもたちが、その後どのような人生を歩んでいるのかをご紹介します。(取材・文 小澤一郎)
■"久我山だから文武両道"というわけではない
ピッチ内外で状況判断を求めながら、高校3年間を通して選手の“自立”を育む國學院久我山の取り組みですが、清水恭孝監督は「学校でサッカーに取り組む以上、久我山だから文武両道、他チームは文武両道ではないということではないと思います。どんなチームも当たり前のように文武両道をやっているはずで、久我山は久我山のやり方があると思っています」と当たり前のものとして話します。
全国大会で準優勝を獲得するほどのレベルにある國學院久我山ですが、今年のチームの主力3年生も全員が学力で大学へ進学します。主将の宮原直央は、英語の教師になることを目指し学習院大学へ進みます。また、決勝までの6試合全てに先発したDF山本研とFW内桶峻の2選手はこれから気持ちを切り替えて本命である慶応義塾大学合格を目指し、受験という別の戦いに挑みます。では、國學院久我山が3年間で自立を育む先には何があるのでしょうか。
ここ数年、國學院久我山を卒業した選手が大学サッカーで活躍する姿が目立ちます。例えば、2015年の関東大学サッカーリーグ1部で優勝した早稲田大学のFW山内寛史(3年)は今や複数のJクラブが熱視線を送る大学サッカーの目玉選手の一人です。その山内は「國學院久我山で文武両道を貫いた3年間があったからこそ今があります」と話します。商学部で学ぶ彼は、幅広い視野とビジネスの世界で必要な知識を身に付けるべく大学でも文武両道を続けています。スポーツ推薦制度のある早稲田大学ですが、彼は自らの学力で入学しています。
■制約のない大学で、自律した生活を送れるようになる
2年前の國學院久我山の主将であり、高校時代にはU-17日本代表にも選出された渡辺夏彦(2年)は慶應義塾大学に進学しました。そもそも慶應大ソッカー部にはスポーツ推薦制度がないため、渡辺はAO入試で進学しています。2017年に台湾で開催されるユニバーシアードに向けた全日本大学選抜の最終選考メンバーにも残っており、卒業後はプロ入りを志望しています。しかし、プロの先に必ずある引退を見据え、生涯を通してサッカーに関わる仕事をするため、総合政策学部ではゼミで日本と欧州のプロクラブにおける育成面での比較研究などにも精力的に取り組んでいます。
その渡辺は大学生活を「久我山での3年間の延長戦」と語ります。「高校の時と同じように大学でも課題と補習があるので、そこは変わらず継続という意味で学業にもしっかり取り組んでいますし、高校で培ってきたベースがあるので特に苦労に思うところはありません」
國學院久我山が選手に自立と文武両道を求める先にあるのは、単純に「有名大学への進学」ではありません。彼らは高校3年間で“当たり前の基準”と志を高め、大学でも文武両道を貫き、制約がない大学で自律した生活を送ります。それによって山内、渡辺のようにプロ入りの可能性が高い選手でも、大学卒業時点で一般企業から求められる人材に成長することができるのです。
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取材・文 小澤一郎